2-14:本番直前

 今日は7月3日(土)。地域予選の第一回戦が開催される日だ。イベントのことを知ってからの二日間、寝るかご飯食べる以外はずっとSLAWOやってた。闘技場での試合に始まり、万能走法と奥義の習得。パーティー戦の練習。あ、パーティの部はGirlsAnthemのメンバー+私+ランさんというソロ女性プレイヤーの強い方と出ることになった。ランさんはどっかのタイミングで話題になった、魔力を爆発させて空を飛ぶ人だ。私と同じHENTAI仲間です。尚、それをいったら私はYABAI人じゃないもんと言われました。悲しい。


 それはそれとして、ともかく練習に次ぐ練習。こんだけ濃い時間を過ごしたのは久しぶりだった。ただ残念ながら万能走法と奥義の習得には至らなかった。万能走法は7割くらいの確立で成功するけど、常に成功するわけじゃない。宙を一回蹴るくらいなら出来なくはないかなって感じ。

 奥義に至ってはまだまだだ。20回に1回成功するかなっていう程度。試合で使用するにはリスクが高い。一応魔力強化を全身に強めに使えば多分問題なく使える。かなり負荷がかかるし消耗も激しいからやりたくないけどね。


 予選一回戦のソロは13時から、パーティは18時からという予定だ。今の時間は12時20分。一葉と昼ご飯食べてたところだ。


「いよいよ今日だね、僕は負けないからね!!だからちゃんと明日に勝ち上がってきてね!」


「もちろん私も負けないよ!だからそっちもしっかり勝ってきなさいよ」


 一葉もソロとパーティー両方に出場することにしたようだ。あと同じパーティだとランさんもソロ出場だ。全員ブロックが違うので、一回戦で当たることはない。当たるとしたら2回戦以降だ。


 今回は参加者が多いためブロック数はかなり多い。なんせ参加者数は日本だけで約6000人だ。これを一日で消化するとなれば、当然ブロック数も大変なことになる。たしかワンマッチ最大100人なので、単純計算で60ブロックあることになる。


 企画段階では一発勝負ではなく、3戦してそのうちの成績上位4人が2回戦進出という案だったらしいが、絶対に参加者数多くて大変なことになるということで、地域予選は一発勝負になった。という話を昨日の大会直前公式放送で話してたらしい。私は見てないけど。



 昼食を終えて、私と一葉はログイン。早速闘技場に向かう。あ、私はいつもの拠点から転移してるが、普通のプレイヤーは街の中央に新たに出来た転移門から移動してるらしい。私もそれ使ってみたかったです。私もそのうち使えると思いたい。

 

 という訳でやってきました闘技場。大会直前というこもあってか、多くの人で賑わっている。多分いまこの闘技場付近だけで10万人はいる気がする。全世界のプレイヤー数が100万人という話だから、かなりの数だ。当然、海外プレイヤーもいる。この中から知ってる人を見つけるのは難しい。それに私は小さいからね。


「ハロー、カケル!君のブロックはA-4だからこの後0時、いや、そっちだと13時からだっだね。頑張ってね!応援してるよ!」


「ありがとう、ベン。私もベンのこと応援してる」


 とか思ってたら、早速知り合いが声をかけてきた。この人はベン。闘技場が始まった初日のランダムマッチで3回連続でマッチしてそれをきっかけに仲良くなった人だ。アメリカのニューヨークに住んでるといってたので、彼の所は今は夜。


 最初マッチングした時は魔物かと思ってたら普通にプレイヤーでビックリしたらしく、気になって声をかけて来たらしい。まぁ、それは殆どのプレイヤーがそうで、ベンが話しかけてきた後に多くの人に話かけられたんだけどね。おかげさまで有名人気分を味わえました。あまり経験したくない気分だったけどね。


 ベン?ベンはいいんだよ。無理に押しかけて来た人とか追い払ってくれてたからね。これを一葉がやるとその見た目のせいで余計に人が寄ってくるんだよ。そういう訳で一連の流れを知った一葉はベンに嫉妬してた。それはそれでめっちゃ可愛い姿だったけどね。ちなみに既婚者で子供もいるとのこと。その話をしたら途端に機嫌を治してくれた。『なら大丈夫だねー!!』って私の腕にしがみついてさ。可愛いすぎるでしょ。



「素敵なお狐様に応援されたなら勝ち上がらないといけないね。君に祈ったらご利益あるかな?」


「本選で対戦するかもしれない人に祈ってどうするのさ」


「ははは、それはそうだね。それじゃ、僕はパーティーメンバーと打ち合わせしてくるよ。またね」


「うん、またね。」


 さて、もう大会控室に向かおうかー。っと、うちのパーティメンバーのリンとミナがあっちにいるね。ちょっと声かけてから行こうか。


「やぁ、もしかして応援に来てくれたの?」


「カケルくんにゃー!もちろんにゃ!」


「あらカケルさん、もちろんですよ。本番前に声かけようと思ったんですけど、人が多すぎたのでそっちは諦めてメッセージ送ろうとしてたところです。」


「あぁー、確かに。めっちゃ人多いもんね。私なんて見えないでしょ。」


「そうにゃー。カケルくんは色合いは目立つけど、サイズが小さいからこうも人が多いとわからないのにゃ!」


「ふふふ、でもカケルさんの姿を見たら何かいいこと起こりそうな感じですね。」


「あ、それさっきも外人さんに言われた!祈ったらご利益ありそうって!」


「あはは!確かににゃ!カケルくんに祈ったらご利益ありそうにゃー、せっかくだから祈っとくにゃ!カケルくんが勝ちますように!」


「そうですね、折角なので祈っておきましょうか。」


 あら、なんか話の流れが変な感じになってしまった。なんかそのうち配信でも似たようなことになりそうー。投げ銭機能は幸いまだONになってないけど、これONにしたら大変なことに・・・。いや、大丈夫だよね。多分。きっと。うん。


「それじゃ、私はそろそろ控室にいくね。」


「了解にゃ!頑張ってくるのにゃ!」


「はい、頑張ってくださいね!私たち応援してます!」


「ありがとう!行ってきます!」


 そして私は選手控室に向かう。控室といっても実際は何もない空間に転移するだけなんだけどね。いつものランダムマッチやカスタムマッチと同じならだけど。選手控室へ転移する場所に移動し、参加ルームを選択。「来訪者最強決定戦 日本地域 第一回戦 参加者控室 A-4リーグ」という部屋が表示されたのでそこに参加する。


 おっ、大会仕様なのか控室がいつもよりちょっとだけ豪華だね。ソファーとモニターがある。モニターには昨日やってたという公式生配信が映っていて、ちょうど大会注目選手紹介コーナーをやってる。気にはなるけどそれは一旦置いておいて、先にステータスとスキルを設定しよう。といってももう決めてるんだけどね。


ーー闘技場ステータスーー

■名前:カケル

■レベル:30

■種族:九尾の妖狐

■種族特性:擬装(妖狐族)

■個性:零距離戦闘陣

■職業:妖術師

■所持金:0z (ギルド預かり 654,189z) 

■ステータス:

 HP :40

 MP :2300

 STR:88  [80 * (1.1)]

 VIT:4   [10 * 0.4]

 INT:230  [100 * (1.8 + 0.5)]

 MND:136  [80 * (1.2 + 0.5)]

 DEX:100  [100 * 1.0]

 AGI:88  [80 * 1.1]


 SP :0

■取得スキル

 妖術Lv2、封印(九尾)Lv2、魔力操作Lv10、魔力感知Lv10、魔力強化Lv6

■称号

 暴徒鎮圧、身体ヲ破壊スルモノ、格上殺し


 大会だと試合ごとにステータス値を振り治すから、その辺の影響度とかちゃんと調べてセットしたほうがいいんだろうけどね。そこまで検証できる時間なかったからこんな感じ。VITはもう振らなくていいかなと思ってる。上げても意味ないしね。当たったら負け、スリルがあっていいじゃない。MNDとDEXは種族クエストで割り振ってるやつだから、これにもある程度振ってる。


 スキルについては妖術と封印は外せなかったので、他3つを選ぶことに。今セットしてあるスキル以外はなくても大差なかったので問題ない。唯一爪撃の攻撃範囲が伸びないのは少し不便だけど、どっちみち1メートル以内に近づかないといけないのだから変わらない。ぶっちゃけ魔力系もなかったからといって問題あるかと言われると微妙だけどね。


 スキルの組み合わせを色々試した結果、僅かに、けれど明確に感覚の違いを感じたのがこの3つだったのでセットしているだけ。ちなみに、妖術は妖術でワンセットなので、狐火で覚えてる魔法とかはカウントされない。狐火で記憶してるものは大会に向けて強化したでそこそこ変更が加わってる。


<魔技記憶リスト:記憶可能枠14、使用済9、空5>

  <解析済>

   ・ウィンドカッター+

   ・ライトランス+

   ・ヒール+

   ・アクアバレット+

   ・アクアカッター+

   ・飛行

   ・アイスランス+

   ・ポイズンクリエイト

   ・ポイズンウェブ+


 アクアバレットは持ってた水属性の魔石を使って強化。威力が+2になった。アクアカッターはウォーターボールと合成して水属性+1。新たにポイズンクリエイト、ポイズンウェブを覚えていて、ポイズンウェブにはスパイダーウェブを合成して強化してある。粘着性+2、伸縮性+2になっている。他の解析中のものは邪魔だったし覚える予定もないので削除してある。

 あ、闘技場の仕様だと思うけど、試合中に妖術で記憶した魔技は試合が終わると解除されるようになってる。スキルの熟練度なんかもそうだと思う。まぁ、一回の試合でそんなポンポン覚えることってあんまないけどね。解析が進まないまま終わることが多いし。


 設定が終わったので、設定完了のボタンをチェックする。控室にいる間は同じマッチに参加するプレイヤーの名前が見えるので、プレイヤー研究してる人はマッチごとに設定と装備を変えてたりするんだよね。例えば上位プレイヤーだったり、相性の問題で対策が必要なプレイヤーとかね。なんやかんや有名な私も対策されてる。私は体力が低いからとにかく広範囲に攻撃してワンチャンスを狙う人もいれば、私の遠距離攻撃は威力が低いからそれは無視してカウンター狙いだったりね。当然本番でもいるだろうけど、その辺は全部対策済みだから問題ない。


大会アナウンス『参加者全員の設定完了を確認。既定の時間になりました。それでは来訪者最強決定戦 日本地域 第一回戦 A-4リーグ。試合を開始いたします。』


さ、いよいよ本番だ。頑張るぞ!

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