2-6:西の第二エリア

「翔ー、朝だよー。起きてー」


「ん・・・んー、はーい」


 一葉に声をかけられて起きる。時間は朝の9時。随分と眠ってたらしい。


「体拭いて包帯を取り換えるから体起こして」


 一葉の言うことに従い、身体を拭き、包帯を取り換えてもらう。ついでに薬も塗ってもらう。


「わっ、もう殆ど治ってるじゃん。ホントに治るの早いね。」


「そう?まぁ、いいことじゃない。それよりやたらとお腹空いてるんだけど。」


「身体治すために大量のエネルギーを使ったとかそんな感じ?ご飯は作ってあるからいつでも食べれるよ。あと、おにぎりもあるから足りなかったら食べていいよ」


「さすが一葉、用意がいいね。ありがとう」


 用意してくれた朝ご飯を食べたが、少し足りなかったのでおにぎりも2個食べた。


「そういえばFunkyAegisに所属したことを報告するための動画を撮影したいって昨日電話来たんだけど、いつにする?」


「明後日なら大丈夫だと思うよ。この調子なら早ければ明日には回復するだろうけど一応ね」


「明後日は月曜日だけどいいの?」


「講義の遅れはもう取り戻してるから大丈夫。それに後でアーカイブ見ることもできるしね。」


「そっか。じゃぁそれで返答しとくね。」


 そして事務所に連絡してもらい、私は金曜日の分の講義内容を確認。少し進んでたので午前中は勉強に当てて、午後からSLAWOをすることにした。


 久しぶりに一葉とやりたかったけど、今日明日は予定が埋まってるらしい。明後日なら空いてるとのことなので、それまではソロでプレイすることにした。ちなみに一葉たちGirlsAnthemも第一エリアのボスは全部突破したらしい。一葉のレベルは32まで上がったそうだ。



 とりあえずSLAWOにログインして、フォレストブラックベア戦の時の報酬を確認する。いまのいままで忘れていた。

 インベントリを確認するとフォレストブラックベア関連と思われるのは、森黒熊の毛皮と上質な肉、木属性の魔石(小)、木属性魔法の書の4つ。

 木属性魔法の書は、使うとフォレストブラックベアが使用していた木属性魔法を扱えるようになるらしいが、残念ながら私は習得できないのでこれは倉庫へ。毛皮は服に使えるかもしれないので保管。肉は・・・普通に食べるか。魔石は今のとこ使い道がないのでこれも倉庫へ。そのうちプレイヤー間で使用できるマーケットとかできたら売ろう。


 あとはインベントリにあった細々したものの中から、冒険者ギルドの納品依頼をこなせるものはこなし、肉以外で余ったものは売り払う。得たお金は全額金庫に預ける。これで15万zまで溜まった。


 これまで結構な数の素材を納品して以来をこなしてはいるのだが、ギルドランクを上げるにはまだたりない。というよりギルドランクを上げるには一定以上の実績と住人からの信用が必要になる。そのためしばらく街に入れない私のギルドランクが上がるのはまだまだ先になりそうだ。



 さて、今日はどうしようかなー。配信もいいけど、SLAWOしてるときずっと配信してる気がするから、昼は配信しないでいいかなぁー。夜は配信しよう。前回の配信から結構空いちゃってるし。てかTwoiter全然動かしてない気がする・・・。まぁログアウトしたら呟こうかな。


 ログインしたのが13時で17時までやるつもりだからゲーム内換算で12時間のプレイか。初めて長時間プレイする気がするけど、存分に楽しんでいこう。


 んじゃまぁ、西の第二エリアまだ進んでないからそっちに行こうか。確かリスナーさんの話だと湿地帯って話だったはず。とりあえず行ってみればわかるか。あ、通行券?が発行されたんだっけ。それってインベントリに入ってるのかなって思ってたら入ってた。アランっていう街か。どんな街だろう。楽しみだ。


 いつものように転移しようとすると、「エンジの森(西・ボスエリア)」が解放されてたのでそこに転移する。

 そこからアランの方向に進めばいいんだけど、どっちだっけ・・・って、通行券発行されたけど私はそもそも街に入れないんじゃ。もう一回確認しよう。


◆アラン街への通行券(使用不可)

 アランの街へ入るための通行券。しかし、現在は使用不可能。


 Oh・・・、やっぱりね。うん。そんな気がしてた。ま、まぁ街に入れなくても第二エリアの探索はできるからね。気を取り直して楽しんでいこう。早く種族クエストを進めて人化の術を覚えないと。


 さて、第二エリアの方角を確認しよう。とりあえず、あの大木を上ったら全部見れそうだけど、ボスエリアに入ったら強制的に転移させられるのか?とにかくいってみよう。


ピコン『ボスエリアに到達しました。クリア済みのため難易度が上昇します。チャレンジしますか?』


 なるほど。二回目以降はこうなるのか。難易度が上がってるみたいだから、どっかのタイミングで挑戦したい気持ちはあるけど、今は探索を優先したいので「いいえ」を選択する。


 そして大木を上り、頂上から辺りを見回す。遠くから見えてた通り相当大きい木で、20階建て並みの高さがある。登ったは良いがかなり怖い。景色は凄くいいんだけどね。


 東の方角には始まりの街・エンジが見える。そしてその反対側には湿地帯があり、更に奥にアラン街と思われる街が見える。北方向は森がずっと続き途中から雪が積もっている。更に奥には山が見える。そして南の方にも森が広がっており、奥の方に大きな湖が見える。多分あれが南のボスエリアなのかな?わからないけど。


「ガアァァァ!!!!」


 そうして少しの間絶景に目を奪われていると、突然私に向かって鳥が突っ込んできた。


「えぇ!?ちょっ、待っ、グッ!!」


 咄嗟のことで反応できなかった私は、もろに攻撃を受けて落下。


「わああああ!!!!!ゴッ!!ガッ!ブベェッ!?」


 ピコン『HPが0になりました。???の森で復帰します。』


 枝から枝へ転がるように落ちていき、ついには地面まで落下してそのままHPが0になった。そしていつもの場所でリスポーン。




「そうだよね。空にもモンスターはいるよね。あぁ、びっくりした。」


 そして再び西の森へ。幸い見てた人はいなかったようで恥ずかしい思いをせずに済んだ。


 今後は普通に第二エリアに向かう。さっき方角も確認したから大丈夫。


 大木のある奥のエリアを進むと、いままで見たことないモンスターに出くわした。見た目はただの大きい蜘蛛で、全長2メートルくらいありそうだ。・・・ネームドじゃないよね?

 これが沢山いるってなったら第二エリア結構きつそうなんだけど・・・。とりあえず狐火・蒼を使用して看破を使おう。


◆ビックスパイダー Lv20


 うわっ、普通にレベル高い。いや、それはそうか。フォレストブラックベアのレベルが確かLv25~30だったもんね。


「シャーッ!!」


 そんなこんなで考え事してたら網状になった糸を口から飛ばしてきた。私は脚に魔力強化をかけ、横に走ってよける。ついでに紫炎を糸に当て、燃えるかどうか確認。結果、1発当てただけでかなりの勢いで燃えたので、紫炎を常時展開しておけば糸については問題なさそうだ。ひとまず紫炎を四つ展開して、ビックスパイダーの元へ走る。


 今度は糸に紫色の液体をつけて飛ばしてきた。恐らく毒だろう。そして色々とリアルなこのゲームで毒に火をつけると毒霧になってダメージを受けそうなのでこれは普通に回避する。そして蜘蛛の左の方へ回り爪撃で足を攻撃。関節を攻撃すると一発で切り落とせたできたので、そのまま流れで左足を全部切断していく。


「シャシャァァ!」


 左足を全て破壊したことにより、ビックスパイダーの身体が大きく左に傾く。それでも折れた左足を軸に左回転はできるらしく、私の方に向いて毒液を吐いてきた。それを私は右方向に避けてそのまま蜘蛛の右側へ。こちらに上手く向くことができないようで、色々ともがいている。その隙に上に飛び上がって爪で切り裂く。


「シィィィィ!!」


 切り裂けはしたが上部はかなり堅い。ならばと今度は下から腹に向けて展開してた紫炎を攻撃。するとあっという間に全身に燃え広がり、そのまま死んだ。どうやらお腹が弱点らしい。確認のために色々と試したが、この分だと片側の足を切り落としてそのままお腹を紫炎で攻撃するのが効率よさそう。


 更に西へと進み、道中のビックスパイダーは先ほどと同じ要領で倒していく。第一エリアよりもレベルの高いウルフとゴブリンもいたがこれは問題なく倒すことができた。ついでに魔力草を見つけたので魔力感知を頼りに収穫していったら何かに使えそうな草を見つけた


◆大蜘蛛草

 ビックスパイダーの性質を持つ草。調合や錬金で利用される。


◆黒熊草

 ブラックベアの性質を持つ草。調合や錬金で利用される。


 相変わらず鑑定くんの説明は役に立たないが、ステータスUP系のポーションを作れそうな感じがする。この感じだとモンスターごとに対応する草があるっぽい?まぁ、見かけたら採取する感じでいいだろう。結構レアな気がする。


 そのまま西へ進んでいき噂の湿地帯へ向かう。


 湿地帯が見えてきた辺りで、地面がぬかるんできて、若干歩きにくくなる。なので木に登って上を移動していく。そして森を抜け、湿地帯に入る。


 湿地帯は何処歩いても地面がぬかるんでいて非常に移動しにくい。これはアランの街まで行くのは大変そうだ。定期的にMPポーションをアランの街から仕入れているという話だったから何かしら楽な移動方法があるとは思うんだけどね。


 木は一本も生えてなくて視界が開けているにも関わらず、見える範囲にプレイヤーがいないので、どうやら不人気エリアのようだ。南か北の街から湿地帯を通らずに移動できるのなら、その方が楽だろうしね。


 モンスターについてはリザードマンらしきものが特に多い。あとは毒々しい色をした体長100cm~150㎝程度の大きいカエル。水の中には蛇やワニもいるかもしれない。っと、そういえば魔力視のスキルを取得したんだったか。狐火・蒼を通して使ってみよう。魔力視!・・・・これは違うらしい。なんかヘルプに使い方かいてないかなーっと。


◆魔力視

 目に魔力を込めて強化することで、魔力に色を付けてみえるようにする。


 書いてあった。なんでスキルの説明には書いて無くて、ヘルプに書いてあるんだろうか。なんか変じゃない?それともサイレントパッチでも当たった?スキルの方からも確認してみよう。


◆魔力視Lv1

 魔力を視るスキル。目に魔力を込めて強化することで魔力に色を付けてみえるようになる。


 書いてあるし・・・。最初確認した時は「魔力を視るスキル」としか書いてなかった気がするけど、苦情でもあったんだろうか?まぁそれはいいとして。今度こそ魔力視を使ってみよう。


 眼を魔力で強化して使ってみる。


「わっ!?眼がぁ!?」


 いつもの感覚で魔力を込めたら多すぎたようで、魔力らしきものは見えたが、視界の全てがカラフルに塗りつぶされて非常に目が痛くて気持ち悪い状態になった。しかも目を閉じても魔力の色が視えるというおまけつき。直ぐに魔力を込めるのをやめる。HPも少し減ってた。


 今度は少しずつ魔力を込めていき、魔力に色がついたようになったところで止める。どうやら先ほどのは自分で眼に込めた魔力が視えてしまってたようだ。


 使ってみたところ、まだまだ精度は低いみたい。魔物など魔力を多く持ってると思われるものは全身が魔力の色で塗りつぶされてしまい姿が見えず、魔力草などの微弱な魔力については薄ーく色がついてるかなという程度だ。


 魔力の色は様々だが、湿地帯の魔物は大体は青く、たまに青と茶色が混ざったようなのもいる。多分、魔力視では魔物が持つ属性の色が見えてるのだろう。あと空にも緑色の点が見えるので多分あれも魔物なのだろう。


 いまのスキルレベルでは戦闘には使えないが、魔力感知よりも広範囲に見えるのでざっくりとどこに進むかを決めるときには使えるだろう。まぁ、いまはとりあえず街の方までいきたいので魔力視はオフにするんだけど。この状態だと襲われても反応できないしね。



「さて、街に進みますか。」



ドォン!!!


「ギギギギュギュアアアア!!!!」


 移動しようと思った瞬間、突然少し先にあった池が爆発し、中から水竜と思われるものが現れた。酷い鳴き声だ。そしてどうみてもこっち見てるんだけど、もしかしなくても狙われてる?


「ギッギュァ!」


そして口から水弾を飛ばしてきたので避け、まずはと看破を使用する。


◆劣沼竜(レッサースワンプドラゴン):Lv35


 ・・・なんか明らかに勝てそうにないのが出て来たんですけど。絶対出てくるタイミング間違えてるでしょ。どうなってんのこれ。


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