第四節 王の愛情
「おまえはーー・・っ!!何をしているっ!・・馬鹿者っっ!!」
城に戻ったリオナを待ち構えていたのは、憤慨した父親ロワからの永遠と続く説教だった。
リオナは、何度か境界に起こっていることを、カイルという青年のことを伝えようと口を開いたが、一言発する前にロワの怒声にかき消された。
リオナは小さな溜め息をつき、うなだれ、ロワの怒りが去るのをただ待つしかなかった。
と、そんなリオナにしびれを切らしてか、ロワがつかつかとリオナに近づき、手を上げた。
(ーーー!!)
リオナは思わず目を閉じ、歯を食いしばった。
しかし、思っていた平手は飛んでこなかった。きつく、ロワに抱きしめられたのだ。
口では叱咤していたはずのロワの、リオナを抱きしめたその手は、震えていた。
そのとたん、リオナの瞳から涙があふれた。
「お父様、、!!ごめんなさいっ、、!」
リオナは、ロワの温かい胸に顔をうずめ、泣いた。今、こうして生きて父親の元に戻れたことに感謝した。
結局、ロワに辺境でのことを話すタイミングを逃し、リオナは自分の部屋へとそのまま戻った。特にカイルの事については、話すべきかを慎重に考えようと思った。ロワは、ルリィを死に追いやった漆黒に対する怒りの念が深く、自分を助けてくれたカイルの存在をどう捉えるかが、リオナは心配だったのだ。
そんな事を考えながら、ドアを開けたリオナを待っていたのは、これまた怒りに満ちたエリーだった。
「リオナ様っ、、!!危ない行動は慎んでくださいまし!!」
エリーの頬にもまた、涙の跡がある。リオナが城外へ消えてから、ずっと心配していたのだろう。
「エリー、ごめんなさい。守護の外が、もうそこまで、悪意に浸食されていたの、、。」
「えっ!境界が、、無くなったということですか?」
エリーは自分の口元をおさえ、信じられないという表情を浮かべた。
「分からない。一時的なことかもしれないし、そうじゃないかもしれない。私、、、私、悪意に全く、歯が立たなかった・・・」
リオナは悔しそうに、絞り出すように言った。エリーは、リオナの手を自分の手でそっと包み込み、
「リオナ様、、。本当に、よくご無事で戻られました。リオナ様のお命が一番大切です。もうお一人で城外へは行かぬよう、どうか、お願いいたします。」
エリーはそう言うと、夕食の支度をしますねといつもの柔らかい笑顔で言い、リオナに一礼して部屋から出て行った。
しばらくリオナは窓辺で考えていたが、すっと椅子から立ち上がると、エリーがさっき出て行った扉から周囲を見渡し、誰もいないことを確認した。
(お父様、ごめんなさい、、、
このままでは、、、今の私では、世界を救えない。)
リオナはこれから自分がすべきことを密かに決心し、部屋を出た。
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