第4話 狂気の幼馴染




「……」

「……」


 未だに布団の中でニコニコと笑う金髪の女の子(謎の美少女)。


 息子純ちゃんを人質にとられた俺。


 暫し見つめ合う両者。


 ・

 ・

 ・

 

 み、みんな、まずは俺の話を聞いてくれ。


 今、俺に起こった事をありのまま話すぜ。


『朝日の日差しが眩しくて起きた。ただ、日差しがうざったいから寝返りをして逃げようとしたらいつのまにか息子純ちゃんが人質にとられていた……』


 な、ナニを言っているのかわからねーと思うが俺もナニをされたのかわからなかった。


 頭は始めからどうにかなっているからそれは問題ねぇ。ただ、これが夢とかだったらどれだけ良かったか。でもそんなぁチャチなもんじゃあ断じてねぇ。これは警察にお縄につくとかの恐ろしいものの片鱗というか、もう、終わったぜ、俺の人生。


 もし、次生まれ変われるなら、どうか波紋を使わせて──


「──純ちゃんおはよ! 今日もおっきしてるね!!!」

「ちょっ! やめてくれる?! 朝からそんなNGワードを呟くのぉぉ!?」


 金髪の美少女はもっこりとなぜか膨らんだズボンに向かってまた挨拶をする。そんな美少女に素でツッコミを入れ。


 ネタに走ろうとしましたが、無理でした。助けて、ポルポル君……。


 ふざけている場合ではないと思った。


 目の前の金髪の女の子は見た感じ高校生ぐらいか? それに比べて俺は30間際のオッサン。普通に考えて終わってね?


 いや、待て。これって援k ──やめよう。そのワードも危ない。


 うんうんと唸り考えている時、何か引っかかり思い出しそうになった。というか、目の前の金髪の女の子の顔を一目見た時からと思った。『会ったことがある』ではない、『見たことがある』だ。勿論、目の前にいるような美少女などと地球で接点などない。


 なら──


 答えに辿り着こうと思考を回転させた時、それは起こった。


 さっきまでニコニコと笑みを浮かべていた金髪の女の子は突如として豹変する。目は笑っているはずなのに何故か笑っていないように見えた。何故ならその笑顔がとてつもなく怖い。それに金髪の少女の手が息子純ちゃんを掴み、圧迫が……。


 「息子純ちゃんを開放してくれ!」などと口が裂けても言えない。言ったら物理的に息子純ちゃんが裂かれる、というか捥がれそう。


 金髪の女の子は口を開く。


「──純ちゃん。ナイと思うけどさ。私といるのに私以外のことを考えてさっきから無視して私を蔑ろにしてる、とかナイよね?」


 低い底冷えするような声で。


「──ッ!?」


 その時にある記憶が蘇る。


 そう、この金髪の女の子は──


 マジ、かよ。この子『ルサイヤの雫』の筆頭ヒロインであり、主人公の幼馴染役の──「愛沢琴音あいざわことね」じゃないか。いや、髪の色が違うから見分け難かったけど……顔とか、まんまじゃん。でも、だからさっきと、思ったのか……。


 そう、この金髪の女の子はこちらの世界でなぜか増田のになっているが、元は『ルサイヤの雫』の主人公である「本庄努」の幼馴染であり、癒し系担当ヒロインだったのだ。


 ただ、まずい。今の状況は非常にまずい。そう思った増田は直ちに琴音の機嫌を取るために行動に移す。

 増田は「愛沢琴音」について自分の親よりもどんな性格か熟知しているため、の対処法も熟知している。


「──なに? やっぱり私以外のこと考えているんだ。そうなんだ。ふーん? もしかして私以外の女のこととか、ね? そう、わかった。純ちゃんがそのつもりなら──」


 勝手に結論づけた琴音は黒い笑みを浮かべ。他に考えている猶予もないと悟った増田は「ええいままよ!」という思いで──をかける。


「──琴音ちゃんそんなこと言わないでくれ。俺が君の事を嫌いになるわけないだろ? それに隠し事なんてしない。俺はき、君を……愛しているんだから!!!!」

「──ッ!? で、でも! 純ちゃんは私のことを無視、した。私のことを──「ごめん、!!」──ふえっ!?」


 何かを話そうとする琴音だったが、口を塞ぐために自ら琴音に抱きつき。耳元によると琴音の名前を呼び捨てにして甘い声をかけるのも忘れない。


 ただ、成功したのかさっきまでの恐ろしい雰囲気はなく、琴音は首から上、それも耳も真っ赤にするとあたふたとしだした。ただ、これが増田の狙いだった。


 お互い抱きついたことによりダイレクトに伝わってくる琴音の「フニャリ」としたお胸様の感触。東堂親子ほどの大きさはないが小さくもない。まぁ、手頃で丁度いいサイズということだな。

 お胸ソムリエでもある増田からすると……「グット」と言わざる得ない感触だった。


 変態なことを考えていると。

 

「あ、あわわ、あわわわ!? じゅ、純ちゃ、純ちゃん!!?!?」


 胸の中であたふたとしていた琴音だったが、動きが止まるとともに増田の胸に頰を付けると物理的に頭から湯気を出し、琴音は再起不能状態になる。


 それを見た増田は──計画通り。


 悪どい笑みを浮かべる。


 ただ、増田はこの空いた時間で瞬時に考えなくてはいけないこともある。それは、目の前の「愛沢琴音」についてだ。


 先程、記憶を思い出したことで非常に今の状態はまずいと増田は思っていた。


 簡単に説明するなら「愛沢琴音」は『ルサイヤの雫』でもとても人気なキャラクターで、ほとんどの紳士プレイヤー達が「愛沢琴音」を攻略対象としてに選ぶほど人気のキャラ。勿論、増田とて同じだった。

 そんなキャラクターを前にしてなにがまずいのか?というと「愛沢琴音」の性格にあった。「愛沢琴音」は主人公の「本庄努」の幼馴染であり、本来なら温厚で癒し系担当と呼ばれる女の子だ。ただ一つ欠点があるとすれば──好きになった相手に対してのこと。


 画面上でプレイする上なら愛が重いぐらいじゃあ「おお、ヤンデレか!」と思いワクワクとプレイすればいい。だが今は違う。ここは現実世界であり、なぜか「愛沢琴音」の好きな人が「増田純一」となっていた。


 それに「愛沢琴音」はただだけで「ヤンデレ」になるわけではない。ある、引き金トリガーがあった。


 それは──「愛沢琴音」がDQNに唆されるということだ。


 俺が介入した事により少し世界線が変わっているなら、俺が「愛沢琴音」の幼馴染であり、俺の介入により何かしらの要因が起こり俺が……DQNを担うのもあながち間違いではないのかもしれない──いや、俺DQNじゃないんだけど!? なに? 俺が軽率そうな男だって? 舐めるなよ? ド○キの焼き芋投げつけるぞ!?


 まぁ、そんな馬鹿な考えは置いといて……少し胸糞悪い話だが「愛沢琴音」のバットエンドの話をしよう。


 まず「愛沢琴音」がバットエンドに入るとDQNに目をつけられてそのDQN色に染められるというシチュエーションがある。そのシーンは『ルサイヤの雫』プレイヤーからしたらとても有名どころ。

 DQN色に変わった「愛沢琴音」はになり、っぽく変貌すること。その後主人公と久々に再開した「愛沢琴音」は元々の「愛情」が甦り、愛の重さがさらに上がり……愛が重い完全体の「ヤンデレ」となり、幼馴染である「本庄努」を殺──「ナイナイ」するという。


 考えていると増田の頭の中にある記憶がフラッシュバックするように甦る。


 それは──

 

 だった頃の「愛沢琴音」に……「琴音は黒髪も似合うけど金髪も似合そうだよな! 俺、清楚も好きだけどギャルも好きなんだよな〜」……と、伝えていたことを。




 いや、それもう、俺が犯人じゃん?!? ただのDQN担当じゃん!!?……い、いやいやいや、違う! 待って!! 俺の記憶では本当に変なことを琴音とした記憶なんてないから!! いや、マジで!! 俺、"キング・オブ・童貞"だから!!?


 逆に怪しいDQN童貞


 おふざけはここまでにして、本当に俺の記憶にはない。「愛沢琴音」が俺の幼馴染という時点でおかしなことなんだけどな。


 色々と気になるが今の増田には琴音の対応も全て把握済みなのでさして問題はない。


「──琴音ちゃん。昨日は疲れてて先に寝てしまった。約束守れなくてごめんな?」


 優しく話しかけ、今も自分の胸に顔を埋める琴音の頭を優しく撫でる。


「──んーん。私こそ純ちゃんの考えも知らずに。だから私の方こそ、ごめんね?」


 琴音は顔を上げると上目遣いで謝ってくる。


「いや、気にしてないよ」

「……嫌いになった?」

「全然」

「♪ 好き」


 ギューと抱きついてくる琴音に。


 おぉ。これは、凄まじいな。何という可愛さ。何というあざとさ!! でも、それが良い!!──いや、30手前のオッサンがJKにときめくのは事案だから抑えよう。うん。前の世界ではもっと歳いってるし……。


 自分の負の感情に蓋を閉めて普段通りに接する。


「あぁ、じゃあ──パンツ見せてくれ」

「──ヘ?」


 おっかしいなぁ。大人らしく接するつもりだったけど無理でした。


 つい本音が出てしまい。


 






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