第46話 自分 11

今もそうだ。体が弱り精神も弱り始めると、


制御出来なくなりそうになる。


邪悪な力が私を支配しそうに何度も何度もなってきた。


胃と腸が出血し、私から食欲を奪っていく。


もう数日、米を炊き塩だけで食べている。


私は人間の三大欲求がいずれも、風前の灯火のように


消えかけている。


だから、ここに真実を残そうとした。その意思を今、


書きながら意味を思い出した。


そう。あの父が百万円払うと言った日から、


裁判の話をするようにはなったが、父も当然覚えていた。


私が未払金五百万円以上を請求しない代わりに、


貴様らとは二度と関わらないと言った言葉を。


私は当然、裁判なんかに関わる気は無かったが、


父やその兄弟たちは、関わらせようとしていた。


それは、その後、叔父や叔母たちに会った時に色々気づいた。


父が勝手に、私への支払いの問題は終わったと、伝えていたようだった。


人の悪意は見えやすい、悪意の心があれば、それは表情や目に必ず出る。


しかし、私は父とお互いに心を開いて話した事は一度も無かった。


それがそもそもの問題だった。悪意は善意があるからこそ生まれる。


悪意しか無い者を私は知らなかった。どんな悪党でも善意の欠片はあった。


だから異常な行動も、必要なら非情な手段をとる事が簡単に、心に下せた。


そうだ。弟を殺せと言ってきた時も、躊躇ためらいひとつ無かった。


ドアをノックされ、いきなり普通に話すように、殺す話を持ち掛けてきた。


もっと深く考えるべきだった。その異常性には気づいてはいたが、私も手一杯で、


殺そうとしているくらい危険だと感じているなら、あの愚かな母を説得しろと


私は言った。父は納得していなかった。母に関しては触れなかった。


それは父が生きる上で、母という道具が必要だったからだったのは


私は知っていた。だから最低限の事しか私も言わなかった。


しかし、その最低限ですら返事はしかなったが、拒否した。


弟も母親も精神異常者だ。


母が言っていた言葉だから、本当か嘘かははっきりとは分からないが、


病院の医者は出すことに反対していた。と一度だけ言った。


父が医者だった為、言われたとしても、強くは言われなかったはずだ。


B型は基本的に自己中心的な人間が多い。勿論、全員では無いが、その傾向が


強く見られる。私の父も母もB型だった。当然、私も弟もB型である為、


自己主張の強い母に、父は殆ど関わろうとしなかった。


私はB型っぽく無いと、女性にはよく言われる。


面倒見も良いほうだし、自分でいうのもなんだが、気が利く。


強要され育てられたのは私だけだった。弟は変わり者だった為、母が擁護していた。


やり過ぎな程に擁護されていたが、結局、母は嫌われた。支配欲が強すぎるためだっ


た。全てを知っていないと、気が済まない人間だった。己のキャパシティーを超えて


いた為、薬でそれを抑えていた。支離滅裂でしかないが、既に制御不可能な人間にな


っていた。



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