第18話 自分 2

私は部屋に戻り、椅子に腰かけてPCのオンラインゲームの


FPSを、そのまま放置して深く座って考えた。


これまでとは話が違うからだった。


祖母は私を大切に想ってくれていた数少ない一人だった。


腐り切った親とは違い、祖母は私を孫として見てくれていた。


時間にして5分ほど考えた。


そしてまた奴らは勘違いするだろうが、


それは私とあいつらの問題であって、祖母は何も知らないし


無関係だ。私は悩んだ末、祖母に対する恩返しとして会うと決めた。


そして階段を降りて、行ってやると言った。


父には直接、罵声を浴びせたから不思議な顏をしていた。


母は安心したような顏をしていた。


昔言う事、聞かない時は殴られた。


思い通りにならないから殴るのであって、私の為にじゃないと


私は理解していた。


しかし、少林寺拳法を習い事に入れられ、私は元々弟と日常のように


喧嘩をしていた上に、技を覚えた。


父が最後に私を殴ろうとしたのは、中学生の時だ。


殴ってきたパンチを受け流すように止めてからは、


理解したのか、一切殴ろうとはしなくなった。


私は8年間も会えないままでいた。


部屋に入ると、大きな部屋なのに、親族が集まっていた。


私は親族に目を向けた訳では無い。ドアを開けられた時に


見えただけだ。


部屋に入ると祖母がベッドに仰向けになって休んでいた。


私は今も覚えている。そして今も涙が出てるが、


人前では泣かない私が、涙が止まらなかった。


本当に情けない母は、親族たちが立っている場所に行き


「皆の中で泣いたのは、うちの子とあの子だけなのよ」と


声が聞こえた。どうしたらそこまで情けなくなれるのかと

私は心の底から思った。


しかし、私は祖母だけを見ていた。


弟は母のせいで、祖母嫌いになった。昔の事だが、祖母からの


電話を弟に聞かせた。まだ小さい子供が聞けば怖がる事さえ


考えもしないで、思うがままに後先考えず行動した結果、


弟は会いに行く事を止めた。


祖母は私を弟だと思って話していた。私は否定せず、話した。


そして私は「さよなら」とは言わず「また会おうね」と言って


後部座席に乗って帰る最中、母は言った。


「本当はもう辛いから、透析を止めて死ぬつもりだったけど、

皆に会って生きようと思ったようよ」と言った。


私は返事は返さなかった。祖母の為に行っただけで、


もしあれが祖母の病室でなければ、怒鳴っている行為をした。


私が泣いた理由さえも分からないから、泣かないのだろうと。


そしてその日の真夜中、祖母は他界した。


母は透析をまた始めたけど、間に合わなかったと言った。


そして今から数年前、私は祖母の話を母にした。


透析を止めたから死んだ事を、いつから止めたから死んだのかを。


母は言った。


「何の話?」

「透析を止めたから死んだんだろ?」

「違うよ」


私は思った。嘘をつく理由が全く無い事でさえも、もう本当に


デスマスクのように嘘つきの仮面が、張り付いているのだと。


嘘はその場限りである為、言った本人でさえ忘れることが多い。


祖母の死に関して、嘘をつく理由は私には全く理解出来なかった。


私は話すのを止めて、正直恐ろしいと感じた。


祖母は次の日、葬儀屋が用意した部屋に何人泊まるのか


尋ねて来た。泊まると言ったのは、私だけだった。


奴らの中では、死んだら終わりなのだと感じた。


祖母が一番信用していた東京の叔父に、私に対しての遺産を残すよう


伝えていたが、何事も無く終わった。


私は思った。

死んだからと言って、約束を守らないような人間には成らないと、

心に強く誓った。遺産など要らない。しかし私はこの世界に産まれた。


だからこそ多くの事を肌で感じ、体験から多くを学べると思った。

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