第8話 戦艦大和の叔父 2

 戦艦ヤマトを設計した叔父は、東大を主席で卒業していた。


私の父が子供の頃は、本当に食べるものが無い家もあり、


授業中、いきなり口から出ない程の大きさの寄生虫が出るのを


何度も目撃したと父は言っていた。


そして私の父は、叔父に医学部に入りたいから勉強を教えてくれと


頼み、弟と父の両人は、猛特訓した。


そして一年後、合格し、父は東京に喜び勇んで、


遊びに行くために東京に足を向けた。


合計で10年の大学生活を満喫し、更に開業する為に10年大学病院で


無賃で働かなければならない為、週末にバイトをしながら行っていたと言った。


私はこの話を聞いた時、疑問が生まれた。


お金はまだあるのに対して、何故バイトをする必要性があったのか?


その答えは、曾祖父の時代から子供たちは皆、政略結婚をしていた。


父は実家に帰れば、政略結婚させらえる事を知っていた。


当時、父は看護師の母と付き合っていたが、母は父の一族の事を何も知らず、


それを明かす事の無いまま、大学卒業後にバイトをしながら、祖父に内緒で


母と結婚をした。その立会人は、東大の医学部を出た弟がした。


古くからの金持ちは異常なほど、本家の長男に対して兄弟でありながらも


肩書が上でも、絶対的な服従に近い、敬意を払っている。


それはどんな人間でも同じである。


古くからの金持ちの見分け方は、単純ではあるがひとつある。


トイレが別々にしていれば、それは古くからの金持ちだと言える。


実際、曾祖父の家もトイレは別々にあった。


そして私の実家も同じようにトイレは別々に、二階と三階に用意されている。


私が初めて友人の家に行った時、男子便所を探したが見つからず、


友人にトイレの場所を聞いて、初めて普通はトイレがひとつしかないのかと


思った記憶は今も残っている。私にとっては衝撃だったからだ。


父は既に、東大の医学部を出ていた弟に立会人をさせた。


これも一見では見えないが、父の策略が絡んでいる。


私は以前、父に尋ねた事がある。「何故、東大に行きたがるのか?」


父は答えた。「それはコネクションの為だ。それ以外には特にない」


私はそれを聞き、確かにその通りだと、納得した。


実際、父の弟は東京で暮らしていた時は、東大仲間と一緒に家を借りて


住んでいた。医学部では無かったが、その人は後に、アメリカ大使に


任命された。つまりは大使のトップである。一番大切な場所から、


大使は任命されていく。アメリカは日本にとって、


無くてはならない国だから、一番有能な人が任命される。


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