第7話 戦艦大和の叔父 1

叔父は大きな石碑の裏で、弁当を食べていた。


爆心地よりは離れていたが、その爆発音や衝撃は


運良く、石碑の表方面で原爆は落ちた。


叔父は被爆もせず助かったが、巨大なきのこ雲を見た。


私の父の家と、市内では距離があるが、きのこ雲は


ハッキリと見え、何かとてつもない事が起こったとしか


分からなかった。


よく昔のテレビなどで御国の為に! と言うのは大嘘だと


父親は言っていた。誰もが嫌がっていたと怖い物知らずな


私の父親らしい本音を公言していた。


誰が飛行機で突っ込みたいと思うか? と私は言われたが


知らない時代なので何とも言えなかったが、


まあ父親の意見が本当だろう。


うちは裕福な上に、祖父は医師として従軍した。


普通の人とは違い、医師で軍隊に入った場合は、ある程度の地位を与えられる。


叔父は戦艦ヤマトの設計者としてIHIの重役になった。


私は一度、家に来た時一緒に飲んだ。本人から直接、話が聞けた。


出張費用上限無しで、必要ならば何でも幾らでも使っていい最高責任者


CEOであった。私は友人が人材派遣会社を始めた時、一カ月程度だけIHIの


下請けの下請けの下請けの下請けくらいの所に配属された。


私は自分の事は何も話さなかったが、3日目にして、上層部が騒ぎ出した。


これは他の大会社の時も経験したが、何故いるんだ? と上層部から下請けに


くれぐれも注意するように言われたらしい。


ある日、私は腰を痛めて、休憩時間にヘルメットを枕替わりにして


横になっていた。


突然、ヘルメットを思い切り蹴りつけて来た。


私が配属された下請けには、私の事を知らされていた為、一瞬凍りついた。


私は権力は嫌いだが、下請けの扱いの酷さに、特に何も言わなかった。


そしてある日、私は仕事は真面目にするが、「お前の居場所はここじゃない」と


言われた。意味は理解していたが、一応聞いた。


「私じゃ役不足ですか?」

「そうじゃない。ここは最下層の人間がいる場所だ。お前なら上に行ける人間だ

このような酷い扱いを受ける現実を変えてくれ」と言われた。


指が無い人や、入れ墨だらけの人たちは、更生して働いていた。


私のヘルメットを蹴ったのは、何十人もいる監督の下っ端でしかなかった。


しかし、心は穢れていた。


日本一のある種を扱う会社も親族で、高校生の頃、バイトで一カ月だけ入った。


最初は従妹に会い、そして案内係が私を、


数千人規模の総監督の元に連れていかれた。


私の履歴書を見て、名前を見た瞬間にすぐに理解していた。


下の人は私を知らないが、総監督は心配してなのか、何度かの休憩時間に


私に会いに来ていた。私が彼女と電話をしていたら、


「早く切れよ」と言われた。


それからは外にある公衆電話からかけていた。


総監督がきて「ここのを使ってください」と言われたが、私は理由を言わなかった。

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