第12話

★◇◇

「まてって、どこか行くの?」


「私たちの家に来て欲しいのだけどいいかしら?」


「まあ良いけど、俺親に連絡する手段がないんだけど一度家に帰ってからでもいい?」


「スマホは持ってないの?」


「今までガラケー使ってたんだけど。

 あの山で落とした。

 それっきり保証も効かないし病院代とかで色々お金がかかって変えていないんだよ。」


スマホに機種変更する費用のことを考えるとまだその時ではない。


「連絡手段が無いので予定を変更すると親が心配するから一度帰っていいかな。」


「流石にそれくらいの分別はあるわ。

 …ただ。」


彼氏彼女に見られた時が嫌だ。

元々文芸部の陰キャで、筋肉がついて多少は自身が付いたみたいだけどその本質がまるで変っていない。

なよなよして情けない。

女性に嫌われたない、信じられないって言う女性との関りが薄い性格がにじみ出過ぎている。


こんなのと彼氏彼女の関係だと思われるのは甚だしい。


彼の実力を見るために3か月から半年ほど、両親や他の面子と一緒に仕事に付き合ってもらおうと思っているだけだ。

それなのに互いに両親に挨拶するとか、幼馴染とか、親同士の付き合いがそもそもあるとかで挨拶をあらためてするとかなら理解できる。


高度な心理戦が必要だ。


決まった時間に待ち合わせすればいいのではとも思ったろう。

高校生でスマホを持っていないだけで待ち合わせは非常に困難なものに成る。


連絡手段だけでなく時計としての手段も兼ね備えているのがスマホ。


高校生が時計をする人は運動部ぐらいしか居ない。(ストップウォッチ付のもの)

大学生で辛うじてスマートウォッチを持っている程度。


「あ、俺の家にまで来なくても良いよ。

 雄馬の家で待ち合わせで良いかな。

 多分そちらの両親とも話をするだろ。

 俺がスマホを持っていないことを配慮しようとしてくれたんでしょ。」


「勘違いしないでよね。

 待ち合わせが面倒だと思っていただけだから。

 時間は大してかからないようでしたら、家に着き次第向かってくれればいいわ。」


「了解。」


ツンデレって言葉が脳裏に浮かんだが、俺に対していい感情を抱いていない彼女ら

さっさと家に行ってやることを済ませるとしましょうか。


「走っていくの?」


「走った方が早いからね。」


身体強化を使って細心の注意を払いながら道路を走る。

なんせ今の自分はトラックと同じ力を持っているため、ぶつかったら交通事故じゃすまない。


「なんて速さよ。

 私たちの使ってる術よりももしかして早い?」


ルルからすればそれはただの実力差にしか見えなかった。

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