君の幸せを願っています

 今日は、最高のデート日和。

 つい最近、親友の里中さとなか逸樹いつきに紹介してもらって出会った、本城ほんじょう茜音あかねちゃんとデートするのだ。気合いを入れすぎて、待ち合わせ場所に早く来てしまった。

「あと、三十分あるのか。下見しとくか」

 時計を確認して、待ち合わせ時間の十分前に鳴るようにアラームをセットする。適当に近くを歩こうと辺りを見渡している時だった。背後からいきなり声をかけられた。

「楓斗?」

 振り返るとすぐ後ろで、丈の長い黄色いワンピースに白のカーディガンを羽織った女性がこちらを見上げている。

「やっぱり、楓斗だ! 久しぶり。私のこと覚えてる?」

 懐かしそうに親しげに微笑む彼女。

何も変わっていなかった。服の系統も仕草も、何もかも昔のままだった。

 忘れるはずがない。

 ――――俺のなんだから。



 ふと、色とりどりのスイートピーが咲いている光景が思い出された。

 その中で、一緒になって風に揺られながら、楽しそうにこちらを見る彼女。

 叶うことのなかった想いが再び、心の中でくすぶり始めた。

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