第39話⁂怪しい一室⁈⁂

 次から次へと消えている施設の子供たちは何処に?

 こうして……早速施設の実態を見張り出した翔。

 

 だが、3週間昼夜を問わず見張ってみたが、何も起こらない。

 それでも…懲りずに見張った。

 

 すると1ヶ月と少し経ったある日、知的障害児で、いたって元気な子供なのだが、癇癪を起す事があり、暴れてとりわけ手の掛かる元気な子供が、治療中に突如として亡くなった。


 {あれだけ元気な子が一体どうして?可笑しい話である?}


 この医療センタ―では、このようにいたって元気な子供達が忽然と、亡くなる事故が多発していた。

 

 それでも…親が法的措置に出ない事も有り、益々常態化している。

 何か事件性は有るのか?

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇

 それでは一連の事件を紐解く為にも、まず、あの〔オオカミ怪人〕の葵と多動症の椿辰也をもっと深く掘り下げていく必要がある。


 美咲と直樹は懸命になりあの葵を追っている。

 その後で椿辰也も調べるつもりで居る。


 親のすねをかじっていると言うので、まだ若いと思いきや、まさか、こんなに年齢が言っているとは思わなかった美咲と直樹なのだが………。


 実は2015年現在、35歳になっていた葵なのであるが、分かって来た事がいくつかある。


 性別は男性なのだが、実は、過去に思いも寄らない事件に遭遇していた葵なのだ。


 不運な事に、もうすぐ6歳の誕生日を迎える葵は姉と連れ立って公園に遊びに行ったのだが、帰り道で脇見運転の車に激突されて、顔や身体に負傷を負い大打撃を受けて、手の付けられない状態になってしまった。


 幾度となく懸命の治療を施すも元の姿に戻らず、更には運が悪い事に、もう直ぐ小学生になると言うのに、こんな姿では嫌だと狂ったように延々と泣く葵。


 そんな姿を見るにつけ、親としても葵が不憫で不憫で考えあぐねて居た。


 姉としても{自分が付いていながら、こんな事になってしまって}と、後悔しきり。

 こうして5歳上の姉がとんでもない提案した。


「そんなにイヤなら、何か被り物をして学校に通えば良いじゃないの?」


「それじゃかつらで、傷を隠せば良いじゃないの?」


「イヤだ!それでも……?絶対この傷隠れないし……アッ!そうだ!僕ライオンになりたい!だって強いんだもん!」


 こうして酷い傷跡が残ったのだが、自分の憧れの百獣の王ライオンになれる喜びで一杯の葵に一安心の両親と姉。

 子供と言うものは変身願望が、思った以上に強いものだと感心させられる両親。


 たまたま大手企業のお偉いさんだった父親のお陰で、普通のかつらでも結構値が張るのだが、本物のライオンと見間違うほどのライオンの着ぐるみを、大金をはたいて特注で注文して貰い大感激の葵。


 こうして先生にも相談した上で、ライオンの被り物で学校に通い出した葵。

 生徒にしたら虐めるどころの騒ぎではない。

 ビックリしたのと、怖いので、口さがない悪ガキから、酷い言葉を浴びせかけられる羽目になった葵。


 それでも…もともと気丈な腕白だった葵は、そんなこと物ともせず、反対にチビっ子なのに上級生にも果敢に飛び付いて行く有様。


「何を————ッ!俺様は百獣の王ライオンだ!ガオゥ————ッ!」


 こんなチビッ子の百獣の王に呆れるのと、可愛らしいのも相まって、先輩達もすっかり舌を巻く始末。


 こうして色んな噂話が面白おかしく作り上げられた。


 それでも…頭の良い優秀な葵の人生にこの醜い傷は致命的。

 姉は自分が付いていながら、たった一人の弟をこんな醜い姿にさせてしまい………。


 そう思い、可愛い弟の為に寝る間も惜しんで勉強した。

 こうして東京大学医学部を卒業して、若干40歳でありながら形成外科の第一人者となった。

 それもこれも、何としても弟を直してやりたいが為に、ここまで頑張れたのだ。


 文京区の大学病院で、研究と銘打って懸命に葵の治療に当たっていた高名な医師、夏美。

 懸命な手術と治療の結果、徐々に綺麗になって来た葵なのだが、その噂は瞬く間に広がり、決して治らない再生不可能と言われていた、醜い傷跡も治療可能とわかるや否や、大富豪や大富豪の家族を治療して欲しいとの申し込みが殺到する羽目になった。


 

 ********

 葵は3歳からバイオリンを習っていた。

 それなので文京区で、深夜に鳴り響いたのは葵の仕業だった。


 それではなぜそんな真夜中にバイオリンを弾いていたのか?

 それには訳があるのだ。日中バイオリンを弾いても聞こえない。

 こんな大都会東京、バイオリンの美しい音色も騒音でかき消されてしまう。


 要するに、このバイオリンの音色は居場所を知らせる合図?


 それでも…昨今、スマホ等でも『位置ナビ』なる居場所特定出来るものが有るのでは?

 また、2018年頃から若い人の間でZenly(ゼンリー)というアプリを使い、互いの場所を伝え合うという事をしているようだが?


 色んなメカがはびこる時代に時代錯誤もはなはだしい。


 イヤイヤそんな問題ではない。

 同じ目標を持つ同士で住まいが直ぐ傍に有るとしたらどうだろう………?

 誰にも気付かれない様に、例えば殺人の合図とか………。


 合図は合図でも1コーラスは人を拘束する。

 2コーラスは人殺しをする合図。

 例えばの話である。


 そこには想像も付かない策略と、人物の存在が有る。

 ◆◇◆

 次から次へと消えている施設の子供たちは何処に?


 こうして……施設を見張り出した翔。

 だが………これに異を唱えたのは誰有ろう姐さん。

 翔に刻一刻と危機が迫っている。


 あの日仮面舞踏会に招待されたメンバーは、男性20名、女性20名。


 実は…日本でも有名な日用品メ-カ-〔プリンス〕の菊池淳四十歳は、父親が社長を務める日用品メ-カ-〔プリンス〕の副社長であるが、ドライブマニアで二十代の頃ドライブ途中に事故に遭い、片足が義足なのだ。

 更に目は義眼である。


 専門知識を有する有名な大学病院で治療を受けた後は、リハビリ施設のある障害者施設〔レインボ―🌈〕医療療育センタ―5階に暫く入所していた。


 

 何とも偶然な事に、その時に愛人涼子に硫酸を掛けられた翔も、大学病院で治療を受けた後、父の経営する障害者施設〔レインボ―🌈〕の医療療育センタ―5階に治療の為入所していた。


 そして…2人は同じ医療療育センタ―5階で知り合いになって居た。



 それでも…何故日本でも有名な日用品メ-カ-〔プリンス〕の御曹司が、こんな胡散臭い施設に入所したのか?


 それは昨今の世知辛いご時世、世襲制を押し通そうとしても、こんな歩けない身体になった淳を、社長の兄弟たちが絶対に黙っている訳が無い。

 

 要は兄弟たちも社長の椅子を狙っている。


 淳のこの様な状態では絶対に苦情が入ると思い、おいそれとは跡継ぎに推薦できないと危惧した社長が、現状を知られたくないばかりに、人目に付きにくい、この胡散臭い施設に入所させた。


 脊髄損傷の大怪我を負った歩く事もままならない息子淳を、人目に付きにくいこの施設でリハビリさせて、その後に継承させようと目論んでの事なのだ。

 どうもリハビリ次第で歩けるようになる事もあるらしい。


 その同じ医療療育センタ―5階で、たまたま一緒だった翔と淳は、お互いに顔に負傷した2人だが、その2人を強くとがめ、暴言を吐く腕白坊主たちに、その当時死苦八苦していた。


 だが、淳は翔より6歳年上だったので、腕白坊主達も必要以上に酷い事を言えなかった。


 幾ら腕白坊主と言えども、歩けない車椅子のお兄ちゃんだが、年上のお兄さんは身体も大きいのでチョット怖い。

 だから…淳は、何とか我慢できた。


 それでも…お互い健常者だったのに翔は片目を失い醜い顔になり、一方の淳の方も片目を失い更には下半身不随になってしまった。


 その苦しみは想像を絶するものが有った。

 お互いに境遇が似通っている事から、誰にも分からない2人だけが感じる苦しみ、痛みを痛いほど共有することが出来た。


 こうして強い絆で結ばれた2人は互いに助け合っていた。

 そんな時に行方不明事件が起きる。

 一体行方不明の子ども達はどこに消えたのか?


 ◆▽◆▽◆▽◆▽

 翔が障害児施設に移ってから暫くして、障害児施設〔レインボウ🌈〕の出身者で発達障害のミュ-ジシャン矢口謙太、当時17歳から奇妙な事を聞いた。



「過去に起きた恐ろしい事件で、15人殺傷事件知っている?それから施設の仲間が最近知らぬ間に行方不明になって居るんだ。一体どうなっているの?、助けてヨ!翔兄ちゃん!」


「……俺も過去の15人殺傷事件は、不審に思っているんだ?それから……今回は行方不明?エエ—————ッ!一体これはどういう事ヨ?誰かが虐めて、それで辛くて逃げ出したって事は無いか?」


「そんな事は絶対無い!皆、障害が有って自分の事で精一杯だから……」


「じゃ~俺は、ヤケドだけで、どこも悪くないので出歩く事が出来るから、探ってみるね?」


 こうして施設の実態を探り出した翔は、ある晩の9時過ぎに、とうとう奇妙な現場を目撃する。


 ある晩の事、聴覚障害施設(重複者支援施設)のケン君が施設長さんに支えられて出て来た。


 {あれ~?普通だったら消灯の時間なのに、こんな時間にどこに行くのだろう?}


 そう思い跡を付けた。

 すると医療療育センタ―に消えた。

 尚も後を付けた。


 すると、こんな場所があったのかと目を疑う程の奥まった場所で、更に今まで一度も来た事の無い6階のオペ室に辿り着いた。


 {エエエエ————————ッ!一体ここで何が行われているの?}


 そこで暫くたたずを吞んで様子を伺っていると………。

 元々失語症のケンちゃんなのだが………微かに?

 その時何か……?妙な声がした。


「グウウウウ グワ——ッ!」


あれは今考えると……どうも臓器摘出が行われていたのではないだろうか?

それからも翔は、懲りずに見張っていた。


すると身体は健常だが知的障害のある子供だったり、聴覚障害施設(重複者支援施設)の⒗、17、18歳ぐらいの子供達がいかにも怪しい、何とも奇妙な6階のオペ室に消えていっている。


だが、あの奇妙な声はあの日一回きりだった。


すると、その怪しい行動を施設内外に設置してあった防犯カメラで覗き込んでいる人物が?


そして…翔の怪しい行動にギラリ目を光らせている人物が………。




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