第30話⁂病院経営⁈⁂



 2005年4月上旬の事である。

 川の両岸の桜並木がライトアップされ🌸⋆。*

 何とも幻想的に咲き誇る夜桜の名所でもある目黒川。


 約4kmにわたり約800本の桜ソメイヨシノが陽の光を浴びて、芸術的な曲線を帯び咲き乱れている*。❀⋆

 夜にはぼんぼりの灯りが川面に揺れてさらに幻想的な世界が広がる。


 そんな丁度目黒川の桜が見頃を迎えたその頃、東京の愛人涼子宅であの恐ろしい硫酸事件は起きた。

 愛人涼子が、余りの自分達への扱いの酷さにとうとうブチキレて、九州に追い出される事となった夜に、組長夫婦の愛する翔に硫酸を掛けた事件。


 こうして愛人涼子と徹は、姐さんの逆鱗に触れて射殺されてしまった。


 愛人涼子と徹も何とも気の毒な最期ではあったが、やり方が酷すぎだから致し方ない。

 一方の硫酸を掛けられて醜いお化けの様になった翔は、可哀想に泣き狂っている。   それは、それは、哀れで………。

 

 組長夫婦は早速、翔のただれた顔を治療して貰う為に、高度で専門的知識を有する大学病院で、専門的な治療を受けさせた。


 こんな状態に陥り、翔の為にも何としてもと、施設経営に意欲を燃やす組長夫婦。


 それでも…暴力団員が、そんな福祉事業に参入出来るのか疑問が残るが———


 実は近年暴力団が、介護事業に進出しているという事をよく耳にする事があるが、実は現在沢山の都道府県から認可を受けて暴力団が指定介護事業所を運営している。

 [雇用関係の助成金が手厚く、不正がしやすい介護は格好のターゲット]


 柳田組長夫婦は早速手をまわして施設経営を模索している。


 ◆◇◆◇

 お医者様と聞くと富の象徴のように思う方々も多いのだが、それは経営手腕のあるお医者様であればの話である。


 それでは、日本の病院経営は何故苦しくなったのか?


 それは、2年に一度厚生労働大臣が定める診療報酬が、巨額の財政赤字のため、低く抑えられていることが災いしている。


 翔が硫酸事件に見舞われた(2001~2006年)、3度の改定で診療報酬が約6.9%引き下げられ、赤字病院が続出した。

 バブルが崩壊して企業の倒産が相次ぎ、就職氷河期に見舞われた日本では、丁度その頃病院の倒産も増大していた。



 近年の調査によると、日本病院会など3つの病院団体の発表によると、2020年4~6月の3カ月間で、全国の病院の66.6%が赤字に陥ったという。


 ましてや不動産や人件費が高い都市部では、飲食代やホテルの宿泊料金は当然高くなる。

 ところが診療報酬は地域にかかわらず全国一律という現状化、都市部の病院は、普通にやっていたのでは採算がとれない。


 このため、余分な検査をしたり、豪華な個室をつくって差額ベッド料金で稼いだり、儲からないわりに訴えられたりする事も多い、リスクの高い産婦人科や小児科を閉鎖したり、病院を中核として高齢化社会で益々需要が見込まれる介護・福祉施設、検診センター、訪問看護ステーション、看護専門学校などの関連事業を展開している。


 だが……この様に融通の利くお医者様ばかりではない。

 皆が皆、経営手腕が有る訳ではない。


 ましてや近年のコロナ禍で窮地に追いやられている病院が多いらしく、診療報酬改定やコロナ禍で、にっちもさっちも行かない病院も多いと聞く。

 それを嗅ぎつけたヤクザが、近づいていくケースも多々あるらしい。


 ヤクザはどのように近づいて来るのか?

 それは実に、巧妙に近づいて来る。


 例えば、経営コンサルタントを名乗って安心させて、資金繰りに行き詰まった病院に接近し、診療報酬担保で当座の金を融通する。


 こうして理事長をうまい事丸め込み、配下の人間を事務長や事務員として送り込み、「銀行に信頼されている人物だ」「もっと経営を改善する必要がある。その為にはこの人材をもっと活用しないと!」など、さまざまな理由をつけて「社員」にする。

 ここで言う「社員」とは従業員ではなく出資者のことだ。


 最近のヤクザは、高学歴のエリ-トヤクザも存在するらしい。

 法律を幾分知っている理事長にも臆する事無く、いかにも分かった様に法律の御託を並べ、すっかり信用させて配下の人間を次々と社員にし、社員総会の過半数を握ると、経営権を奪う。


 形ばかりの新理事長には、あらかじめ確保してあった借金で首が回らなくなったような“不良医師”を据える。

 借金で首が回らなくなった“不良医師”を思い通りに動かして行く。

 この様な経緯で経営難に陥っていた病院で現在の〔レインボ―🌈〕を、実質上柳田組の支配下に収める事に成功した。


 こうしてこの施設〔レインボ―🌈〕での生活を送る事になった翔。

 そこには思いも寄らない事件が相次いで起こる。











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