第8話⁂直樹!⁂


 東大卒でアスペルガー症候群の夫直樹は、小学校の担任教師に「脳ミソが腐ってるんじゃないか?頭が悪すぎる」と言われていた。

 どうしてそんな事を言われなければいけなかったのか?


 実は…直樹の父親は大学病院に勤務するお医者様、その為家には医学書が山ほどある。

 父親に似たのか、医学書に興味津々で、寝ずに医学書を読み漁る日々が続いたかと思うと、今度は部屋に閉じこもって何やら研究中、その集中力ときたら尋常じゃない。

 そして…何やらカバンに入れて、いそいそと学校に出掛けた。


「鳥のように空を飛べるクスリを発明したんだ。君を鳥にしてあげるよ」


「ワァ~イうれしいな~!直樹のパパお医者さんだから安心だね」


 友人にそう言って飲ませたのだが、バタリと倒れてしまった。

 小学校の校庭は急遽大騒動、やがて救急車に載せられ、お友達は病院送りになった。

 この様なとんでもない問題を度々越していたので、先生も暴言を吐かざるを得なかった。


 また家のペット用フェンスに電流を流して、どのくらいの電流で感電するか実験したくなり、ペットの犬や猫を何匹もあの世送りにしている。


 その時は家族から相当お仕置きを受けた直樹なのだが、一度凝り出すと徹底的に集中する癖が有る。



 そして…東京大学在学中にも、直樹には数々の珍武勇伝が残されている。

 その為当時の友達が言うには「ミスター偏屈」という言葉がぴったりの学生だったらしい。


 何故ミスターが付くのかと言うと、どういう訳か、あんな変わり者だが、ミスター東大のファイナリストに残った事が有った。


 性格は偏屈で、優しい所もあるが、癇癪持ち。

 その為、気に食わない事が有ると物を投げつけたり、噛みついたりする事は日常茶飯事。


 もうここで、結婚相手相手としては完全にアウトでしょう⁈

 美咲も一体何処が良くて、こんな偏屈者と結婚したのか?


 実は…直樹は、ミスター東大のファイナリストに残っただけあって、超が付くほどの美男子。

 若い頃はどうしても、外見だけで判断してしまう事も多いのよね~?



 更には、アパートの部屋では衣服を着けたまま水浴びをするものだから、下の階の住人からは苦情が耐えなかった。

 だから直樹の友達は直樹を「ロビンソン・クルーソーみたい」と噂していた。


【ロビンソン・クルーソー:乗船した船が難破して、一人無人島に漂着した。そして自給自足の原始的な生活から便利な道具を作り必死で生きた】


 髪はもじゃもじゃ、着ている服にも無頓着で、部屋の中はクチャクチャなので浮浪者と間違えて警察に誤認逮捕された事もある。


 だが、ルックスに惚れ込んだ美咲が、家に遊びに来た時に剃ってやるので大丈夫。

 それだけ惚れ込んでいたという事だ。


 部屋の中は足の踏み場もないほど乱雑で、食べっぱなしの食器や脱ぎ散らかした衣類は至る所に存在し、本も至る所に散らかってゴキブリがウヨウヨ。

 その為あだ名は「ゴキブリ」だった。


 それでも…自分の身体には滅茶苦茶気を使う潔癖症だったらしい。

 面白いもので、直樹は超が付くほどの潔癖症で、一日に何十回も手を洗ったり、風呂好きで洗濯好きという一面もあった。


 それなのに、部屋があれだけ不潔だったのは驚き。

 やはり、アスペルガー症候群が災いしているのか?


 それから引っ越しマニアで、直樹は東京大学在学中に十回も引っ越ししている。

 それはそうだろう、衣服を着けたまま水浴びをするし、ゴキブリだらけにしてもお構いなし、そのせいで、マンションなんか直ぐに追い出されるし、アパ-トでも大屋に何回も叩きだされている。


 それと誠に身勝手な話だが、自分で滅茶苦茶に汚しておきながら、汚いからと単純に部屋が汚くなり過ぎて引っ越した事も多数。

 全くとんでもない変わり者。


 こんな一見何の取り柄も無い直樹だが、どういう訳か舅姑には超気に入られている直樹。


 一体どこが良いのか?

 どうも舅姑の言う事には一切逆らわず、誠心誠意尽くしている様子。

 美咲は一人娘で言いたい放題なので、直樹に救われているそうなのだ。


 こんな直樹だが、美咲と色んな難問に取り組んで行く事になる。

 果たして”オオカミ怪人”は見つかるのか?


 それから行方不明の仮面舞踏会の招待客の女性達の安否は?



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