過酷な路

結騎 了

#365日ショートショート 112

「もうだめ、無理。死んじゃうよ!」

「諦めるな、手を伸ばして、ほらっ!」

 幹男は冷や汗をかいていた。足元がおぼつかない。狭い橋の上で、ぐら、ぐらと、全身が揺れる。落ち着いて深呼吸をし、体幹を整えればいい。それは分かっている、分かっているのに……。すぐ下で溶岩が煮え立っているこの場所では、そんな落ち着きは取り戻せない。めらめら、目の奥に炎が揺れる。その熱で今にも肌が焼けそうだ。

「こっちに手を!早く!」

 将太は橋の先で幹男を救おうとしていた。ここで友達を救わずに、なにが親友だ。

「でも、だめだ。ここでふたりで手をつないだら、一緒に溶岩に落ちてしまう」

「馬鹿やろう!俺だけ生き残ってもしょうがないだろ!ほら!」

 がしっ、とふたりの手が結ばれた。しかし、不幸にも共に体勢を崩す。死を覚悟し、目を瞑るふたり……。ああ、このまま真っ赤な海へ真っ逆さま。俺たちは一瞬で焼けて黒焦げになるんだ。人間が焼ける時って、どんな匂いがするんだろうな。

 その瞬間、彼らよりふた回りも大きい巨体が、その大きな腕で窮地を救った。無事に橋の先に降ろされた彼らは、反射的に「げっ」とこぼす。

 体育教師の砂田は、怒りのこもった言葉を伝えた。

「横断歩道で遊ぶなと、あれほど言っただろう」

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過酷な路 結騎 了 @slinky_dog_s11

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