外伝ストーリー1 ~私達の分岐点~

この物語は

とある2人がもう少し本音を話せていたら

もう少し勇気を出していたら

あんな結末にはならなかった、

そうこれは叶うはずのない、もう一つの物語


2人の分岐点が今動く——————


ヤーヴァイ村


これは私が13歳の頃


私は今、彼の家にいる

彼は傷だらけになりながら、母に治療してもらっている、話を聞くとどうやら私との婚約関係に文句のある人達が彼に対して酷いいじめをしていたそうだ。


私はその姿を見て、私は...........怒りを覚えた

何故か?それは簡単だ


どうしてそんな状態になってもヘラヘラしているのか、普通ここまでされたら笑う事なんて出来ないと思う


なんでそこまで打ちのめされても直向きに頑張れるのか、ここまで挫折したら普通はやらないと思う


.........なんで魔法に興味があるのか?、確かに剣術がダメならっと考えてしまうのは納得するが........


それでも私は彼が好きだ、だけど今の彼では私の隣には立てない.........いやそれは私が勝手に決め込んだ事そんな必要はないけど、だけど村の人達がそれを許してくれない


村の人達に認めてもらう為には、私が心を鬼にして............彼を強くすれば...........


............................................................。


いや、そうしたところで私は子供だいくら剣術が上手くても教えるのは無理だ、それに愛する人にそんな事は出来ない。


だけど.....今のままでは駄目だ


アイリ「.......ねぇルクス」


ルクス「?」


このままでは、良くないことが起こる予感がする........


アイリ「手当てが終わったら一緒に来て欲しいの」


ルクス「?.......うん、わかった」


今言わないときっと後悔する、

だから私は彼と2人きりになれる所に向かった


——————————————————————

~村の丘~


夕方、太陽の日差しが山と重なり始め、光が赤く周りを照らす


風が心地よく草木が揺れている


ルクス「で?なんのようなんだ?」


そう言って彼は私を見つめてくる


まだ幼さは残っているが、初めて会った時と比べて大分カッコよくなった。


アイリ「........ねぇ、ルクスはさ」


ルクス「うん」


私は勇気を持って言った


アイリ「.................どうして魔法を覚えようとしているの?」


その瞬間"ガコン"と大きな音が私達の耳に入る


ルクス「?」


アイリ「?」


何処かで大きな音が聞こえた、まるで違う道になったかのようなそんな感じだ。


ルクス「........まぁいいか?それでなんだっけ?」


先程の音で忘れてしまったのかと彼はもう一度聞いてくる


アイリ「ああ、うん、どうして魔法を覚えようとしているのかなって」


それを言うと血相を変えて話しかけてくる


ルクス「なんで知ってるの!?」


彼はそう言って私の肩に手を置き聞いてくる、顔が近くて息が此方にかかる


アイリ「ちょ.......ち........近い!」


ルクス「あ.....ああ、ごめん」


そう言って彼は顔を少し赤くして離れる

その姿が愛おしくて、それだけで心が満たされる、けど今はそれどころではない


ルクス「んで?なんで知っているの?」


そう言ってあらためて聞いてくる、私は深呼吸して質問に答える


アイリ「私は貴方の婚約者だけど幼馴染みでもあるの、だから貴方が不審な行動をしていたらすぐにわかるわ」


そう言って私は微笑む、まだ彼に対して怒りはあるけど、取り敢えず堪える


その姿を見て彼はあはははと笑いながら答える、その姿に無性に腹が立つ


ルクス「俺ってさ、みんなに認められたくて父さんやおじさん達に稽古してもらってるけど、中々強くならないじゃん?だからそれを魔法で補えたらなって」


だからこっそりと練習していたと彼は言う


アイリ(...........でも、まだ剣に未練はあるんだ)


私が見た姿だと、彼はもうに剣が嫌いになっている風に見えた、それでも続けているのは認めてもらいたい、ただそれだけだろう。


アイリ「そうだったんだ、知らなかったよ」


これは本心だ、確かにいつも頑張っているのは知っているが、ここまでなのは驚いた。


ルクス「うん、いつもお父さん達に助けてもらってばっかだからさ、俺は無能だからさ」


そう言って自傷気味に笑う、私はその笑い方が嫌いだ


先程から穏便に済ませようと我慢していたが、今の笑いで堪忍袋の尾が切れた


アイリ「何でヘラヘラ笑っていられるのよ!」


ルクス「え?」


私がいきなり怒鳴った事で彼は驚く


ルクス「アイリ?」


彼は心配そうに此方を見つめる、それが更にイラつかさせた


アイリ「いつもそう!虐められているのにヘラヘラヘラヘラして!なんでそんな事ができるの!?悔しくないの!?」


そう言うと、彼は


ルクス「悔しいに決まってるだろ!」


アイリ「!?」


私が彼に向かって怒鳴っていると、彼も怒りだし、叫ぶ


ルクス「俺だって...........俺だって!父さん達のように強い人になりたいよ!だけど!どんなに努力してもお前には劣るし!歳下にも勝てねぇ!そんな状態だから!笑っていないと!やっていけねぇんだよ!!!」


彼は自身の腕の無さに絶望し、少しでもその心に取り込まれないようにしていたのだ


ルクス「お前は良いよな!強くてよぉ!ほんと羨ましいよ!俺と違ってなぁ!」


その言葉にカチンと来た私は


アイリ「はあ!?私がなんの努力もせずにここまで来たと思ってるの!?私だって必死に努力してるのよ!」


確かに私には才能があるかも知れない、けど、それだけでここまで強くなったわけではない


ルクス「だからなんだよ!こっちはどれだけやっても全然変わらない嫌味か!?」


いつもなら言わないような事を彼は言う、それにキレて私は


アイリ「なんでそうなるのよ!私がどれだけ心配していると思ってるのよ!」  


ルクス「大きなお世話なんだよ!それが!」


どんどん関係ない様な話になってくるが、話は止まらない


アイリ「何よ!好きな人の心配しちゃいけないの!」


ルクス「..............は?」


言ってしまった、けど関係ない


アイリ「だから好き!大好きなの!だから私はずっとそばにいるのよ!それぐらいわかるでしょ!」


ルクス「知らねぇよ!初めて知ったわ!」


私の想いは伝わっていると思っていたが、どうやらそうではなかったようだ


アイリ「だったら今知りなさい!私は貴方が好き!わかった!」


ルクス「わかったよ!!」


そうやって私達は思っている事を全部吐き出した、何分、何時間と


色んなことを、思っていることを全て吐き出した


それのお陰か心がスッとなった、それは多分彼もそうだろう、お互いに言い合い疲れ切って倒れた私達はお互いの顔を見て


久しぶりに思いっきり笑った


ルクス「アイリ....」


アイリ「ん?」


彼は私の顔を見て


ルクス「ありがとう」


アイリ「.........どういたしまして」


その言葉を気に私達はまた笑う


——————————————————————

それから私達は変わった


まずルクスは魔法を学びたいと家族に言った最初は私も反対されると思っていたが


「己の信じた道を進め」


との事であっさりと認めてもらった

ただし、剣術もこれまでと同じようにやりながらとのことだ


私も彼と一緒に剣術を教えながら生活した、

それに反対する奴らは後を絶たなかったが、私が彼を守りながら話し合って決めた、大きくなったら村を出ようと


2人で旅に出て色んな所を見て周ろうと.....


——————————————————————

3年後



そして月日は流れ....................


アイリ「ルクスー!」ブンブン


私達は16歳になった、私は走りながら彼の事を呼ぶ


ルクス「アイリ!」


アイリ「ごめん待った?」


彼も苦笑いしながら、呼んでくれた


ルクス「隣の家なんだから待つ訳ないだろ?」


そう言って私の家を指さす


アイリ「それもそっか!じゃあ行こう!」


ルクス「ああ!」


そう言って私達は手を繋ぎながら村の教会へと歩いて行った


今日は年に1度の貴重な日で、16歳になった若者達が村の教会に集まって神託を受ける


アイリ「うわ、もういるよ」


ルクス「ほんとだ、ほぼ全員いるんじゃないか?」


私達が来た頃には既に人が多く私達は最後の方になった


アイリ「ああ、もっと早く来れば良かったぁ」


そう言って私が落ち込んでいると


ルクス「お前が"明日が楽しみー"とか言って夜遅くまで起きてたのが悪いんだろ?」


図星をつかれてウグッと言ってしまう、元々もっと早く行く予定だったが私の所為でこうなったのだ。


それを改めて思い知らされた私は深いため息を溢しながら順番を待った


そしてしばらく、彼と雑談しながら待っていると


神父「次の者前へ」


そう言われついに私の番になった


アイリ「よし!行ってくる!」


ルクス「ああ」


そう言って気合を入れた私は前に行き、神の神託を待った、すると


神父「おお!なんと珍しい"剣姫"とは」


アイリ「え?」


——————————————————————

話が長引いたので、次回に続きます。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る