成瀬くんと観覧車

「おまえ最近なんか変な客いたの気づかなか

 った?」

「えっ、変な客?」

「いっつも同じ時間にコーヒー買う客」

「あー、いるいる。あんな時間にコーヒー買

 ってたら寝れなくなるよねー」

「やっぱバカ…。」

「なんでよー。失礼だなー」

「おまえさ、その客につけられてるぞ」

「えっ…」

 

 全然気がつかなかった…

 どうしよう。

「いつから?」

「わかんねーけど最近じゃね?」

「ど、どうしよー…」

「とりあえず毎日一緒に帰ってやるよ。その

 うち諦めんだろ」

「あ、ありがとう。いつもいつも。」

「ま、こればっかりはしょうがねーな」

「助かります」

 ぺこりとお辞儀をした。

 

 毎日コーヒーを買っていくお客さんは、私

 がバイトから上がる少し前に来店する。 

 しかもいつも私が接客していた。

 気をつけて見ているとちょうど私が接客す

 るタイミングで並ぶ。

 …こわっ。

 

 全然気がつかなかったよ…

 成瀬くんいなかったら、未だに気づかない

 ままだったろうな。

 

 バイト終わり、成瀬くんと一緒に帰る。

 それはうれしい。

 けど…つけられるのは怖いな…

 

 帰り道成瀬くんが

「手」

 って私に言った。

 もう学習したから大丈夫。

「うんっ、ありがとう」

 成瀬くんと手を繋いだ。

 

 う、うれしいけど成瀬くんにしてみたらた

 だのフリなんだよな…。

 こんな私のために…。

 ほんとにごめんなさいと心の中で成瀬くん

 に謝った。

 

 ある程度まで行くとストーカーらしき人は、

 いなくなっていた。

 ホッ

 

 それからバイトの日は、いつも成瀬くんが

 送ってくれた。

 毎日送ってくれていたおかげでその人は、

 もうお店に来なくなった。

 

「成瀬くん、毎日ありがとう。でも、もう大

 丈夫みたい。」

「あーでもやっぱおまえさー、うといし心配

 だからまだ送る」

「えっ、悪いよ」

「ならさ、お礼にまた遊園地行こうよ」

「へ……?遊園地⁇」

「うん。行こうよ」

「行きたい‼︎」

 

 そして二人で遊園地。

 とってもいい天気だ。

 あー、なんかずっとこわい思いしてたから

 ストレス発散になるなー。

 

 最後に観覧車に乗った。

 

「あー、綺麗な景色だね〜」

 のんびり外を眺めてたら

 チュッ

 

 えええぇエ⁉︎

「いっ、今さ⁇今 キ…キスした…⁈」

「ん?」

「あれっ⁈気のせいかな⁇」

「おまえほんっとぬるい」

「へ…⁇ぬるい?」

「うん。そういうところが危なっかしいんだ

 よな」

「あー…」


 ん⁉︎

 

 チュッ

 

「あ〜‼︎やっぱりさっきもしたよねー‼︎」

「おまえ、隙ありすぎなんだよ」

 チュ、チュ、チュ〜

 えっ、えっ…えええ〜⁉︎

 

「あのっ…」

「付き合おう。オレたち。おまえ危なっかし

 いからずっと守ってやるよ」

「う、うん。うれしい!ありがとう」

 

 私達は、ゆっくり動く観覧車の中で何度も

 キスをして抱き合いました。

 

 そして、晴れて恋人同士になりました!

 

 帰り道手を繋いだ。

 今までは、男避けの対策の為だけだった。

 でも、今は恋人として繋いでる。

 

 は、恥ずかしいな。

 

「成瀬くんって意外と優しいよね」

「は?何だよそれ」

「だっていっつも口悪いけどなんだかんだで

 優しいじゃん?」

「おまえキモっ、しかもいっつも脳内お花畑

 みたいだし」

「ひっどー‼︎それが彼女に対する言葉なわけ

 ?」

「彼女ねー。」

「な、なにさ」

「いや、別にー」

 

 こんな会話をしながらもしっかり繋がれた

 手と手。

 

 やっと成瀬くんとお付き合いできたんだか

 らこの手を離さないようにしなきゃ。

 

「ねぇ、成瀬くん」

 チュ〜の催促をしてみた。

 するとムギュ〜ってタコの口にされた。

「妖怪タコ娘の出来上がり」

「…なーっ」

 

 せっかく恋人になれたのに塩対応ー‼︎

 

 成瀬くんの取り扱い説明書を独自に作った。

 

 その一

 極力人前でのイチャイチャを好まない‼︎

 

 その二

 ツンデレ

 

 その三

 本当は優しい♡

 

 これからどんどんいろんな成瀬くんを知っ

 ていこっと。

 

 

 続く。

 

 

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