逆光の樹影、ガラスのリノウ

a letter

31. July

 道すがら、鳥の巣を見つけた。崩れ、傾いた建物の隙間に潜むようにして、作られていた。

 中には生まれたばかりの雛が三羽。しきりに鳴きながら、親鳥に餌をせがんでいた。

 彼らは、文明が滅ぶ前から命を繋いできた種だろうか。それとも、新しい環境に適合するために生まれ変わった種だろうか。

 いずれにしても、その生態を観察していると、彼らは彼らなりに工夫して、現在の世界を生きているように見える。


 数日前、ある施設の前を通った。

 温室を模して造られたその場所は、過去の時代の環境を再現したものであるという。

 こうして必死に生きる命を見ると、疑問がよぎる。

 果たして、これからを生きる命は、管理が必要なのだろうか、と。

 案外みな好きなように生きていけるものなのではないのか、と。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る