第18話

「今日は残念だったね、フローラ。面白くなったところでトレヴァーが来てしまうなんて」

 やれやれ、といった様子で、アルフレッドは両手を上げて背伸びをした。

「アルフレッド様、トレヴァー様が来なければ森は火事になっていたかもしれないんですよ?」

 フォローらはアルフレッドをたしなめるように言った。

「あれ? フローラもトレヴァーを支持するの? そっか」

 アルフレッドはしょんぼりして、ため息をついた。


「でも、次はきっとうまくいくから大丈夫!」

 アルフレッドは先ほどの出来事を反省していたが、反省の方向性はフローラの予想とは異なっていた。

「銃に魔力量の調整機能をつければ、あんなことはもう起きないはずだ」

 ふふふと楽しそうに笑うアルフレッドを見て、フローラはあきれた。

「またトレヴァー様に叱られますよ?」

「失敗は成功の母というだろう、フローラ……」

 フローラに笑顔で話しかけていたアルフレッドの表情が急に曇った。

「……楽しそうなお話をされていらっしゃいますね、アルフレッド様」


 少し泥が付いた服装で、トレヴァーが裏口から入ってきていた。

「……やあ。ご機嫌……ではなさそうだね。トレヴァー」

「アルフレッド様。しばらく実験はやめていただけませんか?」

 言葉自体は質問文であったが、有無を言わせない圧を感じさせる口調でトレヴァーはアルフレッドに言った。

「……わかった、火炎銃の実験はしばらく控える」

 アルフレッドもトレヴァーを本気で怒らせたくはないらしい。

 

 少し、うなだれたアルフレッドにフローラが言った。

「お休みの前にココアでも召し上がりますか?」

「フローラ、君まで僕を子ども扱いするのかい?」

「いいえ、そういうわけでは……」

 口をとがらせたアルフレッドはトレヴァーに言った。

「甘いココアを二つ、用意してくれ」


「かしこまりました。……フローラ、手伝ってくれますか?」

「はい」

 トレヴァーとフローラが去ると、アルフレッドは火炎銃を取り出して、自室に置きに行った。ついでに部屋着に着替えると、ドアがノックされた。

「アルフレッド様、ココアが入りました」

 フローラの声だ。

「ありがとう。食堂でいただこう」

「それでは用意しておきます」


 フローラは二人分のココアを食堂に運び、アルフレッドが来るのを待った。

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