残念なイケメンと不意打ちのキス

 結局、航平くんはメニューを決められないようだ。どうしよう…『紡が決めてっ!』って言っていたし、隣の紡くんに任せてもいいのかな…?


 でもなぁ、良ければ僕のオススメも食べて欲しい…よしっ!決められないなら決めてしまえっ!!


「ねぇ、航平くん?なかなか決められないのであれば、僕…紡のオススメ定食でもいいかな?」


 ニコッと微笑みながら航平くんに声をかけると、航平くんもめっちゃ可愛く、そして目をキラキラさせながら「わぁ!なら、僕それにするぅ!!!」と返答してくれたんだ。


 ドキッとしたりはしないけど、なんだか児童養護施設にいた時のことを僕は思い出した。


 みんな、僕の事を《むぐ》と呼んで、慕ってくれていた子供たちも、今となっては航平くんと同い年ぐらいになってる子もいるはずだ…

 なんだか、弟が出来たらこんな感じなのかな?ほ、ほら、僕、弟だし…?凌空もこんな感覚なのかな?


「じゃあ、作るから待っててね?」


 そのまま僕は、オススメ定食と紡くんが注文した【唐揚げ定食】の準備に取り掛かったんだ。


 -調理中

 僕たちは4人で色々な話をしながら、楽しい時間を過ごしたんだ。


 航平くんと紡くんは、同じ大学に通っていて、演劇部で活躍しているんだって!カッコイイな〜!

 僕、絶対にセリフとか覚えられないし、緊張して声なんか出ないと思うもんな〜!


 僕たちのお店は、SNSで見つけてくれて、1度でいいから行ってみたいっ!と航平くんがずっと懇願してくれていたんだって!…時代だなぁ!これぞ正しく、口コミってやつだよね?美味しいとSNSに上げてくれるみんなにほんとに感謝だなぁ…


 あとは、紡くん?なんで少し、髪の毛が跳ねてるのかな?あれ…?そこ、気になったのは僕だけ…??


 そんな会話の中で、紡くんがある質問を僕たちに投げかけてきたんだ。


「おふたり共、とても仲良さそうですけれど、どういう関係なんですか??」


 この質問に一瞬、ドキッとしたのは他にもない。


 だって、付き合ってるんだよ?なんて素直に言えないから…でも、胸を張って言えることが今ではあるんだ。


「僕たち、兄弟なんだ!」


「えええ?!なになに、りっきゅんとむぐは、兄弟だったんだぁ!!☆」


 ええ?!僕、むぐって呼ばれてる事を航平くんに話していないのに…しかも、りっきゅんって…こ、この子…何者?!


「おい、航平、馴れ馴れしいだろ?」


「えぇ〜?ほら、紡くんとも言いづらいしぃ〜?もうこれだけ色んなことをお喋り出来たんだもん、僕たちもう友達だよねっ?☆」


「俺は気にしない、多分、紡も大丈夫だよな?」


 なんやかんやで、航平くんのペースに気持ちがいいくらい、持っていかれている気がしたけれど、それはそれで場も和むし、楽しかったからありがたかったよ?


 でも、追い打ちをかけるように紡くんが

「でもさ、なんで2人ともしてるんですかっ…?」


 流石にこの問いには、もう太刀打ちが出来ない…やばい、やばいよ…?今まで誰にも突っ込まれて来なかったから、普通に指輪をはめていたけれど、紡くんと同じように思ってる人もいたのかな…?


 ちょっと焦る僕に航平くんが、紡くんを叱責したんだ…。


「ほんっと紡、馬鹿なんじゃないの?!そういう事を単刀直入に言っちゃうところが、ほんとになんだよっ?!」


「はぁ?!な、なんで俺が航平に怒られなきゃいけないんだよっ!」


「分かってない紡が悪いのっ!分かる?察しろって言ってんの!!僕たちもそんな質問されたら、紡ならドキッとしてどうしよう…ってなるでしょっ?!」


「…あ、ああ…そ、そう言われてみれば…」


 んっ??これはこれで、どういう意味なのかな…?僕たちもそんな質問されたら…って…え、ま、まさかっ?!


「なら、話は早いじゃないか」


 航平くんと紡くんの会話を聞いていた凌空は、徐にキッチンの中に入り、料理をする僕の顎をとり…

 そのまま2人の前でキスをかましてきたんだ…!


「…お前ら2人も、こういう事だろ…?」


 唇を離した凌空は、2人に流し目でかっこよく決め込んでいた…

 ぼ、僕もそうだと察したけどさ…!さ、流石に不意打ちはダメでしょ!そ、そして、恥ずかしいじゃんか…っ!


 り、凌空の…バカっ!!

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