コント:機内食

超時空伝説研究所

コント:機内食

CA: 「何になさいますか?」

乗客: 「何?」

CA: 「あの、お食事は和食と洋食のどちらになさいますか?」

乗客: 「あ、食事? 「フィッシュ・オア・ミート?」ってやつ?」

CA: 「まあ、そういうことですが、今日は麦飯かふかし芋です」

乗客: 「ずいぶん質素だな。戦時中の食料難かよ」

CA: 「本日は「食べ物に感謝する日」というイベントで、質素な食事をとることで普段の贅沢な暮らしを反省しようという設定になっております」

乗客: 「ああ、そう。何も今日やらなくても良いのになあ」

CA: 「考えようによってはラッキーかもしれませんよ。いい冥土の土産になるかも」

乗客: 「縁起悪いな。そんな土産いらねえよ」

CA: 「当機に万一のことがあった場合は、これが最後のお食事ということになります」

乗客: 「重ね重ね不吉だな。もういいや。ふかし芋ちょうだい」

CA: 「かしこまりました。ふかし芋の冷製でございます」

乗客: 「冷製ってどういうことだよ。ただ、冷めてるだけじゃねえか」

CA: 「本日は地球温暖化防止の日も兼ねておりまして、光熱費もケチってみました」

乗客: 「ケチってるっていっちゃったよ。客のことはどうでもいいのかよ?」

CA: 「当航空会社も経営が厳しくて、人のことは構っていられないもんですから」

乗客: 「すがすがしいほど正直だな。もう乗らねえぞ、おまえんとこの飛行機。もういいから、早くふかし芋くれや。腹減ったわ」

CA: 「(ふかし芋を渡す体で)こちらになります。つけ合わせはどういたしますか?」

乗客: 「芋につけ合わせって、どうなんだ? 何があるの?」

CA: 「砂糖か塩になります」

乗客: 「調味料じゃねえか。つけ合わせっていわねえよ」

CA: 「(涙ぐみながら)精一杯のサービスなんです」

乗客: 「ああ、そう。じゃあ、せっかくだから塩をもらうわ」

CA: 「(発音良く)Saltですね」

乗客: 「さっきは塩っていってたじゃねえかよ。何で急にいい発音なんだよ」

CA: 「塩にはこだわっておりまして、特別な塩を使っております」

乗客: 「へえ、どんな塩?」

CA: 「普通よりしょっぱめの塩を使用しております」

乗客: 「意味あんのか、そのこだわり?」

CA: 「(涙ぐみながら)精一杯のサービスなんです」

乗客: 「分かったから、泣かなくて良いよ。とんでもない誕生日になっちまったなあ……」

CA: 「お客様、本日がお誕生日ですか?」

乗客: 「ああ、そうだけど」

CA: 「おめでとうございます! お誕生日のお客様には、特別にデザートをお出ししております」

乗客: 「無理すんなよ。どんなデザート?」

CA: 「こちら、ふかし芋のシャーベットでございます」

乗客: 「ただ凍らせただけじゃねえか?! 味なんかねえだろう!」

CA: 「つけ合わせに砂糖か塩をお出しできますが……?」

乗客: 「もういいや、いい加減にしろ!」


(完)

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