第57話 女神様の姉
違う夜空が目の前に現れた。イロハ様の空間に来たみたい。
視線を移動させるとイロハ様が立っていた。理想とも言える顔立ちで長い髪が似合っている。いつ見てもダイヤモンドのような輝きを放っていた。
無言で抱きついてきた。いつもより力が強かった。
「心配でした。混乱を招くため地上へ行きませんでした。アイが無事で安心しました」
「七色オパールの魔法を使ってごめんね。でも他に方法を思いつかなかった」
「愛しいアイの辛い姿は見たくありません。今はゆっくり休む必要があります」
叱られると思った。でも優しく迎えてくれた。イロハ様に心配をかけたくない。
「今後は無茶しない。イロハお姉様とプレシャスに迷惑をかけない」
イロハ様が私の頭を撫でた。頬ずりをされた後にイロハ様から開放された。
「宝石魔図鑑も改善されたようです。ペンダントの加護も増えました。これで好きな宝石で魔法を作れるでしょう」
「宝石魔法でイロハお姉様の世界を楽しめる。本物のアイ様から頂いたペンダントの加護も嬉しい。忘れるところだった。イロハお姉様に伝えたい内容があったのよ」
「上位魔物ですか。今は消滅していません」
「本物のアイ様についてよ。イロハお姉様は、本物のアイ様が反抗期になったと話していたよね。でも違った。イロハお姉様が、他の女神様と仲良かったから嫉妬したみたい」
「本当ですか」
目の前に顔を近づけてきた。綺麗な瞳に吸い込まれそう。
期待の眼差しで私を見ている。アイ様の言葉をそのまま伝えたい。
「イロハお姉様を愛しい人と呼んでいたよ」
「アイはワタシと妹を結ぶ絆です。晴れやかな気持ちになりました。アイには借りができました。可能な限り望みを叶えましょう」
家を用意してもらえた。頼りになるプレシャスもいる。アイ様からは宝石魔図鑑をもらった。生活する上での望みはなかった。でも宝石関連なら叶えたい夢があった。
「庭に宝石博物館を建てたい。イロハお姉様の世界にある宝石を集めて堪能したい。無料で開放して宝石の素晴らしさを広めたい」
「素晴らしい考えです。ワタシへの望みは何ですか」
「宝石は高価だから盗まれないか心配なのよ。見た目も素敵で防犯機能が整った宝石博物館を建ててもらいたい。お願いできる?」
訴えるように視線を向けた。優しいイロハ様の視線が帰ってきた。
「造作もありません。庭を広げて宝石博物館を建てておきます。アイに殺意ある人間や魔物は近づけません。宝石を盗むことも不可能です。楽しみにしてください」
イロハ様にお礼を言って、宝石博物館の詳細を説明した。外装や内装の雰囲気から部屋の数などを希望した。一通り希望を話し終えた。
もう一つ叶えたいことがあった。
「宝石博物館の完成が楽しみ。もう一つだけお願いしても平気?」
「アイの頼み事で可能なものは断りません」
「これ以上はマユメメイを誤魔化したくない。イロハお姉様からマユメメイに、私のことを話してほしい」
「全ては話せませんが、ワタシの妹であると伝えることは可能です。アイが望むなら地上へも行きましょう」
「宝石魔法を使って呼び出す形でも平気? もちろん無闇に呼び出さない。困ったときにイロハお姉様を頼りたい。夢の中以外で会う手段が欲しかった」
「アイがワタシを頼ってくれる。愛しいワタシのアイ。望みどおりにしましょう」
また抱きしめられた。温かい気持ちが心の中を満たした。
イロハ様と本物のアイ様にあった誤解が少しは解けたみたい。少しでも女神様の役に立てて嬉しかった。
「イロハお姉様の心遣いが嬉しい。戻ったらプレシャスと一緒に魔法を考えるね」
「あの子もアイの帰りを待っているでしょう。これからもワタシの世界を楽しんでください。アイの喜ぶ姿が見られればワタシも嬉しいです」
イロハ様の声が子守歌に聞こえてきた。心地よい睡魔が襲ってきた。
心と体をイロハ様に委ねた。
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