第11石 アンバー
第51話 上位魔物の接近
今日も朝からハンターギルドに向かった。上位魔物の影響で、しばらくの間は毎日来るように言われた。街中を歩くと慌ただしさを感じた。
ハンターギルドの扉を開けた。リリスールさんを見かけた。ピミテテさんと話し込んでいる。真剣な表情だった。受付に向かった。
リリスールさんが私に気づいたみたい。手を振ってくれた。
「ごめんね、アイちゃん。今日のパーティーは中止だよ」
「険しい表情だったけれど、何かあったの?」
「上位魔物さ。このまま進むとリガーネッタも無事では済まない。でも今は中位魔物が驚異だよ。上位魔物の影響で、多くの中位魔物がリガーネッタに近づいて来たのさ」
「住民には避難準備の指示がでています」
「街の人がいなくなるの?」
上位魔物が来れば、莫大な被害になると簡単に想像できた。
「まだ避難指示はでていません。でも上位魔物が来れば街を捨てる覚悟は必要です。中位魔物も危険な存在です。中級ハンター以上で中級魔物の討伐隊を作ります。アイさんは待機になります」
「上位魔物は徒歩で一日の距離に近づいたようだよ。上位魔物の歩みは遅いらしいさ。直線に来ても三日後と聞いているよ」
リリスールさんが補足してくれた。上位魔物は意外と近づいていた。
ハンターを限定するほどに中位魔物が多いはず。パーティーや混戦に慣れていない私だと足手まといになる。
「家か街中で待機している。上位魔物も街に近づいたのよね。マユメメイが心配」
「大聖女様かい。護衛も多いから大丈夫さ。大聖女様で思い出した。アイちゃんに頼み事があるよ。神殿に行ってくれないかい。怪我人が増える可能性もある。アイちゃんの回復があれば助かるはずさ」
「私も力になりたい。今日は神殿に行ってくる」
イロハ様の世界を楽しむ。それには荒れた土地や怪我人は見たくない。怪我人を見捨てることもできない。
二人に見送られて神殿へ向かった。
神殿へ行く途中の街中では、ハンターや警備隊の姿が多く見られた。
「上位魔物の気配は感じる?」
「まだわたしには認識できません。上位魔物が来てもアイ様はわたしが守ります」
「プレシャスがいれば安心ね。でも早く上位魔物には消滅してほしい」
話しているうちに神殿へ到着した。
「神殿も人が多そう。ターランキンさんを探すね」
近くにいた神官へ訪ねてみた。神殿でマユメメイに踊りを見せた影響かもしれない。ていねいな対応をしてもらえた。ターランキンさんを呼んできてくれた。
「先日の踊りも見事と聞きました。ワタシに何かご用でしょうか」
「街周辺の魔物討伐は中級ハンター以上になったのよ。私は見習いハンターだけれど宝石魔法を使えば回復もできる。何か手伝いないかと思って来てみた」
「異国の魔法は回復もできるのですか」
「攻撃魔法や防御魔法もあるよ」
ターランキンさんは驚いた表情をしていた。普通は一般魔法と神聖魔法の両方が使える人は存在しない。特殊に映ってもしかたなかった。
「怪我人はまだ少ないですが、心配で神殿に来ている住人が多くなりました。見習い神官だけでは対応に限度があります。手伝って頂けますか」
「もちろん平気よ」
ターランキンさんに連れられて移動した。案内された場所は大きな部屋だった。初めて神殿へ来たときに案内された。イロハ様に日頃の感謝を述べる場所で、前方にイロハ様が祭られている。
部屋の中には子供や老人が多かった。イロハ様にお祈りしている人もいた。
ターランキンさんが一人の女性に近づいた。神殿の制服を着ていた。
「こちらの神官がまとめ役です。彼女の手助けをしてください」
ターランキンさんが神官と私を交互に紹介してくれた。私の手伝いは住人に声をかけて困りごとを聞くことだった。
「魔物の脅威で不安な人が多いです。話し相手になってもらえるだけでも助かります」
「回って聞いてみる。回復もできるから遠慮なく声をかけて」
二人と別れて歩き出した。
周囲を見渡した。椅子に座って近くの人と会話している人が多かった。不安げな声だった。子供たちは遊びたいのか、じっとしていなかった。
「狭い場所もあるからプレシャスを抱きかかえるね」
プレシャスの両手を掴んだ。体を丸めるようにして抱きかかえた。
「アイ様のぬくもりが伝わってきます」
「私も同じよ。プレシャスの温かさは私を癒やしてくれる。手伝いを始めるね。困っていそうな人に声をかけてみる」
年老いた夫婦に話しかけた。息子夫婦から神殿に避難するように言われたみたい。
「街周辺にも魔物はいるが避難は初めてじゃ。きっと街が破壊される」
「あなた、イロハ様や大聖女様が守ってくれますよ。お嬢さんもそう思うでしょ?」
「ハンターや警備隊がいるから安心よ。上位魔物は街へ近づく前に消えるはず」
「でも心配じゃ。中位魔物も怖いと聞く」
「中級ハンターが討伐に向かっているよ。だから安心してね」
優しく声をかけた。笑顔を見せてくれたけれど表情は引きつってみえた。不安になっているのが伝わってきた。
移動して他の人にも声をかけた。誰もが不安や心配をしていた。
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