第14話 自素石の利用価値

 家に戻って食事の準備を始めた。

 兎のお肉には香辛料を多めに使って臭みを消した。森の食材を使って、他の料理も作り始めた。プレシャスが近くに寄ってきた。


「自給自足だけでは料理に限度があるのよ。あまり期待しないでね」

「初めて見る料理で楽しみにしています。アイ様は色々な料理を作れるのですか」

「種類はあまり多くないよ。でも玉子や乳製品、野菜があれば他の料理も作れる。お金を稼いで街で買い物したい。庭で野菜作りもよいかもしれない。お金をすぐに稼ぐには自素石集めが早そうね」


「自素石を集めるには、魔物退治に慣れる必要があります。トリプルボアーを一人で倒せる実力が必要です。でもアイ様には無理をさせたくないです」

「一歩ずつ実力をつけていく。回復魔法が使えれば、少しは安心できる。そろそろ料理が完成する。料理を運ぶからテーブルで待っていて」


 料理の準備が整った。お肉の香ばしさが漂っていた。手に入る食材と香辛料には限りがあった。その中で思った以上にうまく作れた。

「今回の料理は匂いが強いです。でも悪い匂いではありません」

「お肉独特の香りね。私には食欲をそそる美味しい香りよ」


 最初にお肉から口へ入れた、イロハ様の世界に来て、初めての肉料理だった。まだ改善点はあるけれど合格点は与えられる。

「美味しいよ。プレシャスも食べて」

 プレシャスが料理を食べ出した。器用に食べていた。私も他の料理に手を出した。プレシャスと一緒だから、元の世界よりも多く料理を食べた。満腹まで食べたのは久しぶりかもしれない。


「アイ様の料理は温かみがありました。食事が楽しみになりました」

「喜んでくれて嬉しい。他の料理も作りたいから食材も増やしたい。自素石を集めて買い物もしたい。畑で野菜作りも楽しそう。自素石の利用価値を知っておきたい」

 販売価格はピミテテさんに聞くとしても、利用方法は知っておきたかった。


「簡単に説明します。自素石を武器や防具の素材に混ぜると強度が上がります。大きい自素石になるほど強度が増します」

「大きければ価値が高いのね。トリプルボアーの自素石は小粒だったけれど、無色と色つきでは何が違うの?」


「色つきは魔法への耐性効果が追加されます。黄色は土属性魔法の耐性です」

「少しは高く売れそう。他に使い道はあるの?」

「色つきのみですが、自素石自身に魔法を付加できます。一般魔法のみです。対象属性の耐性効果か威力強化を付加できます。自素石が大きければ効果も高いです」


 武器と防具強化や魔法付加は魔物退治に有効ね。魔物を倒して自素石を入手する。自素石で強化して、さらに強い魔物を倒す。ハンターのたどる道みたい。

「強い魔物を倒すには装備の強化が必要よね。今は宝石魔法で倒せるけれど、魔法が使えないときがあるかもしれない。自素石を集めて徐々に装備も揃えたい」

「アイ様はハンターを目指すのですか」


 魔物を見たくて一度は倒してみたかった。ハンターギルドに入会した理由だった。魔物は元の世界に存在していなかった。魔法を作るのも同じ理由ね。興味があるのはイロハ様の世界だった。


「まだ決めてない。ハンターと言うよりも、イロハお姉様の世界を旅して楽しみたい。それには最低限の力が必要になると思う。常識も学ばないとね。旅に出る場合はこの家はどうしよう。プレシャスも一緒についてきてくれる?」


「家はこのままの状態でも平気です。イロハ様の加護があるのでなくなりません。わたしは何処までもアイ様についていきます」

「旅はまだ先だと思うけれど、プレシャスと一緒に行けるのなら楽しみね」

 リガーネッタの街から外には出ていない。ザムリューン国の外にはどのような国があるのかまだ知らない。大陸全土を旅してみたい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る