倫敦で渦巻く悪魔の陰謀。霧と闇に紛れた真実にエクソシストの男が挑む。

 期待も込めて、序章(7話読了時点)での評価を。

 19世紀後半。知己の天使の死を目の当たりにした知る人ぞ知る米国のエクソシストが、彼女の遺言をもとに単身渡航。
 途中、そりの合わない相棒とも出逢いながら、目指すはロンドン。背後には、人々の日常の裏で冷戦状態にあった天使と悪魔の戦争が関わっていて…。

 この作品の魅力はなんといっても硬派な文体で描かれた、洋画のような世界観。
 読み進めていくうちに薄暗いアメリカの貧民用の安アパート、あるいは蒸気を上げる船、教会など、馴染みのない私にも、ホラーらしくどこか“闇”のあるそれぞれの場面が思い浮かびます。

 主人公と相棒の皮肉り合いも海外映画を見ているよう。比喩として使用される言葉・題材も海外の風が感じられ、作者様が旅でもして、直接見てきたのかなと思えるほど、どこまでも世界観に没頭できました。個人的には主人公の仕事道具について語る際に使われた「企業秘密」という言葉が現実臭く、一気に世界観に引き込まれたところですね。

 ホラーとしてはゾッとする、というよりはジワジワと蝕む系のものですね。エクソシスト、天使と悪魔という題材も、クトゥルフ神話を嗜む私にとっては馴染みやすく、本作の世界観がお気に入りなのもそのせいでしょう。

 列車の行き着く先。霧に煙るロンドンで主人公が“彼女”の残した言葉の真相を、胡散臭い相棒とどのように突き止めるのか。天使と悪魔の戦争の行方、ひいては世界の行方はどうなるのか。

 日本にはない“外”を感じながら楽しむホラー。今後に期待せざるを得ません。

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