自転車だけじゃない「ライフ」が詰まった充実のエッセイ

長年のレース歴を持つ筆者の「自転車ライフ」をベースにしたエッセイなのですが、そこで語られる色んなお話が「生きること」に通じているのがすごく面白い。
日常で忘れがちなことや、やり過ごしていること、見えずにいることなどを、自転車にまつわるエピソードを通じて読み手に気づかせてくれます。

そこには自転車という世界からさらに広がりを持って生き方の根源的なところまで繋がる何かがあり、読んだ後にうむ、と考えさせる余韻があるのです。

とはいっても難しい内容ではありません。なにせ語り手の風羽さんの「男言葉」が軽やかで楽しく、自転車ひとすじの愛に溢れているのが読んでいて気持ちいい。そしてこの語り口調のなかにご自身の照れが見え隠れするのがちょっと可愛らしい(失礼!)自転車に対するまっすぐな情熱へのリスペクトとともに親近感を覚えます。

説明がとても分かりやすいので、自転車レースを知っている必要はありません。読んでいるうちにいつの間にか風羽さんの感受性や優しさ、熱い気持ちに乗せられていることでしょう。
自転車だけじゃない「ライフ」がいっぱい詰まっている素敵なエッセイ。
ぜひとも多くの人に触れてもらいたい作品です。