二年ぶりに

 今週末「車坂峠ヒルクライム」っていう大会に出場するんだ。

 この二年間コロナ禍の中、俺がそれまで毎年出場していたヒルクライム大会は軒並み中止か出場制限に締め出され、全く自転車レースに出場してなかったんだ。

 車坂峠は乗鞍とか富士山みたいに大きな大会じゃないけど、俺が住んでる長野県の大会だからはるばる出掛けなくていいし、気楽に参加出来る感じがいい。この大会に出るのは今回がお初。

 大会の事はレースが終わってから書こうと思ってたんだけど、せっかく出場するんだから、一つの大会として大切にしたいし、ちゃんと気持ちを整理しておこうと思って、大会前に書く事にしたんだ。

 こうして書いとけば、少し気に掛けてくれて、結果はどうだったかな? って興味持ってくれる人も中にはいるかもしれねぇしな。


 何か頑張りてぇけど頑張れないような、レーススイッチが上手く入らないような四月に、このエッセイを書き始めたわけだけど、今の所は書く事が一つのモチベーションになってるから、書き始めて良かったんじゃないかなって思ってる。


 車坂峠ヒルクライムの位置付けっていうのかな? オレが狙う所をちょっと書いておこうと思う。


 ⚫︎まずは楽しむ事!

 自転車レースをこの二年間走ってないんだぜ。形は変わっても、もう三十年以上もの間、一年のうちに何レースも走ってきた中で空白の二年間だったんだ。コロナの前の二年間位もちょっと低調だったし、それに輪をかけるような二年間だったから、どちらかと言えばそのままフェードアウトするのが自然の流れだったのかもしれない。

 走る事もトレーニングも好きだから(好き過ぎて)、ずっとやってたけどな。

 この二年間も、探せば出場できる大会も色々あったけど、これは出たいって思う大会も特に無かったしさ。

 今回の大会に仲間や知り合いが出るか分かんねーけど、ヒルクライム好きが集まってみんなで頑張って上るってだけで、テンションは上がるぜ。

 一緒に走る事で、貰えるエネルギーってのがスゲー大きいんだ。競り合う場面でなら尚更だけど、力の差が大きくて実際には見えない位置で走ってても、「あいつの頑張りには負けたくねぇ」みたいな気持ちが沸いてきて頑張れちゃったり。


 速い人も遅い人も一人一人が自分自身と戦いながらみんな上ってるだろ? エネルギーが波みたいになって流れている感じで、流れるプールっていうかさ。レースは一人でやるトレーニングとは違って、そういう波の中を走れるような感覚が好きだな。流れるプールだから速く泳げるって感じがしてさ。


 今は自分の中で好調に走れてるって感じじゃないけど、レースのワクワク感はもしかしたらミラクルを引き起こすかもしれねぇし。


 練習以上の事は出せないとか、ミラクルは起こらないとか言う人もいるけれど、俺はレースってある意味特別だと思ってるんだ。


 ワクワクする気持ちとか喜びとかってスゲーぜ。

 例えば、到底敵わないと思っていた選手に付いていけてたりしたら、テンションめちゃくちゃ上がって、自分でも信じられないような力が発揮出来たりとか、あるあるだぜ。

 脳って単純っていうか、調子に乗るととことん調子に乗ってくれるような所があるから、面白え。


 俺はさ。ここ数年はそんな脳と身体をうま〜く繋げてやる事をすごく意識してるんだ。

 これは七年前に出会って身体を診て頂いているセンセにいつも言われてる事でもあるんだ。


 実は今日もセンセの所に行って身体を整えて頂きながら、そんな話をしてきた。

 身体が変わっている時。まあ、この言葉は好きじゃねぇけど老化って言えば分かりやすいかな。その時どう取り組んでいくのがいいのか。

 例えば、過去の自分の記録とか走りとかと今の自分を比べて、同じように出来ない事を嘆く事はナンセンスだって。それは脳が悲しみ、辛いだけで、ワクワクしないから、落ちるだけでしょって。

 そんな物は一度取っ払って、新しい練習コースとか違う事をやって、違う角度からワクワクさせてやる事も大切だって。

 それは、自分が追い求めている物を諦めるという事とは違うんだ。

 人間の潜在能力なんて底知れないものが眠っているんだから、一つの角度に捉われないで、ワクワクを求めていく事で開花出来るものがまだまだたーくさんあるよって。

 言葉は違うけど、そんな感じの事をいつも言われているんだ。


 ずーっと競技をやってきて、実際はどうしても過去と比べてしまう事は多くて、それも必要な事だと思う。だけど、そこに囚われないようにしようって思ってる。

 諦めないけど囚われない。

 ワクワクと脳に喜びを!


 何か話が逸れてしまいそうだから元へ。


 とにかく、今は二年越しにレースが出来るワクワク感を持ててるって事。ま、ミラクルが起こる位やるべき事をやってないから、ミラクルは起こらないだろうけど、そのきざしくらい何か見えたらいいな。


 ⚫︎ゴールして何を思うか

 一番素直な自分の気持ち。俺はレースでゴールした時にそれが出るってずっと感じてきた。

 それって不思議なんだ。ゴールしたらこう思うだろうなって予め考えていたものと違う事が多いんだ。

 だから、今度のレースでゴールした時にどんな感情が湧いてくるのか楽しみなんだ。何かのスイッチを入れられるといいんだけどな。

 一つ決めている事は、いい走りが出来ても出来なくても、笑顔でゴールする事! 最悪は作り笑いでも仕方ない。走れる感謝の気持ちをしっかりと持ってゴールする事!

 そして、次に繋げるんだ。


 ⚫︎今出来るベストを尽くす!

 出場選手が分からないから、競るレースになるのか、自分との戦いになるのか分からないけれど、優先順位は勝負、その次に記録。

 競技時間は五十分〜六十分。

 景色を見ながら楽しんで走るというのはまだしばらく出来そうにない。

 幸い(?)初出場のレースだから過去の自分のタイムと比較する事は無いし、自己ベストを出せる事は確実だ!



 よしよし。書く事でいい整理が出来てきたぜ。

 実は、一昨日このコースを試走してきたんだ。わざわざ行ったわけじゃなくて、そっちの方に行くついでにって感じで走ったんだけど。

 それ位のやる気度合いだ。(「わざわざ行く」と「行かない」の中間位)

 距離十一キロ、標高差九五〇メートル、平均斜度八%超えのコース。俺の得意な距離よりは短いけど、斜度もあって中々きつくて走りがいのあるいいコースだ。


 オレの住んでる所からも見える浅間山に向かって上っていくんだ。この浅間山、活火山で噴煙を上げる事も度々あって、ツルンとした円錐形の個性的な姿をしていて、雪を被っている姿は何とも美しい。一昨日も頭の方にうっすらと新しい雪が積もって、その境界線が直線的で白い帽子を被ってるようで可愛かったな。

 チェリーパークラインっていう道を上るんだけど、可愛い名前だろ? 沿道の桜の木が名前の由来らしい。コースの中間あたりで坂の勾配が緩くなる所があるんだけど、一昨日はまだ桜が綺麗に咲いてたぜ。上り初めはヤマブキ色をしたヤマブキが沢山咲いていて綺麗だったな。


 さてと。これに向けて頑張ってきたわけじゃないから、応援よろしく! って感じじゃねえけど、ま、頑張って走るから、ちょっと気に掛けてくれたら嬉しいよ。

 レース後、何を書けるかな? お楽しみに! 楽しい事、書けたらいいな。







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