二節「決闘」

「決闘開始!」

その声を合図にお互い距離を詰め刃がぶつかり合う。思っているより自分の力があることに気が付く。すると、カワセさんは笑ったように見えた。

「やるな。思っていたより力があるではないか」

ハヤセさんのその言葉を無視し数回、隙を窺うように刃を振るうがこちらの攻撃に対しての反撃が来ると予測した為、軽く避けて後方に下がる。

「予想外だな。うちの見習い騎士より強いんじゃ無いのか?」

「そうですか?ただ、この体が戦いを覚えているだけですよ」

俺はこの戦いに勝利したいから先手をとる為に前に出たのだ。1歩、2歩と確実に進み、下から切り上げるように刃を放つ。しかしハヤセさんは当然のように攻撃を受け止める。相手の攻撃を受け止め避けつつ攻め込むのが戦闘の基本だ。そのため、自分の不利な間合いを取らず有利な間合いを維持し続け、ひたすらに刃を打ち込む用に立ち回っていたが、拳が腹部に入り大きく後ろに飛ばれ距離を取られた。体勢を立て直し前を確認すると、炎が飛んできたのだ。中央と左右の3つだ。体に当たる大きさの炎の為、どこに避けても炎に当たる。だから跳躍ちょうやくしたのだ。驚いた様にこちらを見るハヤセさん。空中にも炎を出し打ち落とそうとしてきたが、こちらは剣で弾き飛ばす。攻撃が当たる高さまで戻ってくると受身を取り正面を見ると更に距離を取られていたのだ。だいたい8メートル程だ。0.5秒くらいで詰めれると思うが今の状態で攻めれば逆にしてやられると思った。荒くなった息を整えようと深呼吸をしようとした瞬間、目の前に刃があったのだ。

「そこまで!」

俺は唖然あぜんとして思考停止のような状態でいた。

「筋はいいが隙があるぞ。 状況判断が早いがまだまだだな」

「そうでしたか。俺は、素早くてびっくりしましたよ」

そう言いながら近づいてきたルミナさんに木剣を渡す。

「凄く太刀筋がいいようですね」

「ありがとうございます」

彼女の笑顔に俺は笑顔でそう答えたのだ。


城壁の上での戦いを見ていた火狐キツネの仮面をつけた男は言った。

・・・君の選択は正しい。であり使としてのその直感と剣技、共に健在なんだな。だが、過去を忘れる事は君にとって大きな罪だよ。だって君はのだから』

そう独り言をいい、桜を散らしながらその場を消えるように立ち去った。


数日後


ここ数日でこの世界についてルミナさんやハヤセさんから色々と教えてもらった。先程、戦闘で使っていた炎は『粒子りゅうし魔法』と呼ばれるもので、空気中の粒子を『属性武具』を通して炎や水、雷と言った属性を使う事ができる。俺も何度か試したが魔法そのものが使えなかった。ハヤセさんいわく「こんな人は珍しいな」と笑われるぐらいだ。それと記憶の方は何の成果もなかった。あれ以降、同じ夢ばかり見るようになった。誰が目の前で死んでいく。大切な人だった人が死んでいく。それだけは分かるが顔も名前も声も分からない。そんな感じでモヤモヤとしたままだ。

「キョウヤ。少しいいか?」

「大丈夫ですよ」

ドアが開かれハヤセさんが入ってきた。

「そう言えば、お前が目覚めた魔獣の巣の調査したいと言っていたよな?」

自分自身が分からない。その状態でいる訳にはいかないと思って、目覚めた場所から調べようと思ったのだ。もちろん、自分自身を知るために。

「とりあえず、炎神特務騎士の調査団が調査したところ、収穫は何も無かったらしい。それでも自分で調べるのか?」

「何も無くても自分の目で確かめたいのです。でないと何も始まらない気がするので・・・」

そう言うとため息をつきこちらを向いて

「わかった。手配準備は出来ている。明後日ぐらいに調査ができるようにしておくよ。だが、条件として俺も一緒に行かせてもらう。倒れられたりしたら困るからな」

「わかりました。ありがとうございます」

数日後、俺はある事実を目の当たりにするのだ。


to be continued...

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る