第二章「リト」

一節「出会い」

燃えている。

建物が燃えている。

『鏡夜、お願い。強く生きて・・・』

女の人の声がする。

『鏡夜、お前は私達の希望だ』

男の人の声がする。

殺される。暖かい声の主が殺される。誰か分からない人が殺され・・・


「やめ・・・!!」

目が覚めて起き上がると船の個室の中だった。どうやら夢を見ていたのだ。

「はぁ・・・一体、誰だったんだろう?」

再び寝ようと思ったが寝付けないと思い、海風にあたりに行こうと思って外へ出たのだ。船の上は意外にも寒く、白のロングコートから黒のパーカーに着替えてよかったと思ている。海を眺めながら呆けることにした。

「どうもこんばんは。貴方も旅人ですか?」

後ろから話しかけられ振り向く。そこに居たのは不思議な武具を持った青年だ。自分よりも幾つか若そうに見えた。

「えっと・・・俺のことかな?」

「はい。こんな時期に船旅をしているのは旅人だけどお聞きしたので・・・」

「あぁ、そう言うことか。そうだよ、俺も旅人だ。君も寝付けないのか?」

「はい。船旅が初めてで少し寝付けなくて海風にあたりに来ました」

彼は俺の隣に立ち、手を差し出してきた。

「僕の名前はイズミ。貴方の名前は?」

「俺の名前は鏡夜だ。よろしくな」

握手をする。俺は無意識に腰にある不思議な武具に目がいく。

「気になりますか?この武具。これは双剣銃そうけんじゅう。双剣でもありますが、銃を撃てるものでして」

双剣銃。聞いたことの無い武具だ。そもそも銃があることが初耳だった。八十年前にあった武器で魔物戦で大いに役に立ったと記憶している、数で押してくる魔物には乱射らんしゃできる銃はそれなりに有効的だった気がするが・・・

「銃ってあったのか。初耳だな」

「そうですか?まぁ、属性武具が当たり前の世界にこんな古い武器を使う訳ないですね。けど意外と強力なんですよ?出る弾丸は全部、散弾ですから」

手数の多い双剣と単体威力の高い散弾。汎用性が高そうだなと思う。

「キョウヤさんはどんな武器を使ってるのですか?」

「俺は刀だよ。ただ人前で出すことはないかな?いつもはこの指輪に収納しているよ」

「え!武具召喚が出来るのですか?凄いですね!相当、物質粒子化の特訓をしたのですね!」

イズミは目を輝かせてそう言ったが、特に訓練した記憶がなく無意識でやっているから何も言えなかった。そんな話をしているうちに眠気がやってきた。

「そろそろ寝に行くよ。おやすみイズミ君」

両手をあげて背伸びをする。

「分かりました。おやすみなさい。キョウヤさん」

寝室へ戻り、寝床に入り、さっきの夢を思い出す。

「誰だったのだろうな。すごく暖かく聞き覚えある声だった気がするな」


二日後。船旅の最終日。

船から降りる準備をしていた。荷物をまとめていた。降りる準備が終わり海風にあたりに船の到着を待っていると

「キョウヤさん!おはようございます!」

同じく準備を終え、俺に話しかけてきたイズミ。

「これから何処に行くのですか?」

「ロウラスに行こうと思ってな。ただの自分探しだけどな」

「そうだったのですか。もしかしたらまた会うかもしれませんね!」

船の動きが止まりリト大陸についたことを確認するとイズミは真っ先に走っていった。

「先に行きますね!またどこかで!」

大きく手を振り走っていく姿は何故か懐かしく悲しくもあった。自分も船をおり、深呼吸をする。

「風が気持ちいいな〜気温はソルほど暑くなくていいな」

ソルは太陽の光が当たりやすい所に大陸が存在していて、更には火山活動がすごく活発な大陸だった為、暑く感じることが多かった。

「それにしても、ソルでは電力はなかったが、この国にはあるのか。風力発電か、はるか昔の技術を使っていると載っていたがこれのことか?」

はるか昔と言ってもどこまで昔なのかは分からない。少なくとも、俺がいた頃はこんなのあった記憶が無い。今は無いだけでそのうち思い出す可能性は十分にある。




to be continued…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る