29話 母に堕ちる



 私はあろうことか、一週間もぶっ続けでやってしまったことが判明した。耳をふさぎたくなったが残念ならがら事実であった。


「おーまいがー……」


 思わず欧米風になってしまう私。現在私は風呂に入ってる。湯船に浸かればこの窮状を脱する妙案を思いつくかと期待した。だが風呂に入っても何も浮かんでこない。湯気ばかりが私の目を覆ってく。畜生め。


「これから、どうするべきか……」


 1年目は、ミナトの友人キャラとしての役割を与えられ、それに準じてきた。2年目になり、主人公が交代し、新しいゲームが始まった。


 そう……私は道標を見失っていた。1年目と違い、2年目の現在において、私がするべきこと、征くべき道がわからないでいるのだ。主人公をやれと、いきなり言われても、困る。私は転生前も後も、主人公であったこととがない。


 だから、どうしていいのかわからないのだ。


「ちゃーちゃん♡」

「ご、ご母堂!?」


 そのとき湯船に入ってきたのは女神……いや、ママコ氏であった。女神と見間違えても致し方あるまい。美しいかんばせに、男ならば垂涎ものの爆乳ボディ。そんな彼女がタオルすら身に付けずに風呂に入ってきたのだ。


「退散!」


 私の体は逃走を選んだ。ママコ氏が私が入ってることに気付かずに入ってきたとしても、私が悪いことになる。


「まあまあちゃーちゃん♡ お風呂入りましょ♡」


 ママコ氏に手をつかまれる。


「い、いえ! 私は高校生男児! 御母堂と同じ風呂には入れませぬ!」


 だが、あれ!? う、動けない! 身動き一つとれない! 私が出ていこうとしているのに、体が動こうとしないのである。ええいめんような!


「ほらちゃーちゃんの体も、お母さんと一緒にお風呂入りたいっていってるじゃない♡」

「あ、いやこれはちがくて……」


「ふふ♡ ちゃーちゃんも男の子ねえ♡」


 私の股間の紳士を見て、ママコ氏が慈愛に満ちた笑みを浮かべる。仕方あるまい。仕方あるまいではないか! ママコ氏は母親とはいえ、地の繋がらない、美しい女性なのだ。それはどんな性的刺激よりも、刺激的と言えるではないか!


「まあまあ♡ おいでちゃーちゃん♡ 一緒に入るときもちいよぉ♡」


 ……私は意志の力を振り絞る。いかん。母親と同じ風呂に入るだなんて。しかも相手は町美人のグラマラスママ。こんな状態で風呂に入ってしまったら、どうにかなってしまいそうだ。ダメだ、入ってはだめだ。今すぐに外に出るのだ!


「いいお湯ね~♡」

「は! 私はいつの間に風呂に入ってる!?」


 気づけばママコ氏と一緒に湯船に浸かっていた。なんということだ! 私の体はママコ氏と風呂に入ることを望んでいたというのか! 体が母性を求めてるのだろうか!


「うふふ♡ ちゃーちゃん、たくましくなったわねぇ♡」


 ママコ氏が私の胸板に触れるOHU。すべすべな手でじっくりと、くりくりと、私の胸板の筋肉をなぞる。つつ、と指が滑るたびに「OHU」と漏れてしまう。


「ま、ママコ氏……こんな、親子での風呂なのに、こんな桃色行為はいけませぬ……」


 するとママコ氏がきょとんと眼を点にしたあと、くすっと笑う。


「ちゃーちゃんとお母さんは、もう……ただの親子じゃないでしょぉ♡」


 た、ただの親子じゃない!? ま、まさか……やはり、私は……。


「……ちゃーちゃんのあそこ、かちかちで、気持ちよかった♡」


 ……やはり、私はママコ氏を毒牙にかけてしまったようだ。ガッテム。なんてこった。またか。わたしの下半身は猿なのか。節操なしにもほどがある! 説得はやはり、恐ろしい。その間の記憶がなくなってしまう……。


「どうして、落ち込んでるの、ちゃーちゃん?」


 ママコ氏が耳元で囁いてくる。ぞく……と快感が背筋を走し、思わず内またになってしまう。甘い香りと、熱い吐息が、実に官能的だ。


「だ、だって……御母堂。私は……あなたの、義理の息子であって、そのような関係を結んでは……いけませぬ」


 するとママコ氏がにんまり、と微笑む。


「どうして、ダメなの?」

「ほひ……?」


 思わず妙な声が漏れてしまった。どうしてダメなの? いや、ダメでしょう?


「どうして?」


 その美しい瞳に、吸い込まれそうになる。逃げたくても、狭い湯船の中では、逃げられない。彼女が私にのしかかってくる。大きくて、柔らかい胸が私の上に乗っかる。


 ぐにょりと、極上の柔らかさを持った乳房が、載せられている。彼女は嫌がらない。わたしに裸を見られても、胸を当てられても、こんなに、すぐ近くに、美しい顔を近づけても。


「ねえ……どうして? ダメなの?」

「お、親子……だから……」


 甘い香り。そして風呂の熱気に、私は頭をくらくらしそうになりながら、絞りだすようにして言う。


 ママコ氏はぎゅっと、私にしなだれかかってきて抱きしめてくる。ダメだ。なんて、なんて柔らかくて、気持ちいのだ。


「いいのよ♡ 愛があれば」

「あ、愛が……?」


「そう♡ そこに愛があれば、たとえ親子でも、一線越えていいの♡」


 ……なんてことだ。目から鱗だ。愛があれば、いいのか。


「ちゃーちゃんも、男の子でしょう? ほんとは、したいでしょう?」 


 ……囁くようなその声に、私の意識は引っ張られる。誘導される、とでもいうのか。


「思い出して♡ ほら……この一週間。ね? きもちよくなかった?」


 ……スキル発動中の記憶は、ない。だが彼女がつつ、と私の背中を指でなぞる。ぎゅーっと柔らかな体を押し付けてくる。


 覚えてない。でも……これだけはわかる。彼女の体は、女性の体は……こんなにも気持ちい。


「ね、いいんだよちゃーちゃん。愛があれば、その子を抱いても」

「あ、い……い、いい、の??」


「うん♡」

「でも……ほかの子に、申し訳が……」


 ママコ氏が耳元で囁く。


「いったでしょう? 愛があればいいの。それは、たとえ複数人の女の子が相手でも」


 ……そ、そっか。

 そ、そうか……。愛が、あればいいんだ。女の子と、しても。


「いいの?」

「うん♡」


「で、でも……」

「怖い? だぁいじょうぶ♡ ちゃーちゃんは、望むままに振る舞えばいいの。気持ちい方に、したいほうに、ね? ほら……落ちてって♡」


 ママコ氏が唇を重ねてくる。にんまりと笑いながら、私を見下ろしながら、甘い言葉で私を肯定してくる。そっか……私は……。


「愛があれば、いいんだ」

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