28話 親子DON



 ……はぅあ! 私はまたどうやら気を失っていたようだ。


「はぁ……はぁ……夢、じゃないよな」


 私は義姉アーネ氏に連れてこられ、マンションに拉致監禁されたはずだった。

 救助にやってきた義母ママコ氏と一発触発の雰囲気だったところ、私はスキル説得ワカラセを発動させた次第。


「……あれから、どれだけ時間がたっているのだろうか?」


 現状の把握に努めよう。私はベッドの上に寝転がっている。そして……。


「お……♡ ほぉ……♡ おお……♡」

「OH……」


 私の隣には全裸のアーネ氏がいた。一糸まとわぬ姿で、下品な声を上げて、びくびくと震える。私の股間のマグナムがマグナムトルネードしたのだろう。かっとべまぐなーむ! ……はぁ。


「人命救助とはいえ、説得を使ってしまった……」


 だが私はこの選択に、後悔はしてない。前回は何者かによる干渉を受けて使ったこのスキル。今回は自ら、彼女を説得するために説得ワカラセを使った。ママコ氏、そしてアーネ氏を守りたかったのだ。


「……ちゃー、さまぁ……♡」


 アーネ氏がぐったりした状態で、私にだらしのない笑みを浮かべる。


「……ちゃーさまぁ……♡ おはよぉ~……♡」

「う、うむ……あ、姉上。様はその……つけなくていいぞ」


 彼女は体を起こそうとして、ぽて……とベッドの上に倒れる。


「……ちゃーさまの、すごかったぁ……♡」


 そ、そんなに私との説得はよかったのか……。記憶があるようで、ない。自発的に使ったとしても、このスキルは、前回同様に使用者の記憶に残らないのだろうか。


 ごそごそ……。


「あ、アーネ氏!? 何をしようとしてるのですか!?」


 彼女は私の股間の前にひざまづいて、マグナムをそのお口にインしようとしていらした!


「いけませぬ! 婦女子が、そんなはしたないことを!」

「? でも……ちゃーさま、終わるたびになめろ、しゃぶれ、って言ってきたよ?」


 何をしているのだ説得状態の私ぃいいいいいいいいいいいいい!


 チャラ語とはまた別の強制力を受けているのだろうか。いや、本編のチャラオも、説得するときはそうするのだろうか。なんだ説得するときって。隠語じゃないんだぞ……。


「アーネ氏、その……わかってくださりましたか?」


 私は、説得の効果を確かめるべく彼女に尋ねる。

 こくん、と彼女がうなずく。


「……うん、わかった。ワタシ間違ってた。たとえ大好きな人であっても、相手の意思を無視して、監禁しちゃいけない」


 ふう……どうやらわかってくれたようだ。言葉での説得より、体での説得ワカラセのほうが効果的なのが悲しい。悔しい。言葉で彼女を説得できなかった……。説得ワカラセは確かに便利なスキルだ。


 一発で相手と仲良くなれるし、問題を解決してくれる。だが便利だからと言ってだ要してはいけない。彼女たちの体に負担をかけることにあるから。


「ちゅぱちゅぱ」

「マグナムの掃除しないでぇえええええええええええええええええ!」


 私が叫んだそのとき。


「あらあら、元気ねぇ二人とも♡」

「ご母堂!」


 私の義母ママコ氏が、にこやかに笑いながら部屋に入ってくる。

 ぱっと見た感じ、彼女に怪我は見当たらない。包丁を使って傷つけようと、アーネ氏はしたいたから、不安だった。けど……この様子なら大丈夫だろう。


「ご無事でありましたか」

「ええ……ちゃー様」


 様?


「じゃなくて、ちゃーちゃん♡」


 い、今なんだか一瞬、ママコ氏の表情がおかしなことになった気がした。なんというか、怪しい光を目に浮かべて、こう……こびるような、そんな顔をしていたような……。


「というか。ママコ氏はどうやってマンションのなかに?」


 インターホンは解除されていなかったような。


「愛のなせる技よ♡」

「あ、愛の……?」


「ええ♡ 愛の♡」


 う、うーん……ごまかしてるのがさらに怖い。いったいなにがあったのだろうか……普通に考えて、ロック解除されていないのに、部屋の中には入れないだろうから。


 ま、まさかピッキング? いやいや、ない。常識人であるママコ氏に限って、そんな犯罪みたいなマネはない。ねえ?


「まあでも、無事で何よりです。アーネ氏が包丁を持ちだしたときには、どうなることかと思っておりましたぞ」


 するとママコ氏はきょとんとした表情で言う。


「あら? ちゃーちゃん、一週間前も前のことじゃない、今更何言ってるの?」


 ……ふぁ!? い、一週間前……?


「あ、アーネ氏……?」

「もぐもぐ」


「股間のマグナム氏をもぐもぐしようとしないでくだされ!」


 デリケートなの!

 ちぇー、とアーネ氏がつまらなそうにつぶやく。


「アーネ氏、私はあなたを、その、押し倒してから、どれくらい時間が経過してますか?」


 するとアーネ氏は不思議そうに首をかしげて言う。


「……一週間」

「OH……」


 なんと驚くことに、私は一週間も意識を失っていたようだ。なんてこった!


「さ、さすがに一週間ぶっ続けは、ないですよね?」

「? ほぼやすみなしで、ちゃー様に求められてたけど」


 一週間ぶっ続け!? そ、そんな……まさか、さすがに……。


「アーネ氏も私も、体力が持ちませぬぞ!?」

「……ちゃー様とのえっち、すごい。すればするほど、体に体力があふれてくるの」


 うっとりとした表情で、彼女が言う。


「……どれだけヘロヘロになっても、すぐに回復するの。すごい、ちゃー様は無限の体力持ってる。それも、ワタシ【たち】にも分け与えられるなんて」


 ううーむ……さすがに一週間も説得していれば、体力が持たないはずである。それでも元気ビンビンということは、スキルの影響があるのだろう。


 ……ん? たち?


「さぁアーネ、お風呂入ってきなさい。それとちゃー様……」


 うっとりとした表情で、ママコ氏が言う。


「お風呂の準備ができてます♡ アーネと一緒に入ってきてくださいな」


 ……その、なんだろう。夫に対する、妻みたいないいかたは。まさか……え? まさか……なのか……え? うそ?


「マジりありぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!? ダブル親子DONですかDOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOON!?


 久しぶりにチャラ語が出てしまうくらい、私は動揺していた。

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