第4話/冒険者ギルド

 グレイ武具店を出て、ゲイツに言われた通りに古着屋ではしっかりとした生地の動きやすい服を調達し、城下町の外れにある冒険者ギルドへとやって来た。

 昼過ぎのギルドは人が疎らで、受付にはすぐ到着する。

「冒険者登録に来ました」

「読み書きはできますか?」

「はい。可能です」

「分かりました。それでは代読料銀貨1枚を差し引き、登録料は銀貨3枚です。冒険者の手引き書は銀貨1枚です。合計、銀貨4枚お願いします」

「はい、銀貨4枚です」

「コチラ、登録書です。記入してください」

「え……はい。書きます」

「証明タグを作って来ます。手引き書を読みながらお待ちください」

 受付は奥の女性に登録書を手渡し、次の客を招いた。


 二人は併設された食堂の席に着く。

「嘘だろ。説明なしなの?」

「手引き書だけでやってくのは心細いね」

 肩を並べて手引き書を読み込む。

「代読料、代筆料銀貨1枚? クエスト探すのに金を取られるの? あ、手紙の代読代筆か。良かったわ」

「品質により値下げ……しっかりと見極めしなきゃ」

「へぇ、通貨預かりサービス……銀行もやっているのか」

「但し書きが小さく下の方にあるよ。ちゃんと読んで」

「冒険者ギルド内通貨、冒険者ポイント? 引き出し時に両替手数料あり!?」

「んー。結構な縛りだねぇ」

「仕方ねぇ。大金稼ぐ冒険者だっているんだ。かさばる通貨をジャラジャラ言わせながら戦闘するのも旅するのも避けたいもんな」

「ああ、それを考えたら。うん」

「おっと? ランク以上の依頼を達成した場合、依頼料は受け取れますが実績として残らない……主人公プレイはできねえな」

「まぁ、無謀な鉄砲玉予備軍が減ると考えれば。……ねぇ?」

「確かになぁ」

 二人の目が一項に集中する。

「「満15歳となる9月までに初段にランクアップした者に学園都市の受験推薦をする」」

 学園都市……どこだよ。

「15歳までに初段かぁ。7級から始まって、1級まで上り詰めて、その上が初段だろ? 今9歳だから……5年……5年でどんだけ上れるんだろ。でも、推薦するってことは推薦したことがあるんだよな?」

「初段になるには[貴族応対技能][乗馬技能][御者技能]の取得も入れられているね」

「貴族応対授業を取るには諸々の技能も必要になるし……んんん?」

 ジャックは前のめりに覗き込む。

「[読字技能]と[計算技能]はある程度いけるかも。あぁあ、早く登録終わらないかな。聴きたい」

「兄さん、ある程度の実績積まなきゃダメみたいだよ」

「そっかぁ……よし、依頼でも見に行ってこよう」

 広間の片隅にある低ランク用の依頼掲示板には、挿絵の入った字が読めなくても分かりやすい依頼書と文字ばかりの依頼書が混在していた。

「なるほど、字が読めなくてもある程度の内容は分かるし、文字だけのは字が読めないとできない仕事なんだな」

「へぇえ! 見てよこの依頼! すごいよね! 紫テルミの葉って青テルミの葉とよく似てるから、実をつけてないと分かりにくいのにちゃんと特徴を掴んだ挿絵が入ってるよ」

「ちなみに、どう違うんだ?」

「テルミ種の葉は照りの入った艶やかな明るい黄金葉なんだけど、赤テルミは銀朱色ぎんしゅいろの縁取り、黄テルミは縁なし、緑テルミは黒縁くろぶちで分かりやすい。でも、青テルミは群青色ぐんじょういろの縁取りで、紫テルミは紺青色こんじょういろの縁取りなんだ。群青と紺青って、とても良く似ていてね。縁取りでは判断しづらい。で、紫テルミは葉の縁が若干フリルになっていて、青テルミはよく見れば葉の縁に細かい毛が生えているんだよ」

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