第6話ナチュラル・グリル

「はい、日本人です」

「私、日本に行きたいわ」

「いつでも来てください、ご案内します」

「まあ、素敵。寿司が食べたいわ」

「天ぷらもすきやきも美味しいですよ」

ハンナが亮を社長室に案内すると

ジョージが亮にハグをした。


「久しぶりだな。亮」

ジョージはすっかりスタイルが良くなって

若返っていた。

「ハンナ、アキラ・ダンはうちの会社の取締役だ

覚えておいてくれ」

「は、はい」

ハンナは取締役と聞いて驚いていた。


「亮、秘書のエミリだ。何かあったら

 彼女に連絡をしてくれ」

ジョージはエミリを紹介して

エミリは亮と握手をした。


そこに書類を持ったオリバーが入って来た。

「ミスター・ダン久しぶりですね」

オリバーは亮と握手をして亮は椅子に座った。

「亮が紹介してくれたオリバーには

凄く活躍をしてもらっている。

ありがとう」


ジョージはオリバーの肩を叩いて感謝していた。

オリバーは亮に報告書と封筒を渡した。

「サインください」

亮は受け取り書にサインをした。


「亮、小切手帳が入っているから使ってくれ」

「ありがとうございます、後で使った分お返しします」

「何言っているんだ、亮は4年前の役員報酬のまま

更新していないぞ」


「もう4年になるんですね」

亮は4年前イエローボールを配ったり

和食を開発したりした事を思い出して

微笑んでした。

「そこじゃないぞ、亮」

「ジョージ、来る度に会社が大きくなりますね」

亮は質問をはぐらかした。


「ナチュラルグリルは今600店舗、関連店が423店舗

売り上げが3500万ドルこれから海外に

店舗を増やすつもりだ」

「では、焼き肉屋と焼き鳥屋企画しましょうかね。

オリバー」

亮はオリバーを見て笑った。


「良いですね、焼き鳥はすでにナチュラルグリルで

扱っているし焼肉は韓国の物じゃあ」

「いいえ、韓国風と違ったタレの焼肉と

しゃぶしゃぶ両方をやるんです。

子供たちが喜ぶセルフクッキングです

子供の頃から焼き肉を覚えると

大人になった時BBQが出来る」


「なるほど、面白い、

両方とも脂が落ちるからヘルシーだ」

「オリバー、『BBQ焼肉』提案書いておきます。

検討してください」

「了解です」

「亮はいつも話が早い、これからもアドバイス頼むよ」

「はい」

「それで今日はワラント(新株引受権)の話と

冷凍食品の話だ」


「増資ですか?」

「ああ、投資会社の株比率が多くなったら困るからな

 それと冷凍工場の設備投資の金が必要なんだ」

「なるほど」

「はい、冷凍食品について企画通り

タイアップの承諾は取れました」


「本当か?ありがとう」

ジョージは亮と握手をした。

「アジアの冷凍食品販売は僕がやるんですね?」

「頼むぞ、アジア担当取締役」

「では、支社作りますよ」

「うん、予算を出してくれ」

そこにエミリが書類を持ってきた。


「アキラ、書類にサインしてください

 役員報酬の改定書類です」

「はい」

亮は書類を読んでサインをした。

「わかりました。今夜契約書にサインを貰ってきます」

「頼むぞ、これからの予定は?」


「今から女性と会ってランチを食べる予定です」

「相変わらずモテるな、夕食はどうだ?」

「まだ決めていません、

美味しいところありますか?」

「ああ、ニューヨーク中のレストランなら

どこでも予約が取れるから決めてくれ」

「はい、その時には」

~~~~~~

亮は社長室を出ると受付のジュリアに

声を掛けた。

「ジュリア、このメモの電話番号って

してもいいの?」

「もちろんよ。連絡くださいね」

「了解です」

亮は手を上げてビルを出た。

~~~~~~~

「ブルックですか?リーです」

ブルックは知らない電話番号から

亮の声を聴いて驚いていた。

「あら、リー電話買ったの?」

「はい、僕の用事が終わったのでランチをしましょう」

「OK、ミッドタウンペンシルバニラホテルの

近くにいるわ。来られる?」


記憶が戻った亮にとってニューヨークでは

道に迷う事は無かった

「はい」

亮はタクシーを拾ってホテルの前に行って電話をすると

近くのビルからブルックが出てきた


「お昼食べましょう。お金が入ったのでご馳走します」

「本当?ありがとう」

「お昼は何処で?」

「その前にちょっと行きたいところがあるの」


亮はブルックに案内され路地裏のビルの

地下の階段を下り

ドアが昼の明かりに照らされてとても

年期のある雰囲気のバーがあった

「ここよ」


ブルックはそのドアを開けると

10席ほどの丸いテーブルの奥に

ステージが見えた

「リーに私の歌を聞いてもらおうと思って」

「本当ですか?ありがとう」

すると奥から60歳くらいの鼻の下に髭をはやし

た太った男が出てきた


「リー、ここのオーナーのトニーよ。

口は悪いけど良い人よ」

「はじめまして」

亮はトニーに握手を求めると手を払いのけた。

「ふん、日本人?」

「ごめんね、トニーは機嫌が悪いのよ。

私が早く起こしちゃったから

私は、毎週ここで歌っているの」


ブルックはアップライトのピアノにマイクをつけ

アンプのスイッチを入れた

「歌って良いかな?」

ブルックはピアノの椅子から身体を乗り出し亮に聞いた

「OK」


亮が親指を立てると

ブルックはピアノを弾きだし静かに声を出し唄いだした

ピアノの演奏が入った歌はアカペラの時の何倍も

綺麗で力強く完全なプロの歌唱力だった。


ブルックの熱唱の一曲が終わった後、亮は拍手をしながら

「ブルック凄いよ、凄く上手です。これならプロなれるんじゃ」

「そうだろう、日本人でもわかるか」

トニーは偉そうに言うとブルックの顔が曇った。

そして続く2曲はオリジナルの

ロック調の曲だった


「作曲も出来るんですね」

「はい、でも・・・・・」

ブルックはアンプを切ってマイクを片付けていると

「ブルック後片付けは俺がやる」

トニーは亮に手を挙げて挨拶をした。

「ブルック、がんばればプロになれるよ」


「はい、いろんな人はそう言ってくれるけど

食べていくには時間がかかるし・・・」

ブルックは悲しそうな顔をした

「そうか、6曲じゃライブは無理ですね」

「そう、バーで歌うのは5曲で充分だけど」


「ブルック、口を開いて」

亮は突然ブルックの口の中を覗き

喉の周りを撫でた

「あん、リーの触り方いやらしい」

「ごめん」

亮は慌てて手を引いた

「わかりました」


亮は携帯を持ってバーの外に出て電話をかけた

「王大人、亮です」

「おお、亮か今どこだ?」

「ニューヨークです。漢方薬を売っているところ

探してもらえませんか?」


「チャイナタウンにあるから私のお店に来なさい」

「わかりました」

「すぐに行きます」

亮はブルックのところへ戻った。


「ブルックどうにかなりそうです、そのグラスボイス」

「えっ?どうして?」

亮とブルックは王大人の中華料理店に行った。

「王さんいらっしゃいますか?」

お店に入ると亮は王大人を呼ぶと

大人が奥から出てきて亮を抱きしめた。


「亮、元気だったか」

「はい、ただちょっとトラブルが有って・・・」

亮は記憶を無くしてパスポートも

お金もカードも失くした事を伝えた。

「それは大変だったな」

「はい」

「すべてこちらで用意する、食事をして待っていてくれ

 ところで銀行の口座番号わかるか?」


「わかりますJPモルガン・チエースの・・・・」

亮はブルックのいる席に戻ると

中国人女性が亮のところへ来て写真を撮った。

「失礼します」

「はい」


「ブルック何食べます?」

「この店、ジャックとよく来たから食べるのは

決まっているの」

「チャーハンと青椒肉絲とワンタンスープスープ」


「へえ、美味しいもの知っているんだね。

僕はツォ将軍のチキンとワンタンスープが良い」

食事が終わると亮のテーブルの上に赤いパスポートと

黒いカードが置かれた。


「それ何?」

「僕のパスポートとクレジットカードです」

「えっ?」

亮は立ちあがると王大人が来た。


「では行ってきます、

これを作っていただいていいんですか?」

「大丈夫さ偽物だが本物だ。あはは」

亮は大人に頭を下げるとブルックのところへ行った

「ブルック。ジャック・チョウのところへ行きましょう。

会社はどこですか?」

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