第18話 危険なラブレター

あの事件以来、雪渡の態度がよそよそしいのは気のせいだろうか?


「優奈ちゃん、どうかした?」と、オーナー。


「えっ?」


「最近、ぼんやりしているみたいだし」

「えっ?私がですか?」

「うん。恋煩(こいわずら)い?」

「まさかー。そんな相手いませんから!」



「雪渡と何かあった?それとも事件の事?」


「えっ?あー…あの事件は確かに怖かったですけど…まあ…生活に支障きたしてないんで…雪渡とも別に…」


「そう?無理しなくていいからね。優奈は看板娘。笑顔、笑顔!悩みがあるなら、お兄ちゃんにでも良いし、他のスタッフでも良いし」


「はい。ありがとうございます」




「優奈、オレンジジュースのボトルくれへん?」


宗氏君。



「うん。はい」


「サンキュー」



「優奈っち、烏龍茶のボトル頂戴!」と、啓一君。


「烏龍茶?オッケー!はい、どうぞ!」


「サンキュー」




その日の夜。



「お疲れ様でーす」と、私。


「お疲れ様〜」と、オーナー。



私は帰る。




家路に帰り、両親が迎える。


両親もようやく、働いてくれている。




「あっ!優奈。手紙来てたわよ」


「手紙?」



私は手紙に目を通す。




『お帰りなさい。バイトお疲れ様』



名前など記載されていない。



「誰だろう?」



私は気にしないでいた。

次の日も、次の日も届く手紙。



『バイト、お疲れ様。早く寝るんだよ』



とか



『バイト、お疲れ様。いつも可愛いよ』



とか



「………………」



ちょっと恐怖になる私。




そんなある日のバイト帰り――――




「じゃあなー。優奈ちゃん、お疲れ様ー」と、啓一君



「うん、お疲れ様」


別れる私達。




その日、私は背後から誰かから、後をつけられている気がしたんだけど……




―― 次の日 ――



「じゃあね。優奈ちゃん。お疲れ様」と、琢巳君。


「うん…お疲れ様」



私達は別れる。


昨日の今日、正直、怖かった。


だけど、今日は何もなかった。




――― 数日後 ―――



「じゃあまたな。優奈ちゃん気ぃ付けて帰るんやで?お疲れ!」と、宗氏君。


「うん…お疲れ様…」




私達は別れる。

今日も背後からつけられてる気がした。



更に数日後―――



「お疲れ」と、雪渡。



雪渡とは相変わらず距離がある感じがするまま、今を至っている。




「…うん…お疲れ様…ねえ…雪渡」

「何?」

「ずっと聞きたかったんだけど…」

「何だよ」

「あの事件以来、私の事、避けてる?」

「そんなつもりはねーけど、気のせいじゃねーの?」



「…そっか…それなら良いや。ごめん。私の思い過ごしだったのかな?」


「そうだと思うけど?最近、会話する事ないから、そんな気がするんじゃねーの?」


「そ、そうだよね…ごめん…じゃあ、お疲れ様」


「お疲れ」



私達は背を向け別れる中、雪渡は振り返る。




「…アイツ…」



そして、私の携帯に着信が入る。



「雪渡?何だろう?」



私は電話に出る。



【もしもし?どうしたの?】

【優奈、ちょっと気になるんだけど?】

【何?】

【最近、身の回りで変わった事はないか?】

【変わった事?特にないよ】

【そっか…じゃあ良いや】

【えっ?何それ!】

【じゃあな】



雪渡は電話を切った。




「…意味…分かんないんだけど…」




その日もなんとなく背後を気にしながら私は帰るのだった。





〜 椎野 雪渡 Side 〜



正直 気になっていた


彼女の後ろの方にいる男を


最近ちょくちょく見かけていたのだ



それとは別に


アイツが俺に私を避けてる?


そう聞かれた時


案外 図星だった



あの事件で助けられなかった自分が


正直 悔しかったのだ



だけど………



下手に避けない方が



良かったのかもしれない










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