第5話 似た者同士

「優奈ちゃん、今日は、いつもより忙しいから」


と、オーナー。



「えっ!?」

「実は今日、ライブとクラブがあるんだ」

「ラ、ライブ!?とクラブぅっ!?」


「そう!だから今日は残業覚悟で。後、優奈ちゃんには表の方の手伝いをしてもらうことになるから。超ハードだから宜しくね〜」


「ええっ!?聞いただけで疲れそう…と、いうより疲れました……帰りたくなったんですけど…」




グイッとヘッドロックされた。



「きゃあっ!」


「疲れたーー、とか、疲れそう! とか、帰りたくなったー!という弱音は通用しねーぞ!戸西 優奈!良い度胸じゃねーかよ!」


「うわっ!椎野 雪渡!」

「お前、何様のつもりで言ってんだよ!」

「女の子だから…可愛い、お嬢様♪」



「はあぁぁぁっ!?」


 


バッ


ヘッドロックされた首を離される。



「お前っ!鏡見て、モノ言えよ!」

「何よ?事実でしょ!?」

「どう見たって、お嬢様には程遠いだろっ!?」

「うるさいなっ!」



私達は騒ぐ中、ハードなバイト時間が始まった。


今日は他のメンバーもウェイターとして働く。


私はカウンターのみで、オーナーと令ニさんと働く。


時々、裏に行ったり来たり大変。




そんな中。




「あれ?可愛い〜♪君、普段見掛けないけど…名前何?」


「えっ?あ、優奈です」


「優奈ちゃん?いくつ?」


「16です」


「俺と同じじゃん!彼氏は?」

「いません!それ所じゃなくて」


「そうなんだ。あっ!じゃあ、これ、俺の連絡先。俺、吉乃(よしの) てっぺいって言うんだ。良かったら連絡頂戴」




そう言うと私の前から去った。




そして、しばらくして。



「すみません。ウーロン茶下さい」

「はい」

「ねえ、君いくつ?いつもいないよね?」

「はい。まだ見習い中で…」

「あー、だからか。主に裏方なんだ。名前、何?」


「優奈です」


「優奈ちゃん?いつ、表に出れるようになるの?」


「えっ?それはちょっと私も分からなくて…」


「そうなんだ。俺、一機(かずき)って言うんだ。これ良かったら連絡頂戴」



そう言うと私の前から去った。



「今日は、優奈ちゃんモテモテデイになりそうだね〜」


「オーナー」


「女の子は、お客様以外いないから。カウンターに女の子いる事で華やかさ出るから。俺達も気持ち的に違うよ〜」


「そ、そうなんですね」


「そうだよ。取り敢えず緊張せずに、いつもの優奈ちゃんでいて貰えば良いし。さっきみたいに声掛けて来る子にも上手く対応出来てるから問題ないよ〜」


「でも連絡先とか聞いて来られたりする事とか…」


「それに関しては相手の方から伝えるようにしてある。こっちから聞いたり、相手から聞いてくるやり方は禁止してある」


「あ、令ニさん。そうなんですね」




そして――――



「…30人…?ヤバくね?」


緒喜田 啓一(おきた けいいち)。17歳。


ムードメーカー的な男の子。




「ライブとクラブの…あの数時間で?」


亜理宮 啄巳(ありみや たくみ)。16歳。


無邪気で優しい男の子。


私をここのバイトに連れて来てくれた男の子だ。





「普段なら更にヤバイんじゃないの?」



砂都中 宗氏(さとなか そうし)。17歳。


家庭の事情で、こっちに来た男の子。


イントネーションがあって時々、関西弁を話してしまう。


明るい、社交的で人懐っこい。



「コイツの何処が良いんだよ!」と、椎野君。


「うわー、出たよ!あっ!もしかして嫉妬?」


「嫉妬?絶対ねーな!」


「あんたに分かんなくたって、私の事を可愛いって言ってくれる人はいるんですぅ〜っ!」


「気が知れね!」


「大体、あんたもカッコイイって言われてんでしょう?私は、カッコイイって思った事ないけど、性格悪いし!それだけの印象しかないから」


「てめー」


「ともかく言い合ってもキリがないし、私は先に失礼さます。お疲れ様でした!」


「おいっ!まだ、話は終わってねーぞ!」



私は帰るのだった。




「2人って面白いねー」と、オーナー。


「オーナー」と、俺。


「本当、仲良いのか悪いのか」と、啄巳。


「そうそう。まあ見てて飽きないけど」と、啓一。


「言い合ってる割には結構楽しんでる感があるんだよなぁ〜」と、宗氏。


「そうそう!分かる!」と、啓一。


「そういえば優奈ちゃんの歓迎会、まだしてなかったね。初の女の子なのに」と、オーナー。



「近々、しましょう!」と、啄巳。


「賛成!」



そんな話しが合っているなんて知る由もなく。



「優奈」


誰かが私を呼び止めた。



「令ニさん?お疲れ様です」

「ああ。送ろう」

「えっ?大丈夫ですよ」

「何かあったら遅い」

「じゃあ、お願いします♪」



「今日は疲れただろう?」

「まあ、でも家族の為なんで」

「そうか。バイトは慣れたか?」



「う〜ん…まだ微妙かな〜?とにかく頑張っている所です」


「そうか」


「…最初は、周りのイケメン揃いに囲まれて戸惑いも、抵抗もあったけど、でも、みんながとても良くしてくれているお陰で、今は凄く楽しいし後悔してないですよ!一部を除いては」


「一部?…雪渡か」


「そうです!まあ、アイツもアイツなりに色々と気を利かせてくれてるんだろうし、良い所あるんだろうけど…」


「そうだな」




そして、これからという時に


私は事件に巻き込まれ


みんなからの信頼を


一気に失うのだった……



そんな魔の手が


そこまで来ていたのだから―――




そんな事など知るよしもなく――――










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