第11話 南国国王視点1 これで勝ちは頂きました

「ふっふっふっふっ。ついにこの時が来たのだ」

このゲフマン王国の国王である俺様はほくそ笑んだ。


俺様はゲフマン王国国王メッケル・ゲフマン、まあもうじきゲフマン帝国になるがな。


ここ数百年、我がゲフマン王国は尽くハインツェルの脳筋共に撃退されてきた。


時に壊滅され、その度に復活させて挑んでいるのだが、、このハインツェルだけには勝てた試しがなかった。


俺様の代になってからでも、すでに何回も敗退していた。


しかし、俺様の代になってから国土は周辺の小国を吸収合併して倍になっているのだ。しかし、このハインツェルだけは抜けなかったのだ。ここさえ抜ければオーバードルフに敵対する勢力はいない。肥沃なオーバードルフさえ手に入れば帝国とも互角とは言わずともある程度対抗できるようになるはずだ。


なんとかして勝ちたい。俺様は必死に考えた。そしてついに良い案を考えついたのだ。


今までは我が王国軍はハインツェルの脳筋に合わせて、力押しのみ行っていた。力自慢に力自慢で対抗していたのだ。しかし、奴らの方が脳筋具合は上だったのだ。勝てるわけはなかった。


本当に馬鹿だった。


そう、少しでも頭を回せば良かったのだ。


ハインツェルの脳筋さは世界基準から突き抜けていた。


しかし、奴らは頭まで筋肉なので、超単純。王国の他の奴らに、お前らが安穏と生活出来ているのは俺達のおかげだから感謝しろ、と周りに自慢しまくっていたらしい。当然、周りの諸侯は面白くない。オーバードルフの指導者層も、ハインツェルには苦い思いを抱いているようだ。


そう、奴らは本国の重臣連中には毛嫌いされていたのだ。

ふんっ、アイツラは馬鹿だ。上の人間を大事にせずにどうするのだ。いくら下が優秀でも上が腐っているとどうしようもない。まさにオーバードルフの連中は上が腐っていた。

こいつらが安全でいられるのも、贅沢が出来ているのも、全てハインツェルの脳筋共が、アホのように頑張ってくれているおかげというのが理解できていないのだ。

ハインツェルの脳筋共さえ降伏してくれたら、オーバードルフなど我が敵ではない。



頭の良い俺様はそこをつくことにした。


まあ、新しい家臣のアイゼンフートが教えてくれたというのもあるが。


今の王太子の婚約者がハインツェルの末の娘で、辺境伯もその兄姉も溺愛しているらしい。それを捕まえさえしたらハインツェルも降伏するしかなくなる。


幸いなことに王太子は侯爵の派手な娘を毎夜愛しているという話だった。俺様はこの馬鹿な王太子ににハインツェルの娘との婚約を破棄させ、その末娘を修道院送りにして、その途中でさらうという案を策定した。それをオーバードルフ側に持ちかけてみたのだ。


オーバードルフの王太子も馬鹿だ。その案にあっさりと乗ってきやがった。

もし、ハインツェルが我らに降伏したら、そのままオーバードルフが我が傘下に下るしか無いことが理解できないのだろうか?


本当に平和ボケしていやがる。


まあ、隣国の上が馬鹿ほど俺様にとっては嬉しいことはないが。


国王はそこまで馬鹿でなかったので、国王のいない間に、させるようにオーバードルフ側を急かした。


馬鹿王太子が婚約破棄したとの報を受けて、俺様は電光石火、軍を起こしたのだ。今回は全軍5万の大軍を糾合した。


捕まえた娘をハインツェルの奴らに奪回されないうちに、我がゲフマン王国に連行するように、大使に対しては厳命してある。

我軍の精鋭魔術師も10名ほどそのために向かわせた。

ハインツェル領内を通るわけには行かないので隣国経由で大回りになるが、隣国とも同盟は結んでいる。オーバードルフを征服した暁には当然その隣国も制圧するが。娘は10日もすれば送られてくるだろう。


王太子が婚約破棄した後の報告が無いのが気に入らんが、あの大使にも、もう一度しっかりと言い聞かせる必要があるのか、その辺りは頭の痛い問題だ。



ハインツェルが降伏さえしてくれたら、後は鎧袖一触一気にこの5万でオーバードルフを制圧するのだ。

まあ、ハインツエルの奴らは降伏して末娘に会えても、すでにオーバードルフの王太子らに傷物にされているかもしれないが、そのときは王太子らを悪者にして、彼奴らにウサを晴らさせてもいいだろう。


俺様には勝利の方程式しか目に見えていなかった。


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