第8話 出来損ないが使うと宝剣も残念なことになります
宝剣、エクスカリバー、建国の戦神エルザベート様が所持され、これでこのオーバードルフ王国を建国されたと言い伝えのある宝剣だ。我が家の初代はこの剣で蛮族共を次々に殲滅されたと言われている。その険の威力は絶大だった。
我が領地の南方に並々と水を讃えて広がっているのがサウス湖だが、この湖は戦神の一振りで地から水が湧き出し、大地を満たしたと言われている。
そこから流れるその川が王都まで続いており、穀倉地帯の元となっているのだ。
オーバードルフ王国が肥沃な穀倉地帯を抱えているのは全て戦神の一振りによるおかげでもあった。これが王家の資料では初代国王が神に祈って川を作ってもらったとあるが、その神とは我が戦神のことだと私達辺境伯の者は思っている。
話はそれたが、その宝剣には鞘にも強力な保護魔術がかけられており、今まで初代以外は誰も抜けなかった。
我が父も当然抜けず、次代の剣聖といわれている兄もダメで、姉もダメだった。
その宝剣を子供の頃遊んでいた私が抜いてしまったのだ。
一緒に遊んでいたフェルは吹っ飛んだ。まあ、フェルも魔力が強力だったから無事だったけど、3日間は寝込んでいた。
そのまま、館を突き抜けて空まで突き破り、それから3日3晩大雨が降ったそうだ。
気絶した私は覚えていないが・・・・。
戦神以来初めて抜いたのだ。
皆驚愕した。
元気になってから兄と姉に連れられて四方八方何もない所で抜いてみたが、その威力は凄まじかった。
荒野に聳える山は一閃で吹っ飛び、いきなり噴火を始めたのだ。
慌てて逃げ出した私達だが、その山は未だに噴火を続けていると言う。
凄まじい剣なのだ。
しかしだ。出来損ないの私のことだ。私が持って振ってもその被害は限られていた。
確かに物理的被害は凄いものがあった。
だが、戦神が抜くと一瞬で1万の大軍が殲滅させられたと言う。
しかし、私が抜くと凄まじい光は光った。前の林に巨大な剣筋の先の土が削れ、林がなぎ倒されて、確かに侯爵軍は全員吹っ飛んだ。その先にある建物も次々に吹っ飛んでいく。下手したら王都まで続くだろう。
侯爵軍は立っている者はいなかった。
吹き飛ばされた人も馬もピクピク震えている。
でも、それだけだった。
私の剣で物は壊れても、いや、いつも大量に破壊される。だから、これも領地では抜くのは厳禁なのだ。
一度遊んで抜いた時は要塞が半壊した。
私は父から大目玉を食らった。
でも、死人はゼロだった。
何回か使ったことはあるが未だに死人はゼロだ。
「姫様は心お優しいですからそうなるのでしょう」
こんな事を言ってくれるのはこの家宰くらいだ。
「役に立たんな」
兄は一言だった。
「まあ、良いんじゃない」
母。
「目眩ましくらいにはなるわよ」
姉。
陰では「出来損ないが持つと宝剣すら出来損ないになる」
と言われる始末だ。
「どいつもこいつも好きなこと言ってくれて」
私はいつも剥れていた。
「まあ、これは脅しには使えるから持って行け」
と父に言われて持ってきたので使ったら、やっぱりこんな感じだ。あの世で後悔しろと言った手前、これで良いのかと思わないこともない。
姉には「せっかく宝剣持っていったんだから、何故、婚約破棄の場面で王太子のあそこでもちょん切ってこなかったのよ」
またぶつぶつ文句言われるかもしれないけれど。
その時は持っているのを忘れていたし、使わなかったら宝の持ち腐れとまたブツブツ言われそうなので、一応使ったけれど、こんな物だった・・・・
何故か家宰がため息ついたような気がする。
私は少しムッとすると
「帰るわよ」
家宰に言った。
「判りました」
そういった家宰が笑ったようだが、無視して私は馬を駆け出した。
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