緊急出撃


 Side 木里 翔太郎


 悪い予感ほどよく当たるもんだ。


 敵襲警報。


 最悪な事にオーバーホール中で普段使用している機体が使用できない。


 使用できるのは日本製のパワーローダー


 零戦二型。


 富嶽。


 少数ながらヴァイスハイト制のパワーローダー


 クリーガーⅡ


 クリーガーカノーネ


 クリーガーⅢ


 シェヴェルト


 などもある。


 とにかく事態は急を要する。


 そこら辺にあったクリーガーⅢに飛び乗った。


 クリーガータイプは日本製に比べると全体的にマッシブで重騎士のような緑色のフォルムだ。

 またモノアイ形式でガスマスクのような口元なのも特徴だ。

 ビームマシンガンにブレードにビームの刀身を発生させるビームブレードを手に持つ。



 敵はいわゆる武装勢力と思われる連中だ。


 敵の編成も雑多で日本製、ヴァイスハイト製、それ以外のパワーローダーもある。


 他の面々や比良坂市の防衛隊なども出動して町の外で防衛戦を開始している。


 戦場となったのは町に繋がる幾つか存在する道路だ。

 

 敵は武装集団か、あるいは傭兵団と思われるパワーローダー集団である。

 

 俺はそれよりもIFF(敵味方判別装置)がちゃんと作動してくれているのを祈ろう。


 防衛隊の面々は連係プレイでどうにか被害を押さえ込みながら敵を着実に撃破しているが、押され気味である。


 俺はクリーガーⅢで相手側の右側面から殴りかかるように襲撃する。

 

『なんだこいつは!?』


 敵の武装集団から殴り込むように敵の一体にビームマシンガンを掃射して焼けた穴あきチーズにする。

 こんなSF兵器が手持ち武器として実用化してるのだから凄いものだと思う。


 陰謀論で囁かれているようにヴァイスハイト帝国のバックには未来人か宇宙人でもいるのだろうか。


「木里、それで出たんだ・・・・・・」


『手毬――それは?』


 銀色のネイキッド(メカ娘)タイプのパワーローダーを身に纏っていた。

 武装はライフルに盾と標準的だ。


「流星って言う、ネイキッドタイプの量産パワーローダーらしいわ。ネイキッドタイプに慣れてるミクもこれで出るつもりみたい」


『そうか――』


 そう言いつつ、二人で連携を取りながら近寄る敵を撃破していく。

 正直言うと敵に歯応えがない。


 他の面々も様々な機種で到着。

 零戦二型に富嶽もいれば、クリーガーⅡ、シェヴェルトもいる。

 

『気をつけてください!! 政府軍方面から敵が接近――』


 雪代 マイナさんから通信が入る。

 政府軍の漁夫の利を狙った襲撃かと思ったが機種がバラバラ。


 自衛隊で使われているタイプやヴァイスハイト制。

 ソ連製のダイナモに極東アジア連製の機龍、アメリカ製のトルーパー。

 果てはユーロ連のライトニングまでいる。


 どいつもこいつも機体カラーが派手で個性的だ。


 思わず面食らってしまった。


『傭兵だな』


 俺はそう結論づけた。


 傭兵。


 敵に回した回数の方が多い連中だ。


 正規兵よりも腕が立つ連中もいるが中には見かけ倒しもいる。

 

 それが十機以上一気に攻め込んできた。


 恐らく武装勢力の襲撃に合わせて送り込まれた感じか。


(やれるか?)


 不安に思う。


 少なくとも雑魚を相手にするのとはワケが違う。


 今自分達は本来の機体ではない。

 

 だが退いて後ろを見せればやられる。

 

『これも仕事なんでな。悪く思うな』


 と、傭兵の一体が攻撃を仕掛けてくる。

 武装勢力とか関係なしにだ。


『ぎゃああああああ!?』


『し、死にたくねえ!?』


『に、逃げろ!!』


 クモの子散らすように武装勢力は逃げていき、そして今度は傭兵と連戦だ。

 ソ連製のダイナモが立ち塞がる。

 頭部がなく、洗濯機に虫眼鏡のような目と手足をくっつけたような大型のパワーローダーだ。

 だが整備制やコストなどがよくてベストセラー機になっていると言う。

 胴体に機関銃を搭載しているのも特徴だ。

 

 緑色で手にはパワーローダー用のアサルトライフルを装備。

 足回りはホバータイプに改良されていて素早い。

 エンブレムは白い兵士のマークだ。


「攻撃が躱される!」


『こいつ手強いぞ!!』


 手毬と俺の二人がかりの攻撃が回避され、反撃される。

 

『年端のいかない子供がここまでやるとはな・・・・・・』


 などと言いながら胴体の二門の機関銃とアサルトライフルで応射してくる。

 声が低く、三十代か四十代ぐらいの男性だろう。


『手毬!』


「分かってる! 挟み込むわよ!」


 俺達はとにかく左右から挟み込むように位置取りながら応戦する。

 弾をケチって勝てる相手ではない。

 間違いなくエース級の腕だ。


『ハズレの仕事かと思ったが中々楽しませてくれる――』

 

 相手は致命打を避けながら応戦する。


『強い!』


「中々勝たせてくれそうにないわね!」


 俺達は負けじと食らいつく。

 こいつだけを相手にしてはいられない。

 此方にも少なからず被害は出始めている。


 慣れない機体で勝負を仕掛けるか? などと思っていると――


『そろそろ引き際か・・・・・・』


 そう言って後退していく。

 相手は傭兵。

 普通の兵士とは違う行動理念で動いているのだろう。

 それに救われた形だ。


「助かったわね」


『押さえ込んでいる相手はともかく、友軍を一方的に狩っている奴を倒すぞ!』


 そう言って赤い零戦二型に近付く。

 何度も戦った相手だが動きがまるで違う。

 こいつも中身はエース級で機体もカスタムしているのだろう。


 マークは星に照準のエンブレム。


 周囲には倒されたらしい味方が転がっていて(運が無かったな・・・・・・)と軽くご冥福を祈る。 


『まさかバイマンでも仕留めきれないとはな・・・・・・最近の子供は恐い恐い』


 地上を滑るように移動しながらビームマシンガンを乱射してくる。

 陽気なおじさんの声だが攻撃は恐ろしく鋭い。 


『速い!!』


「こいつも別格ね」


 応射する。

 だが決定打は与えられず。

 地上を彼方此方と疾走しながら巧みに位置取り合戦をしつつ射撃を行う。


『バイマンでもやれないのが納得の強さだな。ウチの傭兵連中もかなり脱落したみたいだが――もう少し粘るとするか』


「くるわよ!!」


『今日は厄日だな!!』


 武器も弾切れ。

 味方の武器を広いながら応戦していく。

 手毬も同じような感じだ。


『このタイミングで部隊を投入するか』


 そして今度は自衛隊の部隊までやって来た。

 

『何を手こずっている! 役立たずどもが!』


 自衛隊の隊長格と思わしき人物――にしては若いが傭兵達にあんまりな声を掛ける。

 ブルーのアインブラッドタイプ。

 周りをグリーンのアインブラッドタイプが囲んでいる。

 その更に周りを零戦二型や富嶽などのパワーローダーが囲んでいる。


 後方にはパワーローダー運搬用の武装トレーラーが並んでいた。

 

 もっと後方に陸上戦艦が一隻。


 パワーローダーだけで五十機近い部隊だ。


『言われずとも――バイマンの奴が正解だったな。生き残れよ』


 そう言って赤い零戦二型を初め、傭兵達は退いていく。

 入れ替わりに自衛隊の部隊が猛攻撃を仕掛けてきた。


 ビームや銃弾、砲弾、ミサイルなどが勢いよく飛んでくる。

 

『はははは!? どうだ僕の力は!?』


 などと青い隊長格のアインブラッドが高笑いを挙げながら勝ち誇る。


『悔しいが一旦後退するしか無さそうだな』


「そうね――」


 あの何処かのボンボンらしき男に背を向けるのは癪だが。

 どうにかして後退しないといけない。 

 パワーローダーだけでなく陸上戦艦までもを今の戦力で相手をするのはキツかった。


 皆、同じ気持ちのようだ。


 問題は誰が貧乏くじを引くかだが――


『やあ、皆――どうにか間に合ったようだね』


 プレラーティ博士の声だ。


 後方から空中戦艦レギンレイヴが現れたのだ。

 一斉砲撃で俺達と敵の間に煙が包まれる。


『今のウチに退避したまえ』


『助かる!!』


「皆、逃げるわよ――」


 そしてこの場にいた全員が後退する。




 Side 天王寺 イチゼン(前回増援で来たブルーのアインブラッドタイプの隊長機)


 獲物を逃したか。


 しかし、どいつもこいつも役立たずだ。


 この天王寺様か直々に手を下してやる。


 これも地位や名声を得るための必要な苦労と言う奴だしな。


 いっそあんな邪魔な町、爆撃なりなんなりで焼き払えば良いものを。


 あんな反乱分子の集まり見せしめで皆殺しにしてしまえばいいんだ。


 そうすれば政府や天王寺家の力を世界に知らしめる事が出来る。


 それはそうと――


『何時になったらあの邪魔な船を落とせるんだ!?』


 あの空中戦艦が出て来てから形成がひっくり返った。

 俺様は何があってはマズいから陸上戦艦に退避している。

  

『申しわけございません。あの戦艦は予想以上の――』


『言い訳は許さん!? お前ら自衛隊にどれだけの財を注いでやったと思ってるんだ!? どんな手を使っても構わん!! あの目障りな船を何としても叩き落とせ』


『と言われましても――』


『全弾使ってでも落とせ!! クソ、こんな事なら傭兵連中を帰らせるんじゃなかった』

 

 たかがガキも殺せないような相手だ。

 どうせ大した事はないのだろうが弾除けぐらいにはなるだろうに――クソ!!


☆ 


 Side プレラーティ博士(現在・レギンレイヴの指揮を執っている)


「敵の攻撃が馬鹿みたいに激しいね。しかもノーガードと来た。敵の指揮官はブラック企業の上司か何かかな?」


 犠牲を厭わず、後先も考えない猛攻。

 正気な指揮とは思えない。

 此方にも被害は出ているが彼方の被害の方が激しい。

 ゆっくり後退しながら攻撃を続ける。


 そして敵が息切れを開始したところで――


「今だよ。アインブラスター隊、発進開始」


「アインブラスター隊、出動。指示通り竹宮高校チーム、比良坂学園チームの人(木里や将一達以外のその他の人々)などが装着してています」


「分かり易いのも考えものだね――」


 オペレーターの雪代 マイナの言葉にそう返した。

 まあ他に案が無いのもあるけど。

  

 それはそうとアインブラスター隊。

 荒木 将一や加々美 瞬が使うウォーリアーシリーズ。

 それの量産型だ。


 空を自由自在に飛べて、バリア張れて、核融合炉並のパワーを得られる半永久機関を搭載。

 私はブラッド・リアクターと呼んでいる。


 アインブラスターはそれを搭載した機体だ。

 見た目はアインブラッドタイプではないけれど性能は肩を並べる程に良い。

 

 まあ生産コストは動力のせいで通常機に比べると割高で大量生産に向いてないけどね。



 Side 木里 翔太郎


 アインブラスター隊。

 あんな隠し球があったのか。

 次々と空中を飛んでビーム兵器を撒き散らし、敵を蹴散らしていく。


 俺達も負けては居られないと言う事らしい。

 

『まだやれるか手毬!?』


「もちろんよ!!」


 他の味方や仲間と一緒に態勢を整え、再び突撃準備に入る。

 

 陸上戦艦もほぼ沈黙している。


 後は地上に展開しているパワーローダー隊だけだ。


 上空からの一斉掃射で敵を殲滅していく。


 敵も息切れ――弾が尽きているのかロクに反撃ができない。


 演習みたいなもんだなこれは。


 ともかくここで逃がすワケにも行かないので俺達も容赦なく狩りにいく。



 Side 天王寺 イチゼン


 クソクソクソ!!


 役立たずどもが!!


 どいつもこいつも役立たずだ!!


 危うく死ぬところだった!!


 この仮は必ず返してやる!!


 必ずだ!!



Side 取り残された天王寺 イチゼンの部下達


(あんな奴についたのが間違いだった!!)


 馬鹿みたいに無謀な突撃命令で俺達は呆気なく狩られていく。


 クソッタレ。


 大体なんなんだあのボンボンは。


 上から目線で偉そうにいいやがって。


 正直こんな理由で死ぬのはイヤだ。


『降伏する!!』


 誰かが言った。


 そして次々と降伏していく。


 陸上戦艦の艦長も降伏したようだ。


 俺も当然降伏した。


(俺達、なんのために戦ってるんだろうな)


 少なくとも子供を追いかけ回したりクソガキの言い成りになるために自衛隊に入ったワケじゃない。


 もうこんな戦いたくさんだ。



 Side 木里 翔太郎


 降伏宣言を受諾。

 驚く程に自衛隊の人達は大人しく此方に従ってくれた。


 口々に「もうこんな戦いたくさんだ」と言っていた。


『厭戦(えんせん)ムードって奴かな・・・・・・』


 厭戦と言うのは、世論がもう戦争は止めたい、戦争なんてごめんだと言う末期的な状況の事だ。

 

 戦時中はこのムードを押さえ込むためにあらゆる手を使い、戦争反対を叫ぶ人間を反戦主義者だの敗北主義者よばわりして差別、弾圧するのだ。


『・・・・・・どうやったら終わるんだろうな。このイカれた戦いは』


 俺は心の中の疑問を口に出す。

 

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