八月三日 1800

夏の恒例行事、陸奥湾の機雷掃討訓練は疫病の蔓延する世でも滞りなく行われた。もちろん、訓練だからといって手を抜くことは無い。それ故に、終了後はヘトヘトになるというのも恒例行事となっている。そして、つい先程はるばる北の海から憩いの我が家、母港呉に帰ってきた。

「あっ、みや、おかえりー」

「おかえりー」

「……ただいま」

誰よりも先に迎え入れてくれたのは、先月末、先週まで別のバースを巣窟にしていた老艇……もとい101掃の【ゆげしま】【ながしま】だった。型は違えど志は同じ掃海艇だ。

「こうしてると、みやも101掃みたいだなー」

「みやは俺らより先に101掃だっただろ」

「ゆげちゃん、ながちゃん、俺、3掃だから」

「え、お隣さんだし101掃でいいだろ」

なにを隠そう、俺は今ながしまの横でメザシしているのである。

「……もうそれでいいです」

今日から約二ヶ月。俺のバースは騒がしくなるらしい。

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