第5話 「どうせアンタ童貞でしょ?」

 前を歩く高村と須賀の姿を見て俺は確信する。

 須賀は高村に惚れていると。

 なにがどうなってなんのキッカケでそうなったのかはわからないが、確実に惚れている。

 二人の間に会話はないけど、黙々と歩きながらソシャゲに勤しむ高村の事を何度もチラチラ見たり、たまに凝視して顔を赤くして目を逸らしてからまたチラチラ見てる。

 やれやれしょうがない。昨日のお詫びにちょっと手助けでもしてやるか。


「なぁ高村」

「なんだ。俺は今ゲームに忙しいんだが?」

「まぁいいから聞けよ。須賀の奴、お前のこと好──」


 その時、俺の目の前を一陣の風が吹いた。


「須賀がどうしたって? おや? 一輝と須賀はどこに行った? まぁいいか」


 そんな高村の呟きを俺は今、路地の隙間で須賀に抑え込まれながら聞いていた。狭いせいで須賀と体が密着しているが全然嬉しくない。全然……全然……あぁっ! 俺の胸板にフヨンフヨンがぁぁあ!


「ちょっとアンタ、さっき何を言おうとしたのよ」

「いや、だってお前高村の事好きなんだろ?」

「そうよ」

「ならいいじゃねぇか」

「何言ってんの? ダメに決まってるじゃない。物事には順序ってものがあるのよ。今はまだその時じゃないわ。もっと私への興味を引いて、確実に落とせる時まで待たないと」

「まるでハンターだな」

「あ、そうだわ。瀬乃、アンタ協力しなさい」

「何に?」

「それはもちろん高村君を落とす為によ。それで昨日のことはチャラにしてあげるわ」

「だからさっき手伝おうとしたじゃねーか」


 あれ程素晴らしいアシストはないはずだ。うむ。そして、押し付けられている須賀の胸も中々素晴らしい感触だ。


「バッカじゃないの」


 なんてヒドイ。


「バッッッカじゃないの」

「なんで二回言った!?」

「アンタがバカだからよ。あれが協力になるわけないでしょ? そうね……とりあえず高村君の好きな食べ物とか調べてきて頂戴」

「え、めんどい」

「はい、ち〜ず」

「いぇい♪」


 パシャ


「おい、なんだ今の写真は」

「いい笑顔で撮られておいてその質問はなんなのよ」

「だって……」

「まぁいいわ。断ったらこの写真を持ってアンタに襲われたって言いふらすから。ちょうど私の胸元も写ってるから完璧ね」

「横暴だぁ!」

「いいじゃない。どうせアンタ童貞でしょ? いかにもモテない顔だし。今だって私の胸の感触を充分に堪能したんだから」

「た、たたた堪能してねーし?」

「さっきから目線が胸元に集中してんの丸わかりなのよ」

「…………」

「じゃ、頼むわね。放課後にまた作戦会議よ。あ、アンタの連絡先教えなさい。記念すべき女の連絡先第一号になってあげるから」

「一号じゃねーし」

「はいはい。どうせ母親とか妹とかでしょ?」

「違う。叔母だ」


 そう。一応俺のスマホには千佳の連絡先が入っている。ただ、一度もその名前をタップした事はないがな。


「叔母って……。似たようなもんじゃない。これだから見栄っ張りは。まぁ、私が高村くんと上手くいったら誰か女の子を紹介してあげてもいいわよ」

「なんなりと申し付けくださいお嬢様」

「…………その手のひらの返し方、嫌いじゃないわ」



 さて、高村よ。すまないが俺の為に犠牲になってもらおうか。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【る〜ず・り〜ふ】三番目にモテる美少女の秘密〜可愛いだけじゃ許されない〜 あゆう @kujiayuu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ