第26話 「再会」
これから話を進めることにあたって、ずっと気になっていたことを口にする。
『本題に入る前に一つ聞きたいんだけどさ、君ちょっと前に私と会ってるよね?』
そう言うと樹達は「えっ?」と吃驚したようにこちらを見てきた。
「……神社の階段下でのことだったら会ってる」
『そっか、ここにいる人は全員知ってけど自己紹介しとくね。
「
探してた子にようやく会えたっていうのと、名前も知ることができたので少し嬉しく思う。
「あらぁ、篝火の知り合いだったの?こっちも仕事だったし少しでも情報を得ないといけなかったから争っちゃってごめんなさいね」
ウタ、鈴蘭、樹の紹介をすると、ずいっと鈴蘭が雷夢に近寄り言う。
「お互い敵じゃないってわかったんだもん、私が左手見てあげるよっ。ほら!」
キラキラ目を輝かせてグイグイ詰め寄り左腕の服を捲ろうとするが、本人は無言で抵抗。
『折れてないなら痛み止めだけでいいんじゃない?無理強いすんなよな』
むすっとした表情で言うのは珍しく、えーっと文句を言いながら鈴蘭は痛み止めだけ渡すと身を引く。
薬を受け取った雷夢はオロオロしながら薬を見て、チラッと紅に目線をやる。
飲んでも良いのかと伺ってるようだったので、頷いてやるとパクリと口に入れて飲み込む。
「んじゃ、まずは俺らの話からしたほうがいいのか?」
樹の言葉に不満は無いのでこちら側の事情を簡単に説明していく。
今回の目的はハルトというホストの男が本命であったこと、アフターで出かけたところを尾行していった先で雷夢が同じ階から出てきたところを目撃し、あの追いかけっこに発展したこと。
大まかな流れを簡単に説明してる間、雷夢の表情を観察していると話と記憶の結びつけをしているようで時々目線がフラッと動いてた。
全部聞き終えるとげんなりしたような雰囲気になりわかりづらいが少しムッとしたような表情をしてソファに深く沈み込む。
「俺らの流れはこんな感じなんだけど、秋月の方も聞いていいか?」
「私の方は……」
そう言葉を発してコトリと首が傾く。
考えがまとまらないのか、話し方に迷ってるのかわからないが目線が下に行き上に行って斜めへと彷徨う。
ウタと目が合い苦笑していると雷夢が話し出したので視線を戻した。
「…ペド野郎、姫乃に教えて……お気に入り、ホスト…姫乃と行く………納品依頼…、マンション、異能…連れてった……」
説明…というより、単語だな。
所々に結構気になる単語が散らばってるけど、ハルトに関する依頼がここで二つ重なったダブルブッキングが今回の流れだろうな。
「まぁ、お互い敵ではないと分かっただけでも良しとしましょう」
ウタのその一言で話の話題が雷夢の仕事の話へ移る。
驚くことに基本は一人で仕事を行っており、本人は知らなかったようだが裏の世界では「災害」と呼ばれる人物であった。
「えっ!?アナタが災害だったの?!」
「??さ、さい…が…?」
「おまっ…、裏では”災害に目をつけられたら去るまで待て”が暗黙のルールみたいになってんだぞ」
「要するに自然災害扱いってことだねww」
三人に囲まれ目を回しかけてる雷夢がパッとこっちを見るので苦笑しながら手招いてやると、おずおずと隣に座り服の裾をきゅっと掴んでくる。
随分と懐かれたようだと思いながらふと閃いたことを口にした。
『雷夢さえよければ私とチーム組んでみない?』
現在フリーの良い人材は集めて損はないし、単純に私が雷夢に凄く惹かれてる。
親友とか相棒とかそんな感じになってくれそうな気がしてそう言ったが反応がない。
『やっぱ突然だし嫌だっt「そんなことない!!!」…おぉう…』
ほっぺ真っ赤にして今日一番の大声で食い気味に返事が来た。
君そんなに大きい声出せたんだね。
チームを組むのはウェルカムのようで、今日からよろしくと全員で改めて挨拶をして解散することに。
◇
ウタの店を四人で後にしてから紅は樹と鈴蘭に何で帰るか問う。
AM3:00過ぎのこの時間では電車もバスも動いていないのだ。
数時間の時間を潰して始発で帰るか、タクシーで帰るか。
そんな会話をしている間、雷夢が話に交じってこないので不思議に思いお互い顔を見合わせて聞いてみる。
『雷夢は家近いの?』
「……電車に乗って○○駅で降りる」
「あら、私たちと同じ処だね」
それなのに帰りの手段の話にならないのが不思議で考えると一つ浮かんだ。
もしかして移動系の異能持ちなのでは?
そんなことを思ってるとボソッと声がかかる。
「あの、紅達は…帰りは何で?」
『始発まで時間潰すかタクシーかな』
そう答えれば何かを考えるように目線がうろうろして、チラッと私たちを伺うように見てくる。
「んー…うー……あのね、紅達が良ければ私が送ろうか?」
『異能でってこと?』
「そう。何か所か経由するけど五分ちょっとで○○駅の周辺に着くよ」
この発言で異能は移動系だということがわかった。
「わぁ!私、移動系の異能を自分の身で体験するのは初めてだよっ!」
「すごいな」
『お願いしてもいいかな』
コクンと頷くと近くに寄ってくると右手をスッと出してきたので手を重ねれば、嬉しそうに少し目元が下がる。
残りの二人には右腕につかまるように言い、離すとどこに置いていくかわからないという一言をぽつりと呟き二人の表情を引きつらせてた。
全員が準備できると雷夢が一つ深呼吸をすれば自分らがいる空間の空気がガラリと変わる。
小鳥遊紅という人間 イヴ @takanashi916
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