第14話 「美沙と琴のお泊まり」


家に着くと汚れを落とすためにすぐシャワーを浴びに浴室へ行くと、同時に携帯が着信を知らせる。


『もしもし?』

「あっ、でたでたぁ。今日ね、ちょっと怖いことあってまた泊まりに行きたいから家のほうに来てるんだけど…」


その言葉と共にインターホンが鳴り、美沙の声が聞こえてきた。


『鍵開いてるから勝手に入って、今シャワー浴びるとこだったから』


それだけ伝えて通話を切りシャワーを浴びる。

手早く髪を濡らしてシャンプーを泡立てた時、美沙と琴が遠慮のかけらもなくドアを開けて顔を覗かせた。


「来たよ!」

「驚いたぁ?」


2人で勝手に盛り上がり始めてるが、こっちはそれどころではないので無視を決め込む。

髪を流し泡をあらかた流し終えて目を開けるとガン見してくる2人に、なんだと問うと、


「紅ってスタイルいいよね、何気に胸おっきいし…」

「足長いし顔整ってて美人だもんね」


そんなことを言い出す2人のことを哀れむような表情で言い放つ。


『2人とも目と頭がイカれたんじゃないの?今からでも病院に行ってきなよ』


何やらぶつくさ言いながら部屋に行く2人の後ろ姿を見ながら、自分もさっさと着替えて部屋に戻り眠りについた。



次の日のAM6:30過ぎ、紅の部屋に美沙と琴が入ってきてゆさゆさと体を揺すってきた。


『ちょっと…朝早いにもほどがある…』


半分は寝ぼけながら体を起こすと、神妙な顔でこっちを見てくるので話を聞く。

内容はやはり昨日のことで、不審者を見て学校に行くのが怖いから一緒に早めの登校をしてほしいということだった。

適当に丸め込んでほっといても良かったが、下手に首を突っ込んでも何もしなくてもめんどくさくなることに変わりはない。


『あー…まぁ、別にいいよ』


2人はもうすでに外へ出る準備は済ませてあるようで、私が準備するから部屋から出てくれと言ってもソワソワするだけで出ていくそぶりなし。


準備しづらいんだけどな…


ため息一つついて服を着替えて背中に流れる長い髪を梳きまとめて用意はできた。


『君らの状態を見て分かりきってるけど一応聞くね、朝飯食う?』


うんざりした表情で首を振られた、知ってる。

2人が食べないなら自分も食べなくていいかと荷物を持って家を出た。



AM7:13


学校に着いたはいいが時間が時間だ、昇降口は閉まってる。

先生たちが来るのはもうちょいしてからなので職員玄関も無理、なら何処から入るか?


「私らのクラスって基本窓の鍵開いてるから入れるんじゃない?』


案の定その案が出た。

この学校の窓は中からは普通の位置にあるが外からは肩口の高さと、少し高めの位置になってる。

昨日のことがありカーテンを閉めて出たから中の様子はまだ誰も気付いてないようだ。


「この高さをよじ登れるのは紅だけだからよろしくぅ」

「頑張って」


まぁ、そうなるよねぇ


めんどくさいから嫌なんだと一応文句は伝えたが意見は変わらず、はよ行けとせっつかれた。

窓枠に乗り上げてカーテンを開け放てば後ろの2人も気付いて中に入るのを免れるかなぁって考えながら、窓を開けて枠に乗り上げる。

目の前でひらひら揺れるカーテンを開けるために片腕を離した瞬間、


「ストップッ!!!」

『うわっ!てめっ…!!』ズルベシャッ!


不安定な体勢になった時に美沙が体を支えてる方の腕を引っ張った。


察しの良い人はもう分かるだろう、不安定な姿勢の中で身を支える場所をズラし外されればどうなるか。

そう、下に落ちるのみ。昨日この教室に来た自分は中がどんな惨状か知ってる。

カーテンを巻き込み下に落下した自分がどんな惨状になったかは理解するのは簡単で、絶望のあまり壁に背をつけて座り黙って次に起こる騒動を考えてうんざり。

廊下からは数人の足音と声がこっちへ慌ただしく向かってきてるのが聞こえる。


「紅!大丈夫!?」

「怪我ない〜?」


教師を後ろに引き連れて呑気に中へ入ってきたが、その場で全員が顔を真っ白にして固まった。




















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