第8話 「性的倒錯者《パラフィリアン》」


意を決して手術室の中に入って最初に襲ってきたのは、生臭い鉄くささ。

ライトで照らしながら進むと少し先に台があり、その上には無惨な姿の美穂が乗せられてた。

体は各部位関節ごとにバラバラに切断され、中身も全部一つも余すことなく取り出されてる。


『幼子が遊んだ後みたいな現場にも見えるな…』


さすがにこんな場面を見せるわけにはいかない。

万が一、痺れを切らせて2人が入ってくるような事になる前に出ようと出口へ向き直ると


〔ありがとう〕


耳もとで聞こえてきた声に慌てて振り向いたがそこには誰もいなかった。

部屋から出るとユイが消えており、2人に聞けば急に消えていなくなったんだとか。


『ユイのことはもうどうでもいい、すぐ上へ行こう』

「どうしたの?」

『知らない方がいい』


その言葉を聞いて察したのか、2人は何も言わずに後ろをついてくる。

病院から外へ出てすぐ警察に通報すると、電話の内容が知らされた近くのパトカーが10分もせずに駆けつけた。

その後はここ来た経緯などをザックリ話すと、時間も遅いので帰っていいと言われたので3人はその場で解散して帰路に着く。



PM22:00


家につきホッと一息ついてボーッとしてたらチャイムが鳴る。

モニターを見れば帰ったはずの2人が立っていたので、玄関に入れて話を聞いた。


「私と美沙の親が一緒に旅行だったの忘れてたから今日泊めて〜」

「2人だけでいるの怖いのと、あの話の続きが気になった」

『……今日だけね』


一泊だけだと言うので仕方なく家の中へ招き入れた。

一通り家の中を見たら琴が一言。


「紅の部屋見たい『ムリ』」


即答で返事をくれてやった。

それでも騒ぎ続けるので【見るだけ】という条件で見せることにし部屋へ行く。


「「わー」」


部屋は床、壁、天井は真っ黒で家具は白とグレーで統一されてる。

その後は2人が話の続きを聞きたいというのでリビングへ移動して話をすることに。


『それじゃ、さっきの話の続きから話そうか。

 性的倒錯せいてきとうさく性的嗜好せいてきしこう障害あるいは性嗜好せいしこう異常は英語でパラフィリアと言われ、

 人間の性に関する行動においての精神疾患と言われてるんだ。

 これらの種類の用語の末尾に使われてる単語が何個かあるんだけど、

 【〜フィリア】は、〜愛、〜性愛。【〜ラグニア】は、〜欲求、〜願望

 【〜イズム】は、〜主義、崇拝って意味のもの。

 ここまではいい?』

「「うん」」


『最終目標が性交ではなく、何らかの嗜好しこう倒錯とうさく

した行為が認められる症状があるんだけど、これを「性目標倒錯せいもくひょうとうさく」という。

 食人症カニバリズムは食人行為や人肉への興味、加虐性愛サディズムは性的虐待、性的暴力を与えることもこれに該当するね。

 これとは別に最終目標は性行にあるんだけど、その相手だったり対象や状況に何かの嗜好、倒錯あるものを「性対象倒錯せいたいしょうとうさくっていうのがあるわけよ』


『これは「人物」「年齢」「物体」「状況」「その他」の5つに分けられてる。

 人物への性対象倒錯は、人物や身体の部位や状態に関する性的嗜好。

 年齢への性対象倒錯は、言葉の通り年齢に対する性的嗜好。

 物体への性対象倒錯は、人形、衣服、などに対する性的嗜好。

 状況への性対象倒錯は、目隠しをしてる状況とかへの性的嗜好。

 その他への性対象倒錯に該当するのは虫とか霊体などへの性的嗜好。

 こういった物が世間一般ではフェチとかって呼ばれてるけど、医学的には異常なほどの執着するものは異常性癖にみなされるよって話』


「すご!」

「博識だねぇ」


一通り話を聞いた2人は緊張が解けたのか一気に眠気が来たようなので、部屋に案内して休ませた。

自分も昨日の今日でまともに休める時間が無かったので疲れを感じ、シャワーを浴びてさっさと寝ることにする。

衣服を脱いでる時にふと右腕を見て思い出した。


今思えば、あれだけの傷の存在をなんで今まで忘れてたのか…


傷はキレイに縫い合わされており、微かに異能の気配を感じるが害はなさそうだ。

あの子も一体何者だったのか…

あれこれ考えながらシャワーを済ませて自室に戻り眠りについた。





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