第7話 「児童性愛《ニンフォフィリア》」


何度かカチカチとボタンを押すが全く反応がないので携帯のライトを点けたらこっちは使えた。


『携帯のライトは使えるから落ち着け』


そう言って2人をライトで照らすと琴は若干涙目、美沙は気絶寸前。

3人のライトがいっぺんに消えるということは霊体が関わってるんだろう。


全員の携帯が使えることを確認して次は改めてライトで写真を照らして見る。

4、5歳から10歳くらいの女の子達の写真が山のようにあり、子供は数人写っているが中年男性は全て同じだ。


〔娘を診察してた先生だわ…〕

「こんな人が医者とか嘘でしょう」

「信じらんない…」


100なんて数を余裕で超える量の卑猥でおぞましい内容の写真の中にアミちゃんもいたようで、ユイはその場で泣き崩れる。


『この変態野郎は、写真を見るかぎり児童性愛ニンフォフィリアだったみたいだね』

「なにそれ」


初めて聞く単語だったらしく、美沙が問いかけてきた。

泣き止むにはまだもう少しかかりそうなので時間潰しもかねて軽く説明することに。


児童性愛ニンフォフィリアって言う異常性癖の一つだよ。

 美沙達が知ってる単語でたとえるなら食人症カニバリズム加虐性愛サディズム被虐性愛マゾヒズム

 ここらへんは聞いたことあるよね』


そう聞けばコクコクと頷いて続きを催促してくる。


『この3つの単語は日常でも聞くと思うんだけど、こういうのは全部ひっくるめていうと性的倒錯せいてきとうさくまたは異常性癖って呼ばれてるんだよ』

「へぇ〜」

「もっと聞きたい!」


興味津々で催促してくるが、ユイの方も落ち着いたようなので一旦切り上げる。


『続きは落ち着いたところに行った時に話してあげるから、今はとりあえずユイのことに戻ろうか』


失神寸前だった美沙の顔色もだいぶ戻ってきたので、全員でこの後のことを相談した。

都合の良い展開を望むのならば、ここにユイの子供が現れて成仏からのめでたしが1番なのだが、そう都合良くはいくはずもない。


『子供はいないし、ここに居続けるわけにはいかまいけど後はどうしたい?』

「え?まだ見てない部屋あるじゃん」

「めっちゃ怖いけど残りも気になる」


……これは、こいつら忘れてるな?


『いろいろ衝撃的なことがありすぎて忘れてんのかもしれないけどさ、ここは異常者がいた病院で、ユイの話によれば人が1人殺された場所だよ?

私は別になんでも良いんだけどさ』


そう言うとあっと思い出したようだが、「死体があるわけじゃあるまいし大丈夫だって〜」というなんともお気楽な回答が来たので何があっても自己責任だと一言伝える。


予想以上に時間を使ってしまったので隣の部屋を美沙と琴が、正面の部屋は紅が中を確認するために分担して行くことに。



キィィィ…………


正面の扉の中は物置のようだ。

覗いた先にはダンボールやゴム手袋の類など、いろんな用具が積んであった。

ゆっくりと中へ足を進めて行けばなかなかに使えそうな物品が多々ある。

チラッと扉の外へ目を向けて2人がまだこっちに来てないことを確認して足元に一言。


『バク』

〔マタ…メンドウナコトヲ……〕


一瞬影が揺らめくと、目を向けていた物品達が黒い触手のようなものに取り込まれ消えていった。

物がなくなったこの部屋にはもう用がないので外へ出ると、2人もちょうど出てきたところだったみたいだ。


『こっちはただの用具室だったけど、そっちは何だった?』

「職員トイレ」

「鬼怖だったわぁ」


ユイも一緒に行っていたが特別何かあったわけでもないようで、残るは最後の一部屋だ。


『それじゃ、先に中を見てくるから2人はここで待機ね』

「なんで?」

「置いてかないで…」


不満げな琴と半泣きの美沙にズバッと言う。


『あのねぇ、この部屋が最後って事は殺された子はこの部屋で殺害されたかもしれないってことと、死体があるかもしれないんだよ。おわかり?』


その言葉で事の重大さが分かってきたようで、無言で頷いた姿を確認し扉に手をかける。











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