第2話 「事件の犯人」


あと少しで出口に到達するという所で


「ねぇってば、君のことだよ?」


あろうことか駆け寄ってきて肩を叩かれた。

ここまでされたら気づきませんでしたって言い訳は不可。


『何か用ですか?』

「んー、別に特別な用があった訳では無いけど」


無いならなんで呼び止めたんだ…


翔太しょうた、いきなり声をかけたら驚かれるのは当たり前ですよ」

「そうだけどさー」


目の前であーだこーだ言い始めた2人は身長170後半くらいだろうか?


このまま無言で立ち去ってしまおうかと思っていると、不意に自己紹介してきた。


「初めまして、高橋海たかはしかいです」

加藤翔太かとうしょうた、よろしく」

『はぁ…?』


別によろしくはしたくないんだけど…


「君の名前は?」


自己紹介されたら必然的にこっちも聞かれるのは当たり前で、答えたくないオーラ全開で一言


小鳥遊たかなし


苗字しか言わなかったが、そこら辺は特に気にしないらしい。


名前以外に何個か質問されたが全部無視。


「ところで今日はどうして公園にいるんですか?」


特に理由もなく来たから隠すこともないので正直に話す。


『ただの散歩なので理由はありません』

「ふーん」


聞いてきたわりには興味はないようで、ただじっとこちらを見てくる。


『そういうことなんで、もうほっといてください』


これ以上関わると本当にめんどくさい事になりそうなのでそう言うと


「今さ、不審者の話出てて物騒じゃん?俺らが一緒に目的地まで送ってやろうか?」


そんな提案をしてきた。


不審者の話は別にどうでもいい。

それよりも、こいつらは女が皆そう声をかければホイホイ着いて来るとでも思ってるのだろうか?


『初対面の、しかも男2人にのこのこついて行く人なんてバカくらいのもんでしょ』


何言ってんのこいつ感を全力で出してそう言うと2人は無言になった。


断られるとは思っていなかったんだろうか。


今度こそ立ち去るために一歩踏み出したその時。


〔サムイ…〕


ふと、自分が座ってたベンチから聞き覚えのある声が聞こえた。

静かに少しだけ目線を後ろにずらす。


〔痛ぃ…サムイ…〕


いつむいたままベンチに座る人影。

体が少し透けてはいるが、それは今日学校で話題になってた人物だ。

俯いているせいで顔は見えないが、こちらに何かを伝えようとしてる訳ではなさそう。

ただひたすら痛い、寒いを繰り返してる。


「どうかしましたか?」


一点を見つめている私を不思議に思ったのだろう。


『別に何も』


これ以上見続けるわけにもいかない。

2人にも見えていないし、聞こえてもいないと言うことは霊感持ちの私にしか今は見えてないのだ。


さらなる面倒ごとを増やさないために、今度こそこの場を離れるために出口へ歩き出す。

後ろで何やら話しかけてきたりしているが耳は貸さず、あと数歩で出口という所で異変が起きた。


〔サムイ〕


空気が、変わった…


「なんだ?」

「わかりませんよ」


声だ聞こえ、異変に気づき始めた。


〔どうして?〕〔私は何もしてない〕〔なのにどうして〕


「どうなってんだ!」

「落ち着いてください!」


お互い状況が理解できずに全員がその場に止まっていると声はどんどん大きくなる。


〔痛いの〕〔折れた手足〕〔体も全部〕〔酷い〕〔酷いわ〕〔ヒどい〕〔ひどィ〕〔ひドイ〕〔ヒドイ…〕


…………‥。


突然、しー…ん…と静まった。


おさまった?いや、空気は変わらない。

声がやんだだけだ。


何が起きてもすぐ対応できるように辺りを見回してた時、


〔どうして私を殺したの❗️❗️❗️〕


「「うわあぁっ」」


怒鳴り声と共に聞こえた悲鳴。

慌ててそっちを見ると、2人の目の前に変わり果てた姿の美穂がいた。

そして瞬きをした次の瞬間


『うっ…』


目の前に美穂がいた。

俯いて何か言ってる。


〔…鈴木さん…依頼…〇〇町…地下室…〕


ボソボソとした声のせいでうまく聞き取れず、単語しか拾えない。


〔私を見つけて?〕


パッと顔を上げてそれだけはっきり言うと、すっと消えてしまった。










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