08_出会い

 鳶野は、身体にへばりついている複数の目玉のうち、頭部と思われるところにある目玉を指差し、念じた。


 すると、勢いよく浮遊していたものが、指さした目玉に向かって飛んでいき、目玉を貫いた。


「ぐぎぎぎぎぎぎぎぎ!!!」


 ダーカーは、鳶野に目玉を貫かれて叫び声を上げる。


 やはり、そうだ。イメージしたとおりに、浮遊したものが飛んでいった。


 何故、こんな力が目覚めたのか。この力が何なのか。分からないが、そんなことはどうでもいい。


 この化け物を倒すことができたなら……それで。


 終わらせよう。化け物の首を切断でもすれば倒せるだろう。


 鳶野は、廃墟にある大きな瓦礫がれき浮游ふゆうさせる。

 

 流石にこれほど大きなものになると、気力を使う。疲労感がどんと身体に来る。


 流石のあの化け物でも、この瓦礫を頭にぶつければただではすまないだろう。


 鳶野は、ダーカーの頭に向かって指差すと、瓦礫が飛んでいくところをイメージした。


 ドガッ!?


 すると、勢いよく浮游していた瓦礫がダーカーの頭めがけて飛んでいき、頭部ごと破壊した。


 破壊した。破壊できたぞ。あの化け物を倒したのか……。


 これで……。私は……。


 化け物がいなくなり、静かになった廃墟はいきょの中で、天井に吊るされた縄と飛び台を見る。


 誰にも邪魔されず、人生に幕を下ろすことができる。


「目玉……、右目」


 静まった廃墟の中、確かに鳶野は聞いた。聞こえるはずのダーカーの声を。そして、その声を聞いた瞬間、背筋が凍りついた。


「倒せてなかったのか」


 鳶野が、視線を感じて振り向いた時には、ダーカーが彼の頭を食らおうと大きな口を広げていた。


「とでも、言うと思ったか……油断はしていない」


 鳶野は、瞬時に切り替えて浮遊させていたものをダーカーの頭の方に、飛ばそうとした。


「危なーい!!!」


 どこからか、女性の声がしたかと思うと、天井に輪っかのようなものが現れる。


 漆黒の柱が伸びるとゴーンと音を立ててダーカーを瞬く間に押しつぶした。


 何が起こったんだ……天井に輪のようなものが現れたかと思うと、黒い柱が化け物を押しつぶしたように見えたが。


 次は……私の真上に輪っかが現れたりはしないだろうか。


 鳶野は呆気あっけにとられていると、桐原が、横から現れ話しかけてきた。


「危なかったですね~。ダーカーに食べられてしまうところでしたよ!ああ、そうだ。名前ですね。名前!私は桐原門出きりはらかどでと言います!一応、影隠師の仕事やってます。よろしく!」


 突如、現れた桐原はそう言って、いたいけな笑顔を浮かべる。


 なんだ、この少女は……。


 影隠師と言っていた。


 それに、化け物を倒した技。


 絶対、只者ではない。


「ああ〜皆、最初はそんな微妙な反応見せるんだよね。でも、大丈夫!私は、あなたの敵じゃないよ!あなたを、影の化け物ダーカーに襲われた人たちを守っているの。それが、影隠師の仕事だから」


「私を助けてくれたのか。あの奇妙な化け物から……ありがとう」


「私、見てたよ。あなたが影力を使うところを……

目覚めたばかりだというのに影を操る力の先に行っている。あなたにはかなりの素質そしつがある。どう私と影隠師の仕事をやってみない?」


 鳶野は、飛び台と天井に吊るされた縄を見た。


 どうせ、私は、自ら命を断とうとしたんだ。


「もっと聞かせてくれ。その影隠師について」


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