17_心の在り処
く、苦しい……。
息が苦しくなり、意識を保つのも一苦労だ。
「お、落ち着いて!!!これ以上は、君のことは聞かないよ。変なことを聞いてしまってすまない」
黒瀬は、なんとか声を絞り出してダーカーに向かって叫ぶ。
「私は……私は、誰だ!!!すべて忘れてしまった。私の頭の中は、この暗闇のごとく真っ黒に染まってしまった……。明るい思い出も誰かとの美しき日々も。ただ、失ったという気持ちだけが止め処なく湧き上がる……」
ダーカーは、相変わらず精神が不安定で、酷く動揺した様子を見せている。落ち着くを取り戻す気配はない。
「私達ならあなたを殺してあげられる。ただ、そのためには、あなたのコアを破壊する必要があるわ」
紅園が放った言葉は、動揺していたダーカーの心に響く。ダーカーの目玉は一斉に、紅園の方を向いた。
「ほんとうか、ほんとうか!!!私を殺してくれるのかー。コアなら、知ってる、知ってるぞ!!!」
ダーカーは、嬉しそうな声を上げて騒ぎ出す。やっと長年の苦しみから開放される喜ぶがひしひしと感じられた。
薄くなっていた空気も、ダーカーが落ち着くに従って次第に元通りになっていく。
「はあ……はあ……はあ……」
黒瀬たちは、息を荒げる。酸素不足の体に、呼吸をしてなんとか酸素を送り込んでいく。短距離走で思いっきり走り終わった後の状態のようになっている。
やばかった……。紅園の言葉で、ダーカーが落ち着いてくれなかった。気を失っていたところだ。
しばらく、黒瀬は空気を吸い呼吸を整えた後、ダーカーに言った。
「僕たちをコアのところまで連れて行ってほしい。僕たちの影力を使ってコアを破壊する」
「やっと、私を殺すことに乗り気になってくれてみたいだな……。安心したよ。先程は、取り乱してしまい、すまなかった。時々、自分の感情を抑えられなくなる瞬間があってな」
ダーカーは、先程までの取り乱した様子から一変して怖いくらいに落ち着きを見せる。
「凄い変わりようね」
黒瀬の耳元で紅園が
「ああ、そうだね」
黒瀬は、そう一言紅園に答えた。
「肝心のコアの場所だが実は、この人間界とアンブラの中間地点ザハマの一番奥底にコアは存在する」
目玉のダーカーは、コアがある一番奥底の方に向かって視線を向ける。
「この暗闇の一番底に行かなければならないのか……一番底まではどのくらいあるんだ」
黒瀬は、下に広がる、吸い込まれそうなほどの暗闇を見て思わず唾を飲み込んだ。
ダーカーは、下に向けていた目玉を瞬時に黒瀬の方に向け、言った。
「ザハマの底は1億5千万キロメートル先にある」
ダーカーの言葉を聞いて、黒瀬は
1億5千万キロメートルだって……。
あまりに、遠すぎる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます