第2話 バスの中の出来事と入学式

バスに乗りしばらくしていると運転席の方から若いOLと金髪少年のやり取りがバス中に響いた

「そこの君、席を譲って貰えないかな?」

OLの女性が優先席に座っている金髪学生に問いかけている。俺はてっきり自分(OL女性)が仕事に行くまでバスで長時間立っているのが嫌だから席に座りたいのだろうかと一瞬考えたがそれは違う。もし座りたいのなら乗るバスを早めたらいいのだ。では何故この中途半端なタイミングで?

答えを見つける為に視線をずらすと、OL女性の後ろに杖と手摺を使って立っている老婆が居た。…成程だから"優先席"に座っている彼(金髪学生)に声を掛けたのか。一見すると優先席でふんぞり返って髪を整えている自己満野郎にでも見えたのだろう。

(ここまでしても席を譲らないのだから物理的な方法以外では席を退かないだろう、そもそもなんでその席にこだわるのか、周りの人に言えばいいし、なんならバスの後は席空いているからな)

と考えていると

「実にクレイジーな質問だねぇ、レディー?」

「何故この私が、老婆に席を譲らなければならないんだい?どこにも理由はないがねぇ」

「んなっ!」

俺は若干右口角が上がるのを片手で抑えながらそう答えた。だってそうだろう?優先席とはあくまでも

お年寄りや妊婦、怪我人が他の席と比べて"比較的座りやすくなっている席"であって一般人が座ってはいけないなんて規則は制定されていない。だからあの金髪の反論はどこにも理由がないのだ。強いて言うのであれば

「そこの席は優先席よ。お年寄りに譲るのは当然でしょ?君は見た感じ不自由はしそうにないもの。若いんだから立ってても問題はない筈よ?」

(でもその理由だけじゃ弱いな、金髪少年は体調が悪いかもしれないし、足を怪我しているかもしれないからな)と無意識にニヤついた顔でことの流れを見守っていた。

「それが何だと言うのだね、私は具合が悪くて座っているのだが」

(ほらな)と思っていると急に声を掛けられてのであった

杖をついている少女すみません、少しよろしいでしょうか?」

急に声を掛けられた俺はビックリしながら答えた

「はい、どうしましたか、具合でも悪いか?バス止めて貰うか?」

「お気遣いどうもありがとうございますございます。ですがそれはお気持ちだけで大丈夫です、体調が悪い訳では無いので。」

「そうですか、それは良かったですよ」

と言いながら八番は思うのであった

(この人雪ノ下さんに似てるな、雪ノ下さん程ではないけど分厚い鉄仮面を被ってる、というかうちの生徒なのかよ苦笑)

「いえ、前のお2人の言い合いについて、偶然とはいえ席が隣の方のご意見をお聞きしたいなと思ったのですが…」

「そういう事か。勿論いいぞ、バスはまだ学校には着きそうにはないからな。」

「そう言って頂けると幸いです。あ、申し遅れました、私の名前は坂柳有栖と申します。趣味はチェスとカフェ巡りで、この杖は先天性心疾患を患っておりまして、足が不自由な為いつも持ち歩いているのです。あなたのお名前を伺ってもよろしいですか?」

(いきなり横に座るのかよ、雪ノ下さんと同じ扱いするか?)

「自己紹介ありがと、俺は比企谷八番だ」

「「・・・」」

「それだけですか?」

「そうだが、なにか足りなかったか?」

「その、趣味とかは?」

「あぁ、人間観察と人間考察だな、あと読書かな」

「ありがとうございます。(これはいいおもちゃになるかもしれませんね」

「それで、あの意味の無い言い合いの何について聞きたいんだ?」

「!? ふふ、貴方は面白い方ですね、比企谷くん。私もあの言い争いについて如何に"意味が無い"かを聞こうと思っていたのですが、どうやら思っている事は同じのようですね。」

(だろうな、わざわざ近寄ってきて話してきてるんだからな)

「おぅ、だってそうだろ?あの金髪が既に席を譲ってない時点であいつから席を譲って貰える可能性はゼロだ。そうなってくるとあのOL女性が取れる行動はそう多くないだろう。できることと言えば気遣いとしてあの老婆が倒れたりしないか意識を向けてやるか他の連中に席をねだるかの2つに1つだ。あのOLのアプローチの仕方が悪かったのもあるが相手が相手だ、あいつからぶんどるのは無理難題だ。」

「それに、今から周りに催促した所で今の空気的に出づらいってのもあるな。まぁ俺も座ってる立場とはいえ譲ろうとは思えんかな。」

「ふふふふ!! えぇ、全くもって仰る通りですね。

あのOLの女性の方の言い回しがもう少し良ければあの唯我独尊の方からでも席はぶんどれたでしょう。」

「ちなみにですが、比企谷くんならどのようにして"あの方から"席を譲って貰いますか?参考までにお聞きしたいです。」

「そうだな席を準備するだけなら容易だが、

あの金髪少年に席を譲ってもらうのは一苦労しそうだな。」

「ほう、"不可能だ"とは言わないのですか?」

「ん?簡単な話だよ、金髪少年の胸ぐら掴んでむりやり席を奪い取るか、脅迫をするか、有り金を渡して譲って貰うかだな。ただしどれもいっぱんてきには推奨されてないやり方だな」

「!?ふふふ!実におもしr、いえ、個性的な解決方法でしょうか。ですが、確かに推奨されていないとはいえ解決手段が出てくるあたり素晴らしいです。思わず笑ってしまいましたが」

(それは褒めてるのか?)

と他愛のない話をしてしばらくすると

「えー、次は高度育成高等学校前です。お降りの方はご準備ください。」

と、アナウンスがなり車内にいる学生達(恐らく新1年生だろう)が降りる準備を始めた。

「あら、話しているうちにもう着いてしまいますね。比企谷くんとの会話は面白くて時間が過ぎるのが早かったです。」

「そりゃよかったよ。俺もあっという間だったし有意義な時間になったよ、あんがとさん。じゃあ降りるか、ほれ」スッ

俺は先に通路に出て坂柳に向けて手を差し出した

「?どうされました?」

「いや、バスから降りるのに杖使って荷物も持ってたらキツいだろ?だからヘルプいるかと思ったんだが…いらなかったか?」

「いえいえ、お気遣い感謝します。ではお言葉に甘えて…」

と言いながら荷物を差出し、バスを降りて校門に向かった。

「ありがとうございます」

「うん、えーと俺はDだな」

「私はAですわね」

「まぁそのよろしく」

「えぇ宜しくお願いします」と言い門をくぐった。

しばらく歩いているとふと一つの違和感に気づく

(やけに監視カメラが多いな、生徒の動きを監視してるのか、なんでだ…そういえばどこかの国で人の行動に応じて資金を出す国があったと聞くな、そうだとするとこの監視カメラの数は生徒の動きを監視して良し悪しに応じて何かを上げるシステムなのか?、完全国営の学校だ、何かしらの都市実験を行っていてもおかしくはないな、そうだとすると監視カメラの位置とあとは盗聴器の場所を探しておかないとな)と思いながら体育館に行き入学式を終える八番であった。










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