犯人の自白②

「まずは毒殺の高橋と塩見ですよね。彼らを脅してこの旅館に呼び出したのは俺です。あいつら隠しましたけど2人で事業やってまして。そこで脱税してたんですよ。殺すにあたって出来る限り調べましたからね。だからそれを脅しに使って呼び出したらすんなり来ました。高橋の毒入りペットボトルを持たせるのと、塩見の睡眠薬と毒のすり替えはこの旅館に来る前に2人に接近してバレないようにやりました。実は俺はだいぶ前にこの島には着いてて、あの2人と同じ船だったんです。そこでは認識されないように隠れながら、荷物から目を離した隙にパパッと毒を仕込んで。そのあとは一旦平塚と合流して流れを確認しました。平塚にほとんど用意しててもらったドアや窓の開かない仕組みは俺が旅館に入った後すぐに作動してもらいました。ああ、あと携帯の通信妨害の機器を作動させたのも俺らです。この話が終わったら使えるようにしておきますね。」


「なぜわざわざそこまでしたのにテロリストまで用意する必要があった?」

ずっと疑問に思ってたことだ。


「あぁ。まあそれは。なかなか誰も外に逃げれない空間なんてないじゃないですか。無人島には殺したい人全員を呼び出すのは難しいですし。無人島に建物があるところなんて自分知らないんで。ちょうど殺したいうちの1人の國谷が、この何もなくて人も少ない小島で旅館をやっているのを知って、この計画を立てました。でも平塚にここの役員になってもらうのは意外と苦労しませんでしたよ。こんなとこで働きたい人なんていなくて人手不足だったみたいで。ちょうど1年前からですかね。そうそう、この計画は1年前から立ててたんですよ。本当はもうちょっと早くやる予定だったんですけどね。なかなか上手くいかなくて1年経っちゃいました。あ、なんでテロリストっていう設定が必要だったか、でしたね。答えは簡単で、窓を開かないようにしてドアも開かないようにしても、人が殺された状況なら窓を割ってすぐ外に出られてしまう。だから外に脅威を作った。それだけです。またテロリストだけ用意するのも常にテロリストとして配置しておかないと行けないし、目を盗んで脱出しようとされそうなのでやめました。結果、なんかできることは全部やったって感じですかね。」


「ずいぶん適当だな。」


「いや、逆に思いつきます?例えばここに来るまでの道を土砂崩れで塞ぐのもなかなかそんな上手くいきませんしね。木を倒して運んで置いて土砂も大量に置いてなんて。俺たちにはそれはちょっと難しかったけど、機械系は得意だからドアを開かなくしたり携帯使えなくしたり、そっちでやってみた限りです。結果うまく行ったでしょう?」


「ふざけるな。」

自分は静かに怒った。


「はは。次は三森ですかね。まあここからはそんな難しくないと思います。まだ3人殺さないと行けなかったんで、殺すタイミングを作るために平塚に侵入してもらいました。誰かが、橘さんでしたっけ、言ってた通りです。うまくバラけてもらって、殺したいうちの三森だけが1人になったので対象を三森にしたまでです。あの黒い殺したセットは平塚が静かに侵入した後すぐ女湯の更衣室のロッカーの1つに隠してくれてたんですよ。平塚はその後に銃声鳴らして、すぐに裏でガラスを割ってそれで俺たちは気づいた、という感じです。いやぁ、窓ガラス破られるのとどっちが早いかと思って正直ヒヤヒヤしましたね。女湯に衣装を置いたのは、単純に佐藤か三森のどちらかは女湯に行くと思ったんでね。そして俺はまず全員どこに行ったか確認するため、一度は食堂の方に行って、管理人と佐藤が同じ裏に入ったのを見て2人はその時は諦めました。それで予想通り女湯に行ってくれた三森を殺したんです。彼女、最初女湯のトイレの個室にこもってて。でも俺が呼びかけたら信用してもらってたのかすんなりドア開けちゃいましたね。その時には俺はあの黒い衣装で全身覆ってて、三森はびっくりして叫びそうになったんですけど、ハンカチですぐに口を思いっきり塞いで、何度か包丁で刺しました。そのあとまさか東條さんに足音を聞かれていたとはなぁ。あなたがどこにいるかまでは分かってなかった。最初から殺す気ないのでマークしてなくてね。あれでも慎重に行動してたんだけど、焦りましたね。まだ全員殺せてないのにバレるわけにはいかないんで。」


「あの黒いマントとかを置いといたのも、最後はこうやって自首するつもりだったから必要以上に隠す必要がなかったってこと?」

橘さんがそう訊いた。


「そう!その通り!ご名答です。」


「お前が最初の方特に指揮って信頼を勝ち取ったのも殺したい人たちに信用させるためってことか。後半になればなるほど最初の方ほど喋らなくなったよな。」


「そうですそうです!はは、俺もし完全犯罪を目指してるならめっちゃ向いてなかったですね。」


「自分が罰を受ける覚悟までしてここまで人を殺すなんて…。」

橘さんがそう呟く。

自分もそこが引っ掛かっている。いじめというのはそこまで人を狂わせるんだろうか。今は幸せなのにそんなに過去に囚われるものなんだろうか。


それに今の赤城は気持ち悪いくらい達成感に満たされているように見える。スッキリしたと言わんばかりの態度だ。

100歩譲って完全犯罪ができたのならわかる。分かりたくないがわかる。

でもこいつはこれから死刑になるだろう。今は幸せな自分の死と引き換えにしてまで昔恨みを持った人間を殺そうとするなんて理解ができない。

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