侵入者
「なんで…なんで銃声なんか。テロは嘘じゃなかったわけ!」
佐藤がヒステリックにそう叫ぶ。
「しっ。静かに。今の音、とても大きかった。おそらく本当に近くで撃たれた後です。録音の音にも聞こえませんでした。」
「大きすぎて、衝撃で一瞬頭が真っ白になりました。」
赤城くんに続き、橘がそう言う。
「そんな…。」
本当に信じられなかった。テロは本当だとでも言うのか。そしたら今なぜ撃った。外に誰かいたのか?
そんなはずは…。
「とりあえずですが、今は行動を起こさない方が身のためかと。日本で銃声を聞くなんて、本当に異常です。」
東條にそう言われ、私も恐怖に勝てず、諦めることにした。
やっとここから離れられると思ったのに。
「どうしましょう。この後…。」
橘が不安げな表情でそう呟く。
「とりあえずですが、一番場所も広く全員で集まれるこの食堂で待機しませんか。今すぐ行動を起こすのは危険です。」
赤城くんのその発言に、誰もが納得せざるを得なかった。
「そしたら、少しでも今の状況について話し合いませんか。犯人が誰なのか、このテロは何なのか。黙って座ってるより、皆さんで話し合った方がまだ気も紛れるでしょう。それにもしかしたら、何か解決策が見つかるかもしれない。」
東條は本当に頼もしくなった。このままこの状況を解決してくれそうだ。
「そうですね。それが良いと思います。」
赤城くんも賛成した。
佐藤も何も言わないので構わないらしい。というより彼女は立て続けに起こる出来事に放心状態の様であった。
しかしその時、どこかで突然ガラスの割れる音がした。
「…へ?」
誰も状況が読めない。
「今の音、何」
佐藤が放心状態で呟く。
「嘘でしょ…。」
橘もいよいよ限界がきている。
「管理人さん、あなたならわかりますよね。今の音はどこからですか。」
佐藤が管理人に詰め寄る。
「いえ、そんなこと言われましても…でもおそらくですが、この食堂とは正反対のバックヤードのどこかかと。」
「皆さん!急いで!はやく鍵のかかる2階の部屋に!」
赤城くんの号令で全員がハッとして立ち上がった。
今動いたらそれこそ侵入者と階段で鉢合わせるんじゃないか。そう思ったがこの緊急事態の中、全員慌てて2階に向けて走り出した。
しかし、最悪なことに階段まで行くと、ちょうど反対側のバックヤードの扉が開き、黒尽くめの侵入者が姿を現した。
本当にテロリストと思われる人物から侵入されていた。
そこからはどう行動したかあまり覚えていない。
混乱の中、食堂へ引き返す者、風呂場に駆け込んだ者、他にも1階のどこかに隠れたものもいるのだろう。
私は今自分の部屋にいる。
自分の他には誰もいない。
廊下から音は聞こえてこなくなった。
誰かが歩いている様子もない。
みんなはどこに行ったんだろうか。無事なんだろうか。胸の鼓動が収まらない。
しかしその時どこかの部屋のドアが開く音がした。一気に緊張が高まり、さらに胸の鼓動が早くなる。
コンコン。
耳を押し当ててたドアをいきなりノックされた。
思わず声が出そうになる。
息を潜めて黙っていると外から女性の声がした。
「清野さんですか。橘です。すみません、開けてもらえませんか。」
私はすぐに開けて彼女を引き入れる。すぐにドアを閉めて鍵をかけた。
「すみません。入れていただいてありがとうございます。助かりました。1人だとどうしても怖くて。」
「私がここにいるってわかってたの?」
「はい。私は清野さんの後ろにいて2階に逃げてきたんです。おそらくですが、2階に逃げてきたのは私たちだけかと。私の後ろから一つも足音は聞こえなかったので、あの黒い侵入してきた人も上がってきてないはずです。」
「そっか…。あれ、でもそれってまずいんじゃ。」
「はい。下に鍵がかかる場所なんてあった覚えがないですよね。今頃皆さん大丈夫なんでしょうか。」
二人とも黙り込む。こんな事態どうすれば良いんだろうか。
「とりあえず、しばらくは様子を見ましょうか。」
私はとりあえずそう彼女に告げた。
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