犯人はこの中にいる?

「塩見辰也(たつのり)27歳会社員。殺されたのは高橋隆聖(りゅうせい)同じく27歳会社員。俺の学生時代からの親友だ。もう一度言うが、隆聖を殺した犯人はこの中に確実にいる。仲良しごっこをしているところ悪いがそれが事実だ。」


一瞬静まり返った。


「何を根拠にそんなこと言うわけ。」

佐藤が反応する。


「俺たち2人は半ば脅される形で今日この旅館に泊まりに来た。内容は詳しく言えん。とにかく殺人犯にここに来ざるを得ない様な手紙を2人とも受け取った。だから俺はこの中に犯人がいると言ったんだ。」

「それなら旅館にいることを把握できてるんだから、何もこの旅館に泊まらなくても良いでしょ。」

佐藤の言い分もわかる。が、この状況を聞いて、過疎化の進む島の唯一の旅館となると、犯人も泊まっていると考えるのが妥当だ。


「お前は犯人がここの島民か野宿をしていると言いたいのか。俺たちはここの島民に直接の関わりがある人はいない。脅される義理がない。それにこんな何もないところで野宿よりこの旅館に泊まってると考えるのが妥当だろう。」

「じゃあそれこそあのテロリストじゃないの。第一今私たちをここに閉じ込めてるわけだし。」

「それは…勘だが俺は違うと思っている。第一俺はあいつらが本当にテロリストなのかさえ疑っている。犯人が通報されるのを防ぐためにああやって用意したんじゃないのか。」


「一つ…聞きたいんですが、」

ここで真面目な公務員、東條が入ってきた。


「高橋さんの死因は何だったのでしょうか。」

「いや、気になる気持ちはわかりますが、ここでプロでもない私たちが殺人事件について話すことに何の意味があるんでしょうか。正確な結論が出るとは思えません。ましてや犯人探しに発展しかねない。ただでさえこの困難な状況で協力し合わなければならない中、ますます空気を悪くするだけでは。」

私はそう意見を言った。


「いや、死因くらいは知っておくべきかもしれません。今後私たちの身を守るヒントにもなるかもしれない。犯人は探さなくても、何が起こったのかだけは共有してもらいましょう。」

赤城くんにそう諭された。


「でもまだ管理人さんの自己紹介がまだよ。」

そう佐藤が言うと、管理人は少し驚いて申し訳なさそうに立った。

「ええ、では一応。國谷三雄、53歳。職業はもちろんこの旅館を運営していることです。どうぞお見知り置きを。」

それだけ言うとすぐに座った。


「それでは塩見さん、あなたの友人、高橋さんに何が起こったのか、知っている範囲で教えてもらえますか。」


そう赤城くんが促すと塩見はこちらを睨みながら話し始めた。

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